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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「失神」症状とは

急に意識を失って倒れます。

失神は突発的に意識を消失し、短時間体が完全に脱力した状態になった後自然に回復する病態で、健康な猫ではあまり見られることのない症状です。
そのため、猫が失神するときは体に何らかの疾患が隠れている可能性が考えられます。

原因によって症状の現れ方が多少異なり、同じように意識を失う病態の中には『失神』の他に『発作』、『虚脱』などと呼ばれる状態も含まれます。
それぞれを区別するためには、意識を失う前後の様子をよく見ておくことが重要です。

・普段から苦しそうな呼吸をしている
・舌の色が白いあるいは青っぽい(チアノーゼ)
・興奮した時に倒れた
・立ち上がった際に脱力するように倒れた
・倒れた後に痙攣などが見られた
・前兆がみられる
・性格が変わった

特に失神の頻度が多い場合や意識を失っている時間が長い場合には命に関わる場合もあるため、必ず病院を受診しましょう。

受診の際にはどのような状況で失神したか、失神している時間はどれくらいだったか、失神からの回復はどのような様子だったか、説明できるようにメモしておく、あるいは動画を撮ることができれば撮影して病院で見せると診断に役立ちます。

猫の「失神」症状の考えられる病気(原因)とは

心臓に異常があります。

肥大型心筋症などの心筋症、先天性の心奇形などの猫に運動による負荷がかかった場合や、興奮または緊張状態になることで心拍数が上がり、心臓が全身に十分に血液を送れない状態に陥ると、脳が虚血に陥り失神することがあります。

また不整脈によって心臓がうまく収縮できなくなることによっても失神することがあります。
不整脈は心筋症などに伴って現れることもありますが、心臓の形態には全く異常がなく不整脈だけが起こることもあり、中毒物質の摂取や代謝性の疾患(低血糖や電解質異常など)も原因となりえます。

他には心臓の周りの心嚢液が何らかの原因で過剰に貯留し、その圧によって心臓が拡張できなくなることで失神する場合もあります。(心タンポナーデ)

心疾患が疑われる場合、心電図検査や血液検査、レントゲン検査、超音波検査をおこなうことで診断し

神経症状の一つとして失神がみられることがあります。

てんかん発作や脳の先天的な異常、あるいは脳腫瘍の症状の一つとして、失神がみられることもあります。
厳密には失神ではなく「発作」という分類になるのですが、発作の出方には様々なパターンがあり、全身性にガクガク痙攣するものもあれば、突然意識を消失して数秒~数十秒後に意識を取り戻すような発作もあります。

発作として起こるものでは前兆が見られたり意識を消失した後に痙攣や遊泳運動(手足を泳ぐように動かす動作)をすることがあり、多くの場合は同様の症状を定期的(数日から数か月に一度)に繰り返します。
中にはうれしいことが起こった時(おやつをもらえた時など)に喜んで興奮した直後に倒れるケースなどもあり、発生した時の状況を覚えておくことが診断に非常に役立ちます。

脳内の構造に異常が起こるような疾患(脳の萎縮や腫瘍)では、日常生活にも変化が現れることが多く、ボーっとしている、性格が変化した、歩行状態に異常があるなどといった神経的な異常が見られる場合もあります。

低血圧などによっても失神します。

急性の出血が起こった際などに、血圧が急激に低下して意識を消失することがあります。
このタイプは「虚脱」といいます。

例えばお腹の中に大きな腫瘍が隠れて存在しており、その腫瘍が破裂して大量出血が起こると意識を失って倒れます。
比較的多くみられるものとしては肝臓や脾臓にできた血管肉腫という腫瘍が破裂するケースです。

他には代謝異常やアナフィラキシーショックのような状態に陥り全身の血圧が急に下がるような状況や、過度の緊張や興奮によって自律神経の働きがアンバランスになった結果として意識を消失することがあります。

猫の「失神」症状の好発品種について

好発する品種はありません。

失神を好発する品種は特にありません。

猫の「失神」症状の予防方法について

普段から呼吸状態をよく見ておきましょう。

心臓疾患や肺疾患のある猫は、よく観察すると普段から呼吸が速く浅いなど、呼吸状態に異常が見られることがあります。
その段階で診断、治療をしっかりと行っておくことで失神するリスクを減らすことができます。

猫の「失神」症状の治療方法について

心疾患の治療を行います。

心臓疾患による失神がみられる場合は、内服薬を投与し心臓の機能を改善・補助する治療を行います。
心臓の収縮が改善し、全身への血流が安定して送り出されるようになると、失神の頻度は減少します。

甲状腺機能亢進症などの基礎疾患が存在する場合には、心臓の治療と合わせて治療を行います。
先天性の心疾患(心奇形)に対しては、状態に応じて心臓の手術や内科治療を検討します。

しかし治療を行っていても、運動をしたり興奮状態になると心拍が上昇して失神を誘発する可能性はありますので、適度に安静に生活させることも重要です。

不整脈によって失神する場合には抗不整脈薬での治療を行いますが、状態が安定しない場合にはペースメーカーを装着する必要が出てきます。

心タンポナーデになり心臓が拡張できない状態に陥っている場合には、心嚢穿刺を行い心臓への圧迫を直ちに解除してあげることが必要です。

脳や神経の異常によって起こる場合には精密検査が必要です。

発作の原因として脳疾患が疑われる場合には、CTやMRI検査を行い、脳の構造的な異常や炎症が起こっていないか検査する必要があります。

検査の結果に基づいて、脳に異常がある場合には手術や対症療法を検討し、てんかん発作が疑われる場合には抗てんかん薬などの投与を行います。

低血圧に対しては緊急治療が必要なケースもあります。

出血やアナフィラキシーショックによって虚脱した場合には、血圧を上昇させ、ショック状態を解除しなければ命に関わります。
点滴を行い血圧を上げるとともに、原因に対して止血・輸血、アドレナリンの投与、代謝異常を改善させる治療(電解質の補正など)を行います。

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