犬の「瞳孔が開いている」症状とは
視覚異常がある可能性があります。
眼の色がついている部分を虹彩、その中心にある黒目の部分を瞳孔といいますが、瞳孔の大きさを変化させるのは虹彩にある瞳孔括約筋と瞳孔散大筋の働きで、その筋肉の働きを支配している交感神経・副交感神経の興奮の程度や周囲の光の強さによって、瞳孔を開いたり閉じたりします。
瞳孔は周囲の環境や精神状態の影響によって常に変化しますが、眼や神経の働きに影響を及ぼす病気が原因で瞳孔が開いたままになることがあります。
視覚に異常がある様子が見られる場合、注意が必要です。
犬の「瞳孔が開いている」症状の考えられる病気(原因)とは
緑内障
緑内障とは、何らかの原因によって眼圧が上昇することで、眼の痛みや視覚障害を引き起こす疾患です。
緑内障は、原因によって原発性緑内障、続発性緑内障、先天性緑内障に区別されます。犬では猫と比べて先天性緑内障の発症は少ないとされています。
原発性緑内障は、眼球内の異常やその他の全身性疾患は一切認められず、最終的には両眼に発症します。根本に遺伝が関与していると考えられています。
続発性緑内障は、眼球内の問題や全身性疾患に関連した眼内の変化(炎症、出血、腫瘍、水晶体脱臼など)により、眼房水の排出に障害が起こることで発症します。
緑内障になると強結膜の充血、角膜浮腫、散瞳が見られます。散瞳している状態で、眼球内の眼房水がたまっている状態ですと、眼が緑がかってしまいます。
進行性網膜委縮
進行性網膜委縮は、網膜の視細胞が徐々に障害を受けることにより進行性の視覚異常が起こる遺伝性の疾患です。
進行性網膜委縮の多くは、視細胞のうち暗所で働く杆体細胞の障害から始まるため、初期は薄暗い所での視覚異常(夜盲)か見られます。夕方の散歩で歩かなくなる、暗い所での階段の上り下りを嫌う、などの症状で飼い主様が気付くことがあります。
徐々に明るい所でも同様の症状が認められるようになり、最終的には網膜全体に変性が波及し失明に至ります。失明するまで数年かかることもあります。
瞳孔が開き、対光反射は青色には反射し、赤色への反射は低下します。そのため、ビー玉のようにきらきらした眼になります。
犬の「瞳孔が開いている」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- アラスカンマラミュート
- シーズー
- 柴犬
- トイプードル
- ビーグル
- ミニチュアシュナウザー
- ラブラドールレトリバー
アメリカンコッカースパニエル、シーズー、柴犬、ビーグルなどが緑内障の好発犬種とされています。
トイプードル、ミニチュアシュナウザー、アメリカンコッカースパニエル、ラブラドールレトリバー、アラスカンマラミュートなどが進行性網膜委縮の好発犬種とされています。
犬の「瞳孔が開いている」症状の予防方法について
早期発見・早期治療が重要です。
遺伝性疾患、特発性疾患が多いため予防は難しいと言えます。早期発見・早期治療が重要です。
外傷性の緑内障に関しては、眼に傷を付けないよう注意する必要があります。
犬の「瞳孔が開いている」症状の治療方法について
緑内障
高眼圧が24~72時間持続すると視覚が戻らないと言われているため、急性期には緊急療法をおこなう必要があります。
点眼や注射によって眼圧を下降させます。
眼圧が下降した場合は、点眼治療を継続します。
眼圧が下降しなかった場合は、視覚保持のために毛様体光凝固術と隅角バルブ移植術を実施することが推奨されています。既に視覚を失っている場合は、義眼、毛様体破壊術、眼球摘出術などがおこなわれます。
進行性網膜委縮
進行性網膜委縮は、失明した場合は根本的な治療方法はありません。
視覚低下はあるが失明まで至っていない場合は、進行を抑制する治療をおこなうことがあります。
抗酸化作用、細胞保護作用を有するサプリメントが推奨されています。
また、進行性網膜委縮は遺伝性疾患であるため、罹患動物の繁殖を制限することで進行性網膜委縮に罹患する犬の増加を防ぐことが可能です。遺伝子検査にて検出された罹患犬、キャリア犬の繁殖制限をすることが進行性網膜委縮の根本治療につながると言えます。