猫の「身体に内出血がある(赤紫や青紫になっている)」症状とは
被毛が薄い部分に内出血を認めることがあります。
内出血とは、体内で血管が損傷し皮膚の中や皮下組織、筋肉、関節内などで出血がおこる状態をいいます。
内出血が起こると、皮膚を通して出血して青~赤紫になった皮下組織などが見える状態になり、皮膚から浅い部分で起こった内出血は痣のように見えるようになり、紫斑と呼ばれます。
猫の全身は毛で覆われているため、小さな傷や内出血があっても毛で隠れて気づかれないこともありますが、広範囲に内出血が起こった場合には被毛の薄い部分や毛をかき分けたとき、ブラッシング時などに確認することができ、皮膚表面ではなく、眼の結膜や口の粘膜に内出血がみられる場合もあります。
原因にもよりますが、内出血を起こしている時には、下記のような症状を伴っていることがあります。
・元気がない
・食欲不振
・歩き方がおかしい
・フラフラする
・体を触ると痛がる
・体の一部に腫れがある
・発熱
・尿の色が濃いオレンジ~赤い
・便が黒い
広範囲の内出血は通常の生活で少し体をぶつけた程度では起こりません。
重度の外傷や、体内で出血しやすい状況に陥っているなど、命に関わる重大な怪我や疾患が存在する可能性が高いため、まずは病院へ連れて行きましょう。
猫の「身体に内出血がある(赤紫や青紫になっている)」症状の考えられる病気(原因)とは
外傷によっておこります。
交通事故や高所からの落下によって、皮下組織や皮膚の中あるいは筋肉などに出血が起こっていることがあります。
骨折を伴う場合にはその部分の腫れや疼痛が重度に起こり、四肢の場合は脚の変形も認められます。
肝臓疾患や免疫異常、先天性の異常などが原因で起こることがあります。
肝臓では血液の凝固に必要ないくつかの因子を産生しています。
肝臓に重度の障害が起こるとこれらの凝固因子が産生されず枯渇するために出血傾向が起こり、容易に内出血が起こることがあります。
体の免疫に異常が起こり、自身の細胞を免疫によって破壊されてしまう病気でも内出血が見られることがあります。
免疫介在性血小板減少症などでは、体の内側(内股やわきの下等など)の皮膚が擦れやすい部分に紫斑が多く見られます。
同様に免疫の関与が疑われる皮膚血管炎では特に猫の耳に症状が出やすく、耳介に内出血や壊死による変形が見られます。
猫白血病ウイルス感染症の発症末期や骨髄に異常が起こる疾患でも、血小板が正常に産生されず、出血傾向を起こすことがあります。
他には先天的に血液凝固因子の一部が欠損、不足、あるいは機能に異常があるために、少しの刺激に対して容易に出血が起こるような病気が原因の場合もあります。
代表的なものとしては血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病などがあります。
播種性血管内凝固(DIC)を起こしています。
血液の中には出血が起こった時に止血するために様々な凝固因子という成分が含まれています。
その中でも主に血液を固める、出血を止めるために働く一連の系統を『凝固系』、凝固の際にできた凝血や線維素を溶かして出血した血管を元通りに戻そうとする系統を『線溶系』と呼び、これらの因子がバランスよく働くことで正常な止血と血管の修復が起こります。
しかし、重度の感染症や腫瘍性疾患、急性膵炎、熱中症、広範囲な火傷、手術による侵襲、中毒などがきっかけとなり、凝固系が亢進したり線溶系が亢進することにより、不必要に血栓ができたり出血しやすくなることがあります。
この状態を播種性血管内凝固(DIC)といい、命に関わる非常に危険な状態です。
猫の「身体に内出血がある(赤紫や青紫になっている)」症状の好発品種について
好発する品種はありません。
品種による好発傾向は特にありません。
猫の「身体に内出血がある(赤紫や青紫になっている)」症状の予防方法について
室内飼育で事故のリスクを減らすことができます。
室内での生活では、猫が骨折などの重症の怪我をすることはめったにありません。
多くの場合は外に出る猫が交通事故に遭った、高所から落下したときなどに起こります。
室内飼育を徹底することでこれらのリスクを軽減することができます。
重度の肝臓疾患を患っている場合や先天的に凝固因子を欠損していることが分かっている猫では、出血が起こらないように特に生活に気を付けなくてはなりません。
猫の「身体に内出血がある(赤紫や青紫になっている)」症状の治療方法について
外傷の治療を行います。
強い打撲などによって皮膚や筋肉などに出血が起こった場合は、数日安静に過ごしていれば通常は内出血が徐々に吸収されて消失します。
骨折などを伴っている場合には手術で固定するなど、治療を施す必要があります。
大血管の損傷を伴う場合には血管の結紮や修復が必要な場合もあります。
原因疾患を治療します。
外傷以外の場合、内出血を起こす原因疾患によって治療方法は様々です。
まずはしっかりと全身の検査を行い、その結果に基づいて治療を行います。
免疫疾患によっておこっている場合には、ステロイドや免疫抑制剤による免疫抑制療法を行います。
肝臓疾患に対しては肝臓の保護剤や凝固因子の生成に必要なビタミンKの投与を行います。
殺鼠剤などの誤食による中毒の場合も同様です。
腫瘍疾患に伴い起こるものに対しては、原因となっている腫瘍を切除する、あるいは抗がん剤によって治療します。
いずれの原因であっても、内出血が広範にわたる場合には重度の貧血に陥り命の危険があり、その場合には貧血の改善と凝固因子の補充を目的として輸血を行います。
先天性疾患に対しては対症療法を行います。
先天性の凝固因子欠損の場合には根本的な治療方法はありません。
日々の生活で出血が起こらないように気を付けて生活し、不慮の事故などで出血や内出血が起こった場合、あるいは外科手術が必要な場合には、輸血や対症療法を行うことで凝固因子を補う必要があります。
血友病Aやフォン・ヴィレブランド病の猫が手術を受けなければならない場合には、デスモプレシンというお薬を投与すると不足している凝固因子を一過性に増やすことができます。