猫の「鼻血が出る(鼻汁に血が混ざる)」症状とは
鼻汁がピンク色になったりくしゃみをした際に血液様の鼻汁が出ます
猫はヒトのように何もしていないのに突発的に出る鼻血などは通常見られません。
鼻のあたりを強打した場合には外傷に伴って鼻血が一過性に出ることもありますが、それ以外で鼻血が出ている場合は、鼻腔内や全身状態に何かしらの異常が起こっているサインと考えられます。
多くの場合は鼻炎症状とともに鼻汁に血液が混ざってピンク色になったり、赤い筋状の出血が鼻汁に認められます。
ヒトのように血液がポタポタと垂れるような出血が起こることはあまり多くありませんが、くしゃみをした際に、鼻汁と一緒に血の塊が排出されることもあります。
猫カゼで鼻炎が起こり弱くなった粘膜から出血が起こった場合には、鼻汁や目ヤニ、結膜炎なども併発していることが多く、鼻が詰まった状態でいると匂いを感じにくくなるために食欲が低下し、体力も落ちてしまうことがあります。
また、鼻炎だと思っていたら鼻腔内に腫瘍が形成されているケースも時々見られます。
鼻腔内の腫瘍の場合は症状が片方の鼻だけから始まることが多く、進行するにつれて両方の鼻に症状がみられるようになり、鼻梁(鼻筋)の腫れ・変形や目が圧迫される様子などが見られるようになります。
いずれの場合も治療せずにいると症状はなかなか改善せず、鼻からの出血だけでなく原因となっている疾患が悪化する可能性があるため、病院へ連れて行き早めに治療しましょう。
猫の「鼻血が出る(鼻汁に血が混ざる)」症状の考えられる病気(原因)とは
鼻炎の悪化によって鼻の粘膜から出血がおこります。
猫カゼなどの鼻炎に伴って、鼻の粘膜から出血することがあります。
猫カゼ症状を起こす感染症には、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、クラミジアなどが代表的なものとして挙げられ、他には細菌感染や真菌感染などによるものもあります。
同様に鼻炎をおこす原因として、花粉やハウスダスト、あるいは食べ物に対するアレルギー反応として鼻炎が起こるアレルギー性鼻炎があります。
これらの原因によって鼻炎がおこると鼻汁が出るようになり、その炎症が重症化すると弱くなった鼻の粘膜から出血が起こることがあります。
また鼻腔内に異物を吸引し、その刺激によって鼻の粘膜が傷ついた場合にも少量の鼻出血がみられます。
これらの原因による出血は一般的には少量で、鼻汁がうっすらとピンク色になる程度です。
鼻腔内の腫瘍が原因で出血するケースもあります。
猫の鼻腔内にはリンパ腫や腺癌などの腫瘍が形成されることがあります。
初期症状は鼻炎とあまり変わらず、鼻汁やクシャミなどがみられますが、進行すると腫瘍が骨を溶かしながら大きく成長し、鼻梁の変形や目が圧迫されるなど顔貌に変化が見られることがあります。
腫瘍の場合の出血は少量で鼻汁がピンク色になる程度のこともあれば、鼻炎によるものに比べるとやや多く出血することもあります。
鼻腔以外の原因で鼻出血が起こることがあります。
上顎の歯の歯根に感染が起こり、歯周病から膿瘍を形成すると、それが鼻に開通して膿性の鼻汁や鼻出血を起こすことがあります。
他には血液凝固機能の異常が起こり、出血傾向が起こっている時に鼻出血がみられることがあります。
血液の凝固異常は、免疫の異常や肝機能不全、全身性の重度の感染症、腫瘍性疾患など、重大な疾患に伴ってみられます。
猫の「鼻血が出る(鼻汁に血が混ざる)」症状の好発品種について
好発する品種はありません。
品種による好発傾向は特にありません。
猫の「鼻血が出る(鼻汁に血が混ざる)」症状の予防方法について
感染症を予防しましょう。
猫カゼ症状を起こす感染症の中には、ワクチンで予防できるものがあります。
定期的にワクチンを追加接種し、感染症に対する免疫を維持するようにしましょう。
また、多くの感染症は屋外で感染している猫と接触することによってうつります。
室内飼育を徹底することは感染症を予防する効果的な方法の一つです。
猫の「鼻血が出る(鼻汁に血が混ざる)」症状の治療方法について
鼻炎の治療を行います。
鼻炎によって鼻粘膜から出血している場合、まずは鼻炎に対する治療を行います。
鼻炎の原因によって治療方法は多少異なります。
ウイルス性疾患の場合はインターフェロンや抗生物質を投与し、細菌感染の場合は抗生物質、真菌感染の場合は抗真菌剤を投与します。
アレルギーによって鼻炎が起こっている場合にはアレルゲンをできるだけ除去し、症状が治まらない場合は抗ヒスタミン剤やステロイドなどで炎症を抑える治療を行います。
食物アレルギーの場合は食事療法を合わせて行います。
鼻腔内に異物が存在する場合には異物を摘出することが必要です。
腫瘍に対する治療を行います。
鼻の変形などが顕著にみられ腫瘍が疑われる場合には、鼻腔内の組織を一部採取して細胞の検査を行い、検査結果に基づいて治療方法を検討します。
猫の鼻腔に多くみられるリンパ腫では、放射線療法や抗がん剤での治療が効果的です。
その他の腫瘍では外科手術による切除が必要なこともありますが、顔貌が大きく変形してしまうことが予想される場合には放射線療法などと組み合わせた治療方法を慎重に検討します。
その他の原因疾患に対する治療を行います。
歯周病や歯根膿瘍から鼻出血が起こっている場合には、歯科処置が必要です。
麻酔をかけて口腔内のクリーニング(歯石除去など)を行い、必要に応じて抜歯処置を行います。
抜歯した部分は歯肉を縫合し、鼻腔内と口腔内の連絡を絶ち、感染に対する治療として抗生物質をしっかりと投与します。
出血傾向が起こっている場合は、体の中で命に関わる重大な問題が起こっている可能性が高くなります。
まずは全身の精密検査を行い、原因疾患がどこにあるのかを突き止め、その原因に対して迅速に対処しなければなりません。