猫の「左右の瞳孔の大きさが違う」症状とは
右目と左目の黒目の大きさに違いがみられます。
瞳孔とは、目の中心にある黒い部分で、環境の光の強さによって開いたり閉じたりすることで目に入る光の量を調節する役目を持っています。
猫の瞳孔はヒトや犬と異なり縦に細長い形をしており、瞳孔が全開になると円形に近くなり、逆に閉じると糸のように細くなります。
瞳孔の大きさの調節は神経の働きによって支配されており、交感神経と副交感神経がバランスよく作用することによってうまく機能しています。
そのため、明るい場所であってもおもちゃで遊んでいる時など集中している時には交感神経が優位に働き、瞳孔が大きく開きます。
通常、瞳孔の大きさの変化は左右連動して起こりますが、目や神経に何らかの異常が起こると、左右の瞳孔の大きさに左右差が出てしまいます。
眼の疾患が原因となっている場合には、瞳孔の大きさだけでなく以下のような変化がみられることがあります。
・瞳の色が変わる
・涙目
・目ヤニ
・眼の表面が白く濁る
・眼をしょぼしょぼする
・白目が充血する
・眼が片方だけ大きい
この兆候が見られるときには視覚に関わる重大な病気のサインの場合もありますので、様子を見ずにまずはすぐに病院を受診するようにしましょう。
猫の「左右の瞳孔の大きさが違う」症状の考えられる病気(原因)とは
眼の疾患の可能性があります。
瞳孔は虹彩という目の色がついた部分が中にある筋肉の働きによって伸びたり縮んだりすることによって大きさを変化させています。
虹彩は前部ブドウ膜とも呼ばれ、目の中でも血管の豊富な組織の一つです。
このブドウ膜は全身の炎症性疾患に伴って炎症を起こすことがありますが、その場合には左右ともに症状が現れることが多いため、左右差が出ることはあまり多くありません。
しかし、外傷(角膜潰瘍)や水晶体脱臼、白内障、眼の腫瘍などに伴って片目だけに「ブドウ膜炎」が起こった場合には、目の色が片方だけ変化したり瞳孔の開きが左右で異なった状態になることがあります。
他には、「緑内障」が起こった場合にも瞳孔の左右差がみられることがあります。
緑内障は目の中の眼房水がうまく循環しなくなることによって眼圧が上昇する目の病気で、治療を行わなければ失明の危険もある疾患です。
原発性緑内障と続発性緑内障がありますが、猫でみられるものは続発性のものがほとんどで、外傷、感染症、ブドウ膜炎、水晶体の脱臼、眼内出血、眼球腫瘍などが原因となります。
ホルネル症候群の可能性があります。
ホルネル症候群とは、眼や眼の周囲に分布する交感神経と副交感神経のうち、交感神経の支配が消失することでいくつかの特徴的な症状を同時に起こす状態につけられた名称です。
同時に見られる症状には以下のような症状があります。
・縮瞳(瞳孔が小さくなる)
・眼瞼下垂(目の開きが小さくなる)
・眼球陥没(目が奥に引っ込んだようになる)
・第三眼瞼の突出(瞬膜が出たままになる)
これらの症状は通常片方のみに起こるため、瞳孔の大きさにも左右差が現れます。
ホルネル症候群は様々な原因で起こります。
・脳の異常(頭部の外傷、頭蓋内腫瘍、梗塞など)
・脊髄の異常(椎間板ヘルニア、線維軟骨塞栓症、外傷による脊髄損傷など)
・耳の異常(中耳炎、内耳炎、鼻咽頭ポリープ、中耳内腫瘍など)
・その他(腕神経叢の損傷、頚部や前縦隔の腫瘍、眼球後方の腫瘍・損傷など)
これらの鑑別のためには眼科検査や耳の検査をはじめ神経学的な検査や、場合によっては麻酔をかけて行うCT、MRI検査などが必要になる場合もあります。
原因の特定できないホルネル症候群の場合は特発性ホルネル症候群と呼ばれますが、猫での発生は比較的稀とされています。
猫の「左右の瞳孔の大きさが違う」症状の好発品種について
好発する品種はありません。
眼の疾患、ホルネル症候群の原因となる疾患それぞれに品種による好発傾向は特にありません。
猫の「左右の瞳孔の大きさが違う」症状の予防方法について
眼の異常にいち早く対処することでブドウ膜炎や緑内障への発展を防ぎましょう。
猫ではケンカによる角膜潰瘍からブドウ膜炎に発展したり、白内障の進行、慢性腎臓病による高血圧から眼底出血を起こし、緑内障に発展するケースが比較的多く見られます。
眼をしょぼしょぼする、眼の奥が白いなどという場合にはできるだけ早く病院を受診し、また高齢期に多い慢性腎臓病を発症した場合には定期的に血圧や目のチェックも受けるようにしましょう。
耳のチェックを定期的に行いましょう。
重度の外耳炎を起こすと中耳炎、内耳炎に発展してしまうことがあるため、耳の疾患によるホルネル症候群の発症予防には定期的な耳のチェック、ケアが効果的です。
事故の予防のためには室内飼育がある程度効果的です。
ホルネル症候群の中には交通事故等の外傷によって起こるものもあります。
室内飼育を徹底することで交通事故のリスクは回避することができます。
しかし、室内であっても高所からの転落などのリスクはゼロではありません。
特に足腰の弱くなるシニア期には生活環境を見直し、高所からのジャンプなどをしなくていいように環境整備をしてあげましょう。
猫の「左右の瞳孔の大きさが違う」症状の治療方法について
原因疾患を治療します。
左右の瞳孔の大きさが違うという状態は、生理的に発生することはなく、必ず原因となる何らかの体の異常が隠れています。
まずは目の異常なのかそれ以外なのかを鑑別し、それぞれの診断に必要と思われる検査をしっかりとしてもらう必要があります。
頭蓋内の病変に関しては、CTやMRI検査ができる高度医療施設への受診が必要になる場合もありますので、その必要性についてもかかりつけの先生とよく相談することが重要です。
特発性ホルネル症候群の場合には経過観察を行います。
特発性ホルネル症候群は猫ではあまりみられることはありませんが、一通り検査を行っても原因が明らかにならない場合は無治療のまま経過観察を行います。
中には自然と症状が改善するケースもありますが、多くの場合、数か月かかります。