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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の慢性腎不全とは

腎臓の機能が低下し、老廃物を排泄できなくなる病気です。

慢性腎不全(腎臓病)は高齢の猫に非常によく見られる病気です。

腎臓は体の老廃物を血液から漉しとり、尿として排泄する役割を持っています。
腎機能が低下すると、老廃物が排泄されず体に貯留するため、吐き気や食欲不振、体重減少が起こり、尿量が増えることによって脱水が起こります。
末期になると尿毒症を起こし、食欲の廃絶や重度の脱水、神経症状などを示すようになり、最終的には死亡してしまいます。

しかし、慢性腎臓病の初期にはほとんど症状を示さず、腎臓の75%以上が障害されて初めて症状が現れるため、診断時にはある程度腎機能低下が進行していることが多い病気です。

高齢の猫で腎臓病が多いということは広く知られるようになってきているため、症状が出る前に健康診断として尿検査や血液検査を受け、初期の段階で発見できる機会も増えつつあります。
一度障害された腎臓は元には戻りませんので、できるだけ早期に発見し、進行を抑制していくことが治療の重要なポイントとなります。

猫の慢性腎不全の症状とは

初期はほぼ無症状、初めに多飲多尿がみられます。

慢性腎臓病は進行の段階によって4つのステージに分類されています。
ステージ1はもっとも初期ですが、この段階では目に見える症状はなく、血液検査でも異常は認められません。
尿検査でタンパク尿が認められるのみです。

ステージ2の段階では、腎臓の約50%の機能が低下しています。
傷害されて機能できなくなった腎組織の代わりに、まだ機能を保持している腎組織が代償して働いているため、血液検査では腎臓の数値の上昇は軽度ですが、症状として多飲多尿(水をたくさん飲んで薄い尿をたくさんする)がみられるようになります。

消化器症状や重度の脱水・貧血がおこります。

ステージ3は、腎臓の機能が約75%以上障害された状態です。
体内の老廃物の排泄が追いつかなくなり、食欲不振や吐き気、下痢によって体重減少がみられ、脱水が顕著となり、貧血も起こります。
栄養状態が低下することによって毛艶も悪くなり、慢性的な倦怠感から寝ていることが多くなります。

末期には尿毒症症状が現れます。

ステージ4は末期の状態です。
尿毒症によって食欲廃絶、重度の吐き気、重度の脱水が起こり、体は非常に痩せ、痙攣などの神経症状を起こすこともあります。
機能する腎組織が非常に減少しているために、乏尿・無尿といった尿量の減少がみられることもあり、最終的には死亡してしまいます。

猫の慢性腎不全の原因とは

加齢によっておこります。

猫の慢性腎臓病はほとんどが加齢性変化によっておこります。
長い年月をかけて、正常な腎組織が少しずつ減少して発症します。

他の泌尿器疾患や内科疾患に伴っておこります。

尿道閉塞(腎結石、尿管結石、尿道結石)や、腎盂腎炎、糸球体腎炎などの急性腎不全による腎障害の結果、多発性嚢胞腎の発症などによって正常な腎組織が減少しておこるものもあります。

糖尿病などでは、高血糖による腎障害がもとで腎臓病を発症することがあります。
他には全身性エリテマトーデス、アミロイド症、多発性骨髄腫、高カルシウム血症などの全身疾患に続発しても起こります。

薬物摂取も原因となります。

抗生物質や重金属などの摂取によって腎障害が起こり、慢性腎臓病となる場合もあります。

猫の慢性腎不全の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

どんな猫でも起こります。
多発性腎嚢胞を起こす品種(スコティッシュフォールド、ペルシャ、ヒマラヤンなど)では、最終的には腎不全を発症してしまいます。

猫の慢性腎不全の予防方法について

年齢に合った食事管理が予防策の一つです。

猫は犬に比べて食事中のタンパク摂取量が多い動物です。
高タンパク食は、代謝の結果として腎臓に負担をかけやすいため、猫はもともと動物として腎不全の発症が多い傾向があります。

