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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「突然立てなくなる」症状とは

後肢や四肢が麻痺して起立できなくなります。

後肢や四肢の随意運動(自身の意思によって動かすこと)ができなくなると、立つことができなくなってしまいます。

後肢だけが麻痺した場合は前足だけで下半身を引きずる形で何とか歩くことができますが、四肢の麻痺が起こった場合には体を起こすことができず、横たわったままの状態になります。
このような状態の時は排泄に障害が起こることが多く、自力排尿が困難となってしまうことがあります。
また、呼吸が苦しそうな様子が見られる場合や、抱きかかえたときに体を痛がる様子が見られることもあります。

原因が脳にある場合には、意識が朦朧としている、痙攣発作などが見られる、眼が見えていないなどといった症状もみられることがあります。

平衡感覚の異常により転んでしまいます。

麻痺症状とは別のタイプとして、四肢は動かせるが平衡感覚がつかめずに転んでしまい立てない、というケースもあります。

これは平衡感覚をつかさどる前庭という器官に異常が生じた場合の症状で、他にみられる症状としては
・斜頚(首が傾いたままになる)
・眼振(眼球が左右あるいは上下、回転性など規則的に揺れる)
・嘔吐
・流涎
・食欲不振
などが挙げられます。

血流が遮断され、脚が固く硬直して冷たくなります。

血栓塞栓症により急性に血流が遮断されると、四肢の麻痺が起こり立てなくなります。
多くの場合は片方の後ろ足あるいは両側の後ろ足にみられます。

血栓塞栓時には激しい痛みを伴い、以下のような症状が見られます。
・呼吸速迫
・開口呼吸
・ショック状態
・激痛で転げまわる
・片方あるいは両側の足の麻痺、硬直
・麻痺した脚が冷たい(冷感)
・麻痺した脚のむくみ

もともと心疾患を患っている猫で発症する病態のため、緊急治療を行わなければ命に関わる状態に陥りやすく、また迅速に治療を行った場合でも治療がうまくいかない場合もある怖い病気です。


どのタイプであれ、急に立てなくなるという状態は異常事態ですので、直ちに病院へ連れて行きましょう。

猫の「突然立てなくなる」症状の考えられる病気(原因)とは

脳や脊髄の問題によって起こります。

動物の体は中枢である脳からでた指令が脊髄を通り、全身に分布する末梢神経へと伝達されることで筋肉が収縮し、骨や関節を動かして運動しています。
このどこかに異常が生じると、脳からの指令が伝達されず立つことができなくなる場合もあります。

原因としては以下のようなものが考えられます。
・脊髄損傷(交通事故などによる)
・椎間板ヘルニア
・線維軟骨塞栓症
・脊髄腫瘍
・脳出血
・脳梗塞 
・脳腫瘍 など

猫では椎間板ヘルニアの発症は犬ほど多くはなく比較的稀ですが、肥満傾向の猫では起こりやすい傾向があります。

前庭疾患によって起こります。

前庭とは耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官です。
この部分に異常が生じると、平衡感覚が狂ってしまい常にめまいを起こしているような状態となり、起立することが難しくなってしまいます。

原因となる疾患には以下のようなものがあります・
・耳の炎症(中耳炎・内耳炎)
・鼻咽頭ポリープ
・耳の腫瘍
・脳腫瘍
・脳炎

しかし原因が特定できない場合もあり、その場合は特発性前庭疾患と呼ばれます。

動脈血栓塞栓症を起こしています。

猫の心臓病の中で比較的多くみられる肥大型心筋症では、心臓の左心房という部屋が非常に拡大し、そこで血流が滞ることで血栓ができやすくなります。
その血栓が血流にのって全身循環に流れ込むと、下腹部にある左右の後肢に分岐する部分で詰まってしまうことがあります。
これを「動脈血栓塞栓症」といいます。

血栓塞栓症では塞栓した部分から先の血流が途絶え、硬直して冷たくなるのが特徴で、治療が行われなければ足が壊死してしまいます。
また血栓が塞栓すると激痛が生じ、猫はパニック状態になって暴れて転げまわることもあります。
元々心筋症で全身の血流状態が悪いことに加え、興奮した状態が継続するとそれだけで命の危険がありますし、血流の途絶えた脚が壊死し始めると壊死して壊れた細胞から漏れ出した成分が悪影響を与え、致死的な経過をたどることが多くなります。

速やかに病院へ連れて行き、迅速に治療することが求められます。

猫の「突然立てなくなる」症状の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

動脈血栓塞栓症は肥大型心筋症の好発品種で発症リスクが高くなります。

猫の「突然立てなくなる」症状の予防方法について

室内飼育で事故を回避しましょう。

交通事故や高所からの落下事故は、外に出る猫で多く見られます。
そのため、室内飼育を徹底することでこれらの発生リスクを軽減することができると考えられます。

心臓疾患の早期発見・早期治療に努めましょう。

健康診断を定期的に受けることで心臓疾患を早期発見し、重症化を防ぎましょう。
特に肥大型心筋症の好発品種では、若齢でも年に1回以上は心音のチェックや胸のレントゲン検査などを受けることをお勧めします。

猫の「突然立てなくなる」症状の治療方法について

脳・脊髄の損傷の種類や程度によって治療方法は様々です。

外傷に伴って脳や脊髄に炎症が起こっている場合、消炎剤の投与で症状が回復する可能性があります。
また椎間板ヘルニアの場合はヘルニア部分が特定できれば手術で麻痺した脚の機能が回復する可能性があります。
これらの治療で麻痺症状に改善傾向がみられる場合には、リハビリを行うことも重要です。

しかし、脊髄が断裂してしまっているような場合には症状の回復は難しく、飼い主さんの介護が生涯必要になることがあります。
排泄が困難な場合には、排尿を促すマッサージや必要に応じてカテーテルなどで導尿を行う必要があります。

腫瘍性疾患の場合は腫瘍の種類によって抗がん剤治療を行うこともありますが、切除が可能な部位に形成されている場合には手術も選択肢となります。

前庭疾患の場合は原因疾患の治療を行います。

前庭に問題がある場合には、その原因となっている疾患の治療が必要です。
中耳炎や内耳炎は抗生物質と消炎剤の投与などを行いますが、膿が貯留している場合や腫瘍性の疾患が存在する場合には手術を検討します。

一方原因が特定できない特発性前庭疾患の場合は、対症療法だけを行い経過観察するうちに改善することがあります。

動脈血栓塞栓症では多くは内科治療が選択されます。

動脈血栓塞栓症の治療にはいくつか選択肢がありますが、背景に心疾患があることや全身状態の悪さなどを踏まえ、多くの場合は内科治療が行われます。

治療としては、血栓が塞栓した部分の血流が再開するように血栓溶解療法や抗血栓療法を行います。
また同時に心筋症自体に対する投薬治療も開始します。

治療効果は血栓の大きさや治療開始までの時間などによって様々で、治療がうまくいくケースもあれば残念ながら命を落としてしまうケースもあります。

外科療法として血栓を取り除く手術を行うという選択肢もありますが、麻酔のリスクが高く、あまり積極的には行われていません。

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