犬の「眼の表面が白く濁る」症状とは
黒眼の表面である角膜が白濁している状態です。
角膜とは、眼球の表面を覆う透明な膜であり、いわゆる黒目に当たる部分です。角膜は、光を通し網膜に届ける役割、外界からのホコリや細菌などから眼球を保護する役割、などを担っています。
「眼の表面が白く濁る」というのは、この角膜が白濁している状態です。
角膜の白濁は、角膜炎や角膜潰瘍が治癒した後に見られることがあります。このような場合は、とくに問題ありません。
様々な疾患によって眼の表面が白く濁ることがありますので注意が必要です。
犬の「眼の表面が白く濁る」症状の考えられる病気(原因)とは
慢性表層性角膜炎
慢性表層性角膜炎とは、両眼に発症する慢性かつ進行性の炎症性角膜結膜疾患です。
初期症状は、鼻側または耳側輪部の結膜充血やその周囲の白色または結晶状の混濁が見られます。進行しますと、角膜全域の血管新生、肉芽増生、色素沈着が見られ、角膜は透明性を失います。重症例では視覚障害をもたらすことがあります。
発症時の年齢が若齢であるほど病状の進行が速く、重症化することが多いとされています。
慢性表層性角膜炎は遺伝性、自己免疫性疾患と考えられています。また、標高の高い地域に住む犬では、発症率・重症度のいずれも高いという報告があります。
表在性点状角膜炎
表在性点状角膜炎は、多発性で点状または円形の角膜上皮混濁を特徴とする炎症性角膜疾患です。
多くの場合は両眼に発症し、角膜潰瘍に至る場合もあります。
痛みを伴う場合と痛みを伴わない場合があり、流涙や眼瞼痙攣が見られることもあります。症状が進行しますと、角膜に結晶沈着、浮腫、色素沈着を引き起こします。重症かすると視覚の低下が見られます。
表在性点状角膜炎の原因はわかっていませんが、遺伝性、自己免疫性疾患と考えられています。
角膜ジストロフィー
角膜ジストロフィーとは、角膜に混濁を生じる非炎症性疾患になります。
片眼もしくは両眼の角膜に白濁を生じます。多くは視覚障害は見られず、重症例では視覚障害が見られますが稀です。
高脂血症や高カルシウム血症は、角膜ジストロフィーの発症のリスクを高めると言われています。
遺伝性の疾患であることが示唆されています。中年齢以降に発症しやすいとされています。
犬の「眼の表面が白く濁る」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- グレイハウンド
- シベリアンハスキー
- ジャーマンシェパード
- ビーグル
- ミニチュアダックスフント
慢性表層性角膜炎は、ジャーマンシェパード、グレイハウンドが好発犬種とされています。
表在性点状角膜炎は、シェットランドシープドッグ、ミニチュアダックスフンドが好発犬種とされています。
角膜ジストロフィーは、ビーグル、キャバリアキングチャールズスパニエル、シベリアンハスキーが好発犬種とされています。
犬の「眼の表面が白く濁る」症状の予防方法について
遺伝性の疾患が多いです。
遺伝性の疾患が多いため、予防することは難しいと言えます。
角膜炎、角膜潰瘍の痕跡に関しては、眼を傷つけないように注意します。草むらなどに頭を突っ込ませない、シャンプー後などに乱暴に顔をふかない、など注意してみましょう。
犬の「眼の表面が白く濁る」症状の治療方法について
慢性表層性角膜炎
ステロイド点眼を長期間にわたり使用します。角膜上皮保護のためにヒアルロン酸点眼をおこないます。
点眼治療に反応が悪い場合は、ステロイド剤を結膜下注射することもあります。
慢性表層性角膜炎は完治することのない疾患であるため、治療は生涯にわたり継続する必要があります。
表在性点状角膜炎
ステロイド剤や免疫抑制剤の点眼をおこないます。それに加えて角膜上皮保護のためにヒアルロン酸点眼をおこないます。
表在性点状角膜炎は、慢性表層性角膜炎と同様に完治することのない疾患であるため、治療は生涯にわたり継続する必要があります。
角膜ジストロフィー
基本的には治療の必要が無く、経過観察となります。
重症化して視覚障害が認められる場合は、外科療法がおこなわれることもあります。