タンパクは必要ですが、成長ステージによってその量を少し調整してあげることで腎臓にかかる余分な負担を減らし、腎臓病の発症を抑制できると考えられます。

シニア期でも7歳以上用、10歳以上用、中には15歳以上用などと分類されたフードがあるので、年齢に合わせて食事を選んであげましょう。

適度に水分補給できるような環境を整えましょう。

腎臓で作られる尿量は摂取した水分量に影響されます。
脱水傾向だと尿の生成も少なくなり、循環血液量が少ないことによって腎不全が起こることもありますので、飲みたいときにすぐ飲めるように水飲みの水を新鮮できれいなものにしておいてあげましょう。

猫の中には水にこだわりのある子もいます。
ぬるま湯を好んだり、流水を好む場合もあるので、猫の傾向を見て十分に水分が摂れるように工夫をしてあげましょう。

ドライフードからウェットフードへの切り替えにより飲水量を増やすことも可能です。

定期的に尿検査を受けましょう。

腎臓病を早期に発見するためには定期的に尿検査を行うことが重要です。
症状が出る前でも、腎臓に異常が起こっていると尿には変化がみられます。
尿検査では腎臓病だけでなく、糖尿病や尿石症などの早期発見もできますので、ワクチン接種などで病院へ行く際にはできれば尿を持参し、定期的に健康チェックをしてもらいましょう。

猫の慢性腎不全の治療方法について

食事療法と内服薬で治療します。

初期には症状はあまり見られませんが、タンパク尿が認められ、それが腎臓病によるものだと判断された場合には、タンパク尿を抑制するお薬の投薬をできるだけ早くから始めます。
また食事療法として腎臓病対応食を初め、腎臓にかかる負担を減らすことで進行を抑制できます。

少し病期のステージが上がると、老廃物の増加を示す血液検査異常が出始めます。
リンを吸着するお薬や活性炭などで体の老廃物を排泄する補助を行い、吐き気や食欲不振がみられる場合には胃粘膜保護剤や吐き気止めを使用します。

腎不全に伴って高血圧が起こることがあります。
高血圧を治療せずにいると、眼底出血などを起こし失明する場合もあるので、血圧を下げるお薬も必要になります。

脱水が現れる場合には点滴を行います。

腎不全では脱水が顕著に認められます。
脱水があると全身状態も悪く、尿量が減ることで腎不全の進行を早めてしまうため、皮下点滴や静脈点滴で脱水の補正を行ってあげましょう。

皮下点滴は獣医師の指導を受ければ飼い主さんも自宅で実施できます。
食欲のなかった子も、脱水が改善することで食欲が回復することがあるので、自宅療養を希望する場合はかかりつけの病院で相談してみましょう。

貧血を治療します。

腎障害が重度になると、腎臓で作られる造血ホルモン(エリスロポエチン)が不足して貧血になります。
その場合には定期的にエリスロポエチンを注射で補給して、貧血の治療も行います。

末期には緩和ケアを行います。

症状が進行すると体は衰弱し、自力で立って歩けなくなったり、自分からは食事を摂らなくなってしまいます。
末期になってしまったら、食事を処方食にこだわることはありません。
嗜好性が高く、食べやすい缶詰などを少量ずつ温めて食べさせてあげましょう。
吐き気があると食べられなかったり食べてもすぐ戻してしまうため、内服薬か注射で吐き気止めを打ってもらい、気持ち悪さを取ってあげると苦痛を少し取り除いてあげられます。
トイレにも歩いていけないことがあるので、ベッドの近くにトイレを移動してあげたり、おむつやペットシーツで対応することも必要になってきます。

暖かく落ち着いて過ごせるように環境を少し整え、最期まで穏やかに過ごせるようにケアしてあげましょう。

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