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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の胸水とは

胸腔内に多量の液体が貯留した状態です。

胸腔内には正常な動物でも2~3mlのごく少量の漿液性の液体が貯留していますが、液体が多量に胸腔内に貯留した状態を胸水と言います。
胸水は貯留する液体の種類によって、乳び胸、膿胸、血胸と呼ばれることもあります。

犬の胸水の症状とは

呼吸器症状が見られます。

胸水を起こす原因や胸水の量によって症状は様々ですが、咳、頻呼吸、努力呼吸、浅速呼吸、肺音低下、チアノーゼなどが認められます。さらに体液喪失によって血液量減少に伴うショックや脱水が見られることもあります。その他に、食欲不振、元気喪失、体重減少が見られることもあります。

胸水は、呼吸器症状、レントゲン検査、超音波検査などの結果から診断しますが、呼吸困難の改善と胸水の原因追及のため、胸腔穿刺をおこない、採取した胸水の性状を調べます。
漏出液(蛋白濃度2.5g/dl以下、比重1.017以下、細胞数1000/μl以下)と滲出液(蛋白濃度3.0g/dl以上、比重1.025以上、細胞数5000/μl以上)に分けられ、その中間を変性漏出液と呼びます。
胸水が漏出液であれば心臓疾患、肝臓疾患、腎臓疾患などが考えられ、滲出液であれば炎症を伴う感染症や癌などが考えられます。

胸水の種類

・乳び胸
乳び胸とは、リンパ液が胸管など胸腔内のリンパ管から漏出し胸腔内に貯留した状態を言います。原因不明の一次性乳び胸(特発性乳び胸)と原因疾患によって引き起こされる二次性の乳び胸に分けられます。
リンパ液は通常白濁色をしていることから、乳び胸は胸水サンプルの色から推測することができますが、膿胸などでも同様の色の胸水が認められることから注意が必要です。

・膿胸
膿胸とは、胸腔内に感染を伴う膿性液が貯留した状態を言います。胸水を呈する犬の16%が膿胸であり、両側性が多いという報告があります。多くの場合は原因の特定が難しいとされています。

・血胸
血胸とは、胸腔内出血によって血液が胸腔内に貯留している状態を言います。血胸の厳密な定義はされていませんが、胸水内PCVが10%以上である場合に血胸と診断されます。出血性滲出液も血液色をしていますが、胸水内PCVは通常1~5%程度になります。

犬の胸水の原因とは

血液中の水分の調節機能が障害されて胸水が生じます。

正常な漿液は、壁側胸膜の毛細血管やリンパ管から産生され、臓側胸膜から吸収されます。また、胸腔内の漿液量は、毛細血管圧、胸腔内圧、血清膠質浸透圧、リンパ管などによって調整されています。これらの調整機能が障害され、異常が生じると、胸腔内に液体が多量貯留して胸水となります。

胸水を起こす主な疾患には、心臓疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、栄養失調、特発性乳び胸などが挙げられます。また、肺炎や胸膜炎などの感染症、肺癌や心臓の血管肉腫などの悪性腫瘍なども原因となります。

胸水の種類別の原因

・乳び胸
原因が特定できない乳び胸と原因疾患によって引き起こされる乳び胸に分けられます。原因疾患としましては、真菌性肉芽腫、縦隔内リンパ腫、心筋症、先天性心疾患、心膜疾患、横隔膜ヘルニア、肺葉捻転などが挙げられます。

・膿胸
膿胸の原因としましては、異物、外傷、血行性もしくはリンパ行性の感染拡大、食道裂孔、寄生虫の迷入、椎間板脊椎炎の伸展、肺炎からの波及、腫瘍、肺膿瘍の破裂などが挙げられ、最多の原因は草などの迷入と言われています。

・血胸
血胸の原因としましては、外傷、胸腔内腫瘍が多いと考えられています。その他に、血友病やフォンヴィレブランド病などの先天性凝固不全、さらに免疫介在性血小板減少症、肺葉捻転、肺膿瘍の破裂などが挙げられます。

犬の胸水の好発品種について

全犬種で好発します。

胸水の原因疾患は多岐に渡るため、全ての犬種で起こり得ると言えます。

犬の胸水の予防方法について

早期発見・早期治療、原因疾患の治療をおこないます。

胸水の原因となり得る原因疾患がある場合は、その疾患の治療をおこなうことが胸水の予防につながると言えます。

犬の胸水の治療方法について

原因疾患の治療および胸水の除去をおこないます。

胸水の原因疾患の治療が中心になります。
重度の呼吸困難がある場合は、胸腔穿刺をして排液する場合があります。
貯留した液体が漏出液の場合は、維持療法として利尿剤などの投与をおこなうだけで十分な効果が得られることもあります。

胸水の種類別の治療

・乳び胸
呼吸困難などの重度な呼吸器症状が見られる場合は、迅速な胸水の除去が必要になります。頻繁に胸腔穿刺を実施する必要がある場合は胸腔ドレーンを設置します。
頻繁な胸腔穿刺が必要で内科治療や原因疾患の治療を実施したにもかかわらず状態が改善しない場合は外科療法が選択されることがあります。胸管結紮、乳び槽除去術などがおこなわれます。

・膿胸
全身的な抗菌薬投与、胸腔ドレナージ、支持療法がおこなわれます。抗菌薬の投与は重要ではありますが、抗菌薬の投与のみでは膿胸が改善されることはめったにないと言われています。
胸腔ドレーンで改善しない、再発を繰り返す、といった場合は、CT検査や試験開胸が推奨されることがあります。

・血胸
血胸の発生により血液量減少性ショックを起こしている場合は、酸素供給や静脈内輸液を開始します。胸腔内の出血が継続している場合は止血を試みます。凝固不全が原因であれば新鮮凍結血漿を投与、外傷などが原因で止血が困難な場合は止血剤の投与、などをおこないますが、内科療法によって止血が達成できない場合は、開胸手術による出血部位の特定および止血をおこないます。
血胸の治療においてもっとも重要なのは、血液量減少性ショックの治療を含む循環状態の蘇生、安定化になります。そのため、血胸では積極的な胸腔穿刺を必要としないことが多いとされています。

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