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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状とは

少しの運動で疲れて横になってしまいます。

少し動いただけで疲れて座り込んでしまったり呼吸が苦しそうな様子が見られ、運動の負荷に耐えられないような状態を『運動不耐性』といいます。

運動時には全身の筋肉を激しくあるいは強く動かすことが必要になるため、体の酸素要求量が増加し、体には心拍数や呼吸数を増やして酸素供給を賄おうとする反応が起こります。

しかし心臓や呼吸器、あるいは血液の異常などが存在すると、その変化に対応することができずに座り込んだり、呼吸が荒くなる、さらにひどい場合には倒れることがあります。

猫は体調が悪いとじっとしていることが多い動物なので、運動不耐性を早期に見つけることは難しいことが多いですが、呼吸数が多い、舌の色が白っぽい、開口呼吸している、ふらつく、倒れるなどといった症状があった場合には、できるだけ早く病院を受診しましょう。

猫の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の考えられる病気(原因)とは

心臓疾患の可能性があります。

運動不耐性を起こす代表的な疾患には心臓疾患があります。
猫の心臓疾患としては肥大型心筋症などの心筋症に加え、心臓の中で血流が逆流してしまう僧帽弁閉鎖不全症やフィラリア感染症、先天性心疾患などがあります。

特に肥大型心筋症では、心臓の筋肉が肥厚することで心臓の内腔が極端に狭くなり、一回に拍出できる血液量が非常に少ないため、それをカバーすべく安静時であっても心拍数が非常に上昇しています。
その状態でさらに興奮や運動などの負荷がかかると、体の要求する酸素量を十分に供給できない状態になり、開口呼吸しながら座り込んだり、重度の場合には倒れることもあります。

同様に僧帽弁閉鎖不全症などでも、心臓が一回の拍動で送り出せる血液量が低下しているため、激しく動いたときに酸欠状態となり苦しそうにする様子が見られます。

また、このような症状が1歳未満の子猫、特に生まれて間もない子猫に起こる場合は、先天性心疾患の可能性を強く疑って検査を行います。

呼吸器の異常によっても起こります。

肺炎や肺水腫、肺線維症、重度の猫喘息、胸水貯留などがある際にも、運動不耐性が現れます。

肺は肺胞という小さな袋状の構造が無数に集合した臓器で、肺胞には細かな毛細血管が張り巡らされ、そこで空気中の酸素と体内で作られた二酸化炭素を交換するガス交換を行っています。

肺炎や肺水腫などを起こすと、肺の機能が低下し、ガス交換がうまくできなくなります。
この状態で酸素を必要とする運動を行うと、体がすぐに酸欠状態となり、疲れて座り込んだり苦しそうに呼吸をする様子が見られます。

また何らかの原因で胸水が貯留していると、肺が膨らむことができるスペースが小さくなるため、呼吸困難に陥りやすくなります。
胸水が貯まる原因は様々で、腫瘍性疾患が存在することもあれば、心臓疾患による場合や、乳び胸、膿胸、低タンパク血症、感染症による胸水貯留などがあります。

心臓や呼吸器以外の原因で起こる場合もあります。

上記の疾患以外に、横隔膜ヘルニアや重症筋無力症、貧血、肥満などが原因となって運動不耐性が起こることがあります。

胸腔内を狭くする原因の一つに『横隔膜ヘルニア』があります。
腹腔内の臓器が胸腔内に侵入してしまうことで肺の拡張スペースが狭くなり、運動時に呼吸が苦しくなることがあります。

『重症筋無力症』という病気は、神経の指令を筋肉に伝える神経伝達物質がうまく作用しなくなる病気です。
局所型として巨大食道症など部分的な症状を示すタイプもありますが、全身型のタイプでは少し動くと神経伝達物質がすぐに枯渇し、筋肉を動かすことができなくなり脱力して座り込みます。
しかし、少し休むとまた動けるようになります。

全身に酸素を送り届ける血液が薄くなる『貧血』もまた運動不耐性を起こします。
貧血は出血や腫瘍性疾患、免疫異常、感染症など、様々な原因で起こることがあるため、原因を特定するためには全身的な検査が必要になります。

他には、重度の肥満や関節疾患も運動不耐性の原因となります。

猫の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

シャムでは先天性の重症筋無力症が報告されており、アビシニアンやソマリは免疫異常によって起こる後天性の重症筋無力症が好発するとされています。

それ以外の品種は遺伝的な肥大型心筋症の発症が多い品種です。

猫の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の予防方法について

疾患による発症を予防できる方法はありません。

原因となるいずれの疾患も発症を予防できる効果的な方法はありません。
定期的に健康診断を受け早期発見に努め、進行を抑制してあげることが重要です。

体重管理を行いましょう。

肥満は運動不耐性だけでなく、心臓や関節にも負担をかけ、糖尿病などを誘発する可能性もある重大な問題です。

一日の食事量を決め、それを1日2回程度に分けて与えることで肥満を予防しましょう。

猫の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の治療方法について

心臓を保護し、進行を抑制するために内科治療を行います。

心臓病に対しては、できるだけ早期から治療を開始し、進行を抑制することが重要です。

治療は内服薬の投与によって行います。
使用されるお薬は心臓病の種類と進行の程度によって異なりますが、ACE阻害薬やβ遮断薬、カルシウム受容体拮抗薬、利尿剤、血管拡張薬、抗血栓薬などが用いられます。

治療を始めたら投薬は生涯継続する必要があります。

また、症状が悪化して呼吸困難やチアノーゼがみられる場合には、状態が改善するまで酸素室での集中治療が必要になる場合もあります。

先天性の心疾患の場合には手術が必要となる場合もあります。

呼吸器の疾患には内科治療や時には外科治療が必要になります。

肺炎や肺水腫、肺線維症などによって呼吸状態が悪化している場合、症状が落ち着くまで酸素室で集中治療を行います。

肺炎に対しては抗生物質の投与、肺水腫に対しては利尿剤、肺線維症に対しては気管支拡張剤や必要に応じて抗生物質・消炎剤などを投与します。

胸水が大量に貯留している場合には、胸に針を刺して胸水を抜いてあげる処置が必要になります。

胸腔内に腫瘤が形成されている場合は、単発性であれば手術による摘出を検討しますが、転移性の腫瘍が疑われる場合には呼吸を楽にするために酸素吸入など対症療法を行います。
腫瘍の種類によっては抗ガン剤による治療を行う場合もあります。

それぞれの原因疾患に対する治療を行います。

重症筋無力症の場合は基本的には投薬治療を行います。
しかし発症初期には、薬を飲ませてもうまく飲み込めないこともあり(巨大食道症)、その場合には注射薬で初期治療を行うか、場合によっては胃瘻チューブなどを設置します。
自宅で投薬治療が可能になったら、コリンエステラーゼ阻害薬というお薬を投薬します。

横隔膜ヘルニアの場合は、手術による整復が必要です。
しかし、中には整復することによって再灌流障害という状態に陥る場合もあるため、その適応については慎重な判断が必要です。

貧血は様々な疾患で起こりますが、その原因によって治療方法は全く異なります。
まずは全身的にしっかりと検査を行い、貧血の原因を突き止め、それに対して治療方針を立てていくことが必要です。

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