猫の「痙攣」症状とは
体全体あるいは一部の筋肉が意思とは関係なく繰り返し収縮します。
痙攣とは、自身の意思とは関係なく起こる筋肉の収縮が続く状態です。
手足の先や皮膚の一部だけがピクピクとするようなものもあれば、意識を消失して全身をガクガク震わせるような痙攣もあります。
全てが病的なものというわけではなく、筋肉を激しく動かした後の疲労などによっても手足がピクピクするような痙攣が現れることがあります。
しかし、意識を消失するような痙攣や、手足だけの部分的な痙攣であっても同じ症状を何度も繰り返し起こす場合には何らかの疾患が関連している可能性があります。
以下のような症状を伴っている場合には特に注意が必要です。
・同じような痙攣を定期的に繰り返す(数日~数か月ごと)
・意識を消失する
・痙攣時に失禁する
・全身を激しくバタバタと動かす
・痙攣している時間が長い
・痙攣が治まった後もボーっとしている、回復しない
何かしらの疾患が関与している場合には、痙攣の他に下記に示すような症状が見られることがあり、診断のヒントになります。
・水を異常にたくさん飲む
・吐き気がある、頻繁に吐く
・呼気の臭いがきつい
・ぐったりしている
・食欲不振
・寝てばかりいる
・歩き方がおかしい(フラフラする、まっすぐ歩けない、クルクル回るなど)
病的な痙攣の原因は多岐にわたりますが、いずれの原因であっても全身性の痙攣が長時間継続する場合は緊急治療が必要です。
痙攣中は体を触ったり刺激することはせず、落ち着くまで静かに見守った方がいいですが、5分以上痙攣している場合やすぐに次の痙攣が起こってしまう場合、痙攣が落ち着いてもいつもと様子が違うと感じた場合にはすぐに病院へ連れて行きましょう。
また、痙攣の様子を動画で撮影することができれば診断に役立ちますので、可能であれば撮影しておき、病院を受診する際に持っていきましょう。
猫の「痙攣」症状の考えられる病気(原因)とは
脳の異常やてんかん発作が原因です。
脳の炎症や脳腫瘍、先天的な脳の奇形(水頭症など)、頭部の外傷による脳出血や脳損傷、あるいはてんかんなどが原因となり痙攣が起こることがあります。
猫の脳炎の多くは感染性に起こります。
猫伝染性腹膜炎や猫エイズ、あるいは中耳炎・内耳炎から細菌感染が脳に波及する、またはトキソプラズマなどの寄生虫、真菌の感染などが原因となります。
脳の異常による痙攣の診断を行うためには、CT検査やMRI検査、脳脊髄液の検査が必要となり、大学病院などの高度医療設備のある病院を受診することが必要です。
脳の構造に異常が見られず、血液検査や脳脊髄液の検査などで痙攣を起こす他の疾患が除外された場合に、てんかんによる痙攣であると診断されます。
内臓疾患が原因です。
腎臓病による尿毒症や低血糖、高アンモニア血症(肝性脳症)、低カルシウム血症などによって痙攣が起こる場合もあります。
尿毒症は高齢の猫で多い慢性腎臓病以外に、尿路閉塞などが原因で起こる急性腎不全でも見られます。
低血糖は子猫が感染症などにかかり食事をとれなくなった場合や、インスリノーマという腫瘍が膵臓にできた場合、あるいは糖尿病治療のために注射したインスリンが過剰になった場合に起こります。
高アンモニア血症は、重度の肝障害や門脈シャントという病気によって肝臓の解毒機能が十分に発揮できないことによって起こります。
低カルシウム血症は上皮小体の病気や腎臓病に伴って、あるいは出産後の母猫で時々見られます。
中毒性物質の摂取などによっても起こります。
ユリなどの植物やアルファリポ酸などヒト用のサプリメントや薬、タバコの吸い殻など、猫の体に有害な物質を誤って摂取した際に痙攣することがあります。
特にユリは床に落ちた花粉を舐めたり活けていた花瓶の水を飲むなど、ごく微量の摂取であっても重篤な腎機能不全を起こし、命に関わります。
中毒の他には、熱中症によって高体温となった場合にも痙攣がみられます。
猫の「痙攣」症状の好発品種について
好発する品種はありません。
品種による好発傾向は特にありません。
猫の「痙攣」症状の予防方法について
中毒性物質を猫の生活環境に置かないようにしましょう。
有害な植物やヒトの薬など、猫が誤って口にすると中毒を起こす可能性のあるものは、猫が決して口にすることがないように管理することが重要です。
ユリなどの植物は猫を飼っている家には飾らない、飲み薬や薬品は猫が開けることができない容器に入れて管理するようにしましょう。
感染症を予防しましょう。
様々な感染症が猫の脳炎の原因となりますが、感染症の多くは感染猫との接触や感染動物の捕食などによって起こります。
室内飼育を徹底することで感染症にかかるリスクを軽減できます。
猫の「痙攣」症状の治療方法について
痙攣が止まらない場合は緊急治療が必要です。
多くの痙攣は数秒から数十秒、長くても1分以内に落ち着きますが、中には初めの痙攣が治まる前に次の痙攣が重なって起こり、痙攣が長時間持続して回復できなくなる「重積」という状態に陥ってしまう場合があります。
重積状態では痙攣による高体温や心臓・呼吸器・脳に大きな負担がかかることで命を落としてしまう可能性があるため、迅速に痙攣を抑える治療を行わなくてはなりません。
抗けいれん薬の座薬投与や、可能であれば静脈注射を行い、それでも痙攣がぶり返す場合には鎮静剤を持続的に点滴して一度眠らせる処置をとります。
その後、徐々に鎮静剤の投与量を減らして覚醒させ、原因疾患に対する継続治療を行います。
原因疾患に対する治療が必要です。
痙攣をおこす疾患は多岐にわたるため、まずは全身的な検査(血液検査、ホルモン検査、レントゲン検査、超音波検査)を行い、必要に応じてCTやMRI検査などを行います。
感染症による脳炎に対しては抗生物質やインターフェロン、駆虫薬、抗真菌剤などを投与することが必要です。
それとともに対症療法として脳の炎症を抑える消炎剤やけいれんを抑える抗てんかん薬などを投与します。
尿路閉塞による尿毒症の場合は、尿路の閉塞を解除しなければなりません。
子猫の低血糖やインスリンの過剰投与では糖分の補給あるいは食事をとらせることが治療となります。
尿路閉塞の原因が腫瘍である場合やインスリノーマ、門脈シャントなどの場合には、手術による治療が必要となる場合があります。
中毒性物質を摂取してしまった場合は、胃の中に残っている原因物質を催吐処置で吐かせるほか、すでに症状を発症している場合には解毒・排泄を促すために静脈点滴や経口吸着剤などの投与を行い、症状が回復するまで対症療法を行います。
てんかんによる痙攣発作の場合は、その発生頻度によって抗てんかん薬の投与を検討します。