猫の「左右の眼の色が違う」症状とは
虹彩の色が左右で異なった状態になります
猫の目の色は、生まれたときにはキトンブルーという青みがかった色をしていますが、生後しばらくするとその猫固有の眼の色に変化します。
眼の色は一旦決まると基本的には変わらず、多くの場合は左右で同じ色をしています。
まれに生まれつき左右の眼の色が違うオッドアイという目の猫がいます。
白猫や毛色の薄い猫にみられることが多く、眼の色を決めるメラニン色素の量が左右で異なることによって起こり、黄色の眼と青色の眼であることがほとんどです。
先天性の場合は特に治療が必要な状態ではありません。
目の色は『虹彩』というヒトでいう黒目の部分の色によって決まります。
虹彩には瞳孔括約筋という筋肉が存在し、それが伸び縮みすることで瞳孔が大きく開いたり細く縮んだりし、外界の光が目の中に入る量を調節する「しぼり」の役割を果たしています。
この虹彩に炎症が起こると虹彩の色が変化して左右差が生じ、時には瞳孔の大きさにも左右差が現れます。
目に炎症が起こっている時には、目の痛みや充血なども起こり、目を細めたり涙目、目を気にする様子などが見られることがあります。
眼の色に変化がおこる病気の中には、進行すると緑内障や失明につながる可能性のある疾患も含まれますので、必ず病院を受診しましょう。
角膜が白く濁った状態になります
虹彩の色の変化ではなく、目の表面の角膜が何らかの原因で白く濁った状態になると目の色に左右差があるように見えることがあります。
角膜疾患の場合は目の痛みを伴っていることが多く、目の開きが小さくなったり、涙目、目ヤニ、目を気にする様子などが見られます。
眼の奥や前眼房に変化が現れます。
瞳孔の奥にある水晶体や、角膜と虹彩の間にある前眼房という部分に変化が現れ、眼の奥が白く曇って見えたり、眼の中が真っ赤に染まって見える、白~黄色っぽい貯留物が貯まって揺れているのが見えることがあります。
猫の「左右の眼の色が違う」症状の考えられる病気(原因)とは
ブドウ膜炎によって起こります。
虹彩はブドウ膜の一部です。
ブドウ膜には虹彩の他、水晶体の厚みを調整する毛様体、眼の奥(水晶体の奥)の内張をして血液供給を行う脈絡膜などが含まれます。
これらのどこかに炎症が起こった状態がブドウ膜炎で、症状として虹彩の色に変化が現れることが多くなります。
ブドウ膜炎は様々な原因で起こりますが、代表的なものには猫伝染性腹膜炎などの感染症(ウイルス疾患、細菌感染、寄生虫症、真菌感染など)、目の外傷に伴うもの、白内障に伴う水晶体の融解に伴って起こるもの、水晶体脱臼に伴って起こるもの、目の腫瘍(主にリンパ腫)などがあります。
ブドウ膜は血管が豊富な組織であるため、全身的な感染症の影響を反映して変化が起こりやすい部分です。
感染症によってブドウ膜炎が起こった場合、両目に同時に症状が現れることもあり、その場合は眼の色の変化に気づきにくくなってしまいます。
角膜炎や角膜潰瘍によって起こります。
目の表面の白濁は、角膜に炎症が起こった場合や角膜に傷ができたときに炎症細胞が集まってくることによって起こります。
角膜炎や角膜潰瘍は外傷、ウイルス感染症や細菌感染、慢性的な物理的刺激、涙の分泌不足などによって起こります。
また、角膜黒色壊死症という角膜疾患では角膜に黒い斑点のような病変を作ります。
周囲に強い炎症を起こし、強い痛みから目を細めたり涙を流していることが多くみられます。
発症にはヘルペスウイルスの感染が関与していると考えられています。
その他の眼の疾患でも眼の色が違って見えることがあります。
前眼房に変化が現れ、眼の色が変化したように見えることがあります。
前眼房内に出血が起こった場合は眼の中が赤く、膿が貯留した場合には白~黄色がかった貯留物が眼の中に見える状態になります。
また猫の目の腫瘍として比較的発生が多い悪性黒色腫(メラノーマ)が虹彩にできた場合には、虹彩に黒い色素が沈着し、それが徐々に拡大したり盛り上がってくる様子が見られます。
白内障が進行した場合には水晶体が真っ白に白濁し、反対側の眼と比べると瞳の奥が真っ白に濁っている様子が確認できるようになります。
猫の「左右の眼の色が違う」症状の好発品種について
好発する品種はありません。
品種による好発傾向は特にありません。
猫の「左右の眼の色が違う」症状の予防方法について
感染症を予防しましょう。
ブドウ膜炎も角膜炎や角膜潰瘍も、猫の場合猫ヘルペスウイルスに関連して起こることがあります。
ヘルペスウイルスは子猫のときに感染することが多い感染症で、一度感染すると症状が一旦回復しても神経節などに潜伏感染し、生涯体からウイルスを排除することはできません。
しかし、ワクチンで免疫を付けることで発症を防ぐことができます。
定期的にワクチンを追加接種し、免疫を維持するようにしましょう。
室内飼育するようにしましょう。
できるだけ外には出さず、室内飼育を徹底することで様々な感染症を予防できます。
また、猫同士のケンカによる目の外傷が起こるリスクも減らすことができると考えられます。
猫の「左右の眼の色が違う」症状の治療方法について
ブドウ膜炎は点眼薬と内服薬で治療します。
ブドウ膜炎が原因の場合、まずはブドウ膜炎が起こった原因をさらに調べることが必要です。
そのうえで原因疾患に対する治療と合わせて、ブドウ膜の炎症を抑える治療を点眼薬や内服薬で行います。
ブドウ膜炎の原因疾患として白内障や水晶体脱臼がある場合、外科手術が必要になるケースもあります。
眼の手術は専門性が高いため、眼科専門医を受診しましょう。
角膜を保護する治療を行います。
角膜炎や角膜潰瘍が原因の場合、角膜に起こっている炎症を抑えつつ角膜を保護して治療を行います。
基本的には角膜保護剤の点眼と消炎剤による治療を行いますが、瞼や顔の構造上、慢性的に睫毛や被毛が目に刺激を与えていることが原因の場合、手術によって瞼の形成を行うなどといった外科的な処置が必要になるケースもあります。
ウイルス疾患などの感染症が原因の場合は、インターフェロンや抗生物質などを原因疾患に合わせて投与します。
眼の腫瘍が原因の場合は手術や抗がん剤治療を行います。
猫の眼の腫瘍の多くは、治療のために眼球摘出が必要になります。
メラノーマのように悪性であっても、転移が起こる前に早期に摘出できれば予後は比較的良いとされています。
全身性のリンパ腫が目にも発症したと考えられる場合には抗ガン剤による治療を行うこともあります。