犬の不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)とは
特徴的な右室起源の心室性不整脈が認められます。
不整脈原性右室心筋症は、1977年に初めて報告された疾患であるとされています。右室拡大、右室壁運動異常を起こすとともに、特徴的な右室起源の心室性不整脈が認められます。
犬の不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)の症状とは
失神発作やうっ血性心不全が見られます。
多くの場合は無症候性のオカルトと呼ばれる時期を経た後にうっ血性心不全が見られたり、突然死を起こすことが知られています。
不整脈原性右室心筋症は、3つのカテゴリーに分類されることがあります。カテゴリー1は無徴候性、カテゴリー2は失神発作、カテゴリー3はうっ血性心不全、と分類されます。ただし、必ずしもカテゴリー1からカテゴリー3へと進行していくわけではなく、臨床症状を呈することなく突然死する場合もあるため注意が必要です。
身体検査所見では多くの場合で正常で、胸部X線検査や心エコー図検査では正常であることが多いとされています。早期診断には心電図検査、とくにホルダー心電図検査が有効とされています。
症例によっては不整脈による脈拍の不整や欠損が検知されることがあります。心不全が認められる場合は、収縮期雑音やギャロップ音が聴取されることがあります。心筋不全が認められる場合は、心拡大、肺水腫、胸水貯留が見られることがあります。
犬の不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)の原因とは
心筋の変性により発症します。
右室心筋に局所的な脂肪変性、線維化が生じ、右室拡大、右室壁運動異常を起こすとともに、特徴的な右室起源の心室性不整脈が認められるようになