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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の感染性心内膜炎とは

細菌感染によって引き起こされる心疾患です。

感染性心内膜炎とは、心内膜や心臓弁膜に細菌が感染することで弁の機能不全を来す心疾患です。症状は様々ですが、食欲不振や活動性低下などの非特異的な症状のみ見られる場合もあり、確定することが難しいこともある疾患です。

犬の感染性心内膜炎の症状とは

心不全の症状が見られることがあります。

細菌感染が起こることで、僧帽弁や大動脈弁にフィブリンと呼ばれる血液凝固に関与する蛋白質と血小板の沈着が見られ、疣贅(ゆうぜい、イボのこと)を形成します。この疣贅の形成によって、弁の逆流や狭窄が生じます。また、疣贅が離脱することで他の臓器へ塞栓や膿瘍が生じることもあります。

僧帽弁と大動脈弁が好発部位であるため、左心不全徴候が見られることが多いとされています。運動を嫌がるようになる、咳が頻繁に見られるようになる、呼吸が浅く速くなる、肺水腫を引き起こす、などが見られます。肺水腫を引き起こすと、血中の酸素量が低下することで粘膜が青白く変化するチアノーゼが見られることもあります。

さらに重篤な場合は、体温、心拍数、呼吸数、白血球数などに異常が認められる全身性炎症反応症候群、全身に細菌が感染が広がってしまう敗血症、全身に血栓ができ出血しやすくなる播種性血管内凝固、などが見られるようになります。

犬の感染性心内膜炎の原因とは

細菌感染が原因となります。

感染性心内膜炎は、心内膜や心臓弁膜にブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌などの細菌が感染することで引き起こされます。感染経路は様々なものがあります。歯周病、膿皮症、尿路感染症、呼吸器感染症、消化管、節足動物媒介性などが挙げられます。これらの経路から細菌が血液中に侵入して心臓に到達します。

クッシング症候群、糖尿病、甲状腺機能低下症などの疾患になると易感染状態になることがあります。易感染状態とは、免疫機能が弱かったり障害されている状態のことを言いますが、細菌感染を起こしやすくなるため感染性内膜炎の原因になり得ます。

犬の感染性心内膜炎の好発品種について

全犬種で好発します。

細菌感染が原因となるため、あらゆる年齢、犬種で起こり得ます。

犬の感染性心内膜炎の予防方法について

原因疾患、基礎疾患の早期発見、早期治療をおこないます。

細菌感染が原因となるため、その原因になり得る疾患が見付かった場合、すぐに治療しましょう。歯周病、膿皮症、尿路感染症、呼吸器感染症などを治療せずに様子を見ていると感染性心内膜炎の原因なり得るため、早期発見、早期治療を心がけましょう。
クッシング症候群、糖尿病、甲状腺機能低下症などの細菌感染を起こしやすくなる疾患を抱えている場合、その基礎疾患のコントロールをおこないます。
原因疾患、基礎疾患の治療が感染性心内膜炎の予防につながる可能性があります。

犬の感染性心内膜炎の治療方法について

細菌感染の治療と心不全の治療をおこないます。

細菌感染の治療をおこないます。採血をおこない無菌的な血液で細菌培養検査、薬剤感受性試験をおこない、抗生物質の種類を決めます。細菌が検出された場合は感染性心内膜炎が強く疑われますが、細菌が検出されない場合でも感染性心内膜炎が否定できるわけではありません。
感染経路によってよく見られる細菌が違うため、感染経路として疑わしい疾患を抱えている場合、その細菌に応じた抗生物質の投与をおこないます。急性期の1~2週間は抗生物質の静脈内投与などで集中管理をおこない、その後経過良好であったも6~8週間抗生物質の投与を継続します。

心不全が発症している場合は、僧帽弁閉鎖不全や拡張型心筋症の治療と同じように治療します。血管拡張剤、強心剤、利尿剤などを用います。

感染性心内膜炎は、治療に対する反応が悪く予後は非常に厳しいとされています。90%が5ヶ月以内に死亡してしまったという報告があります。

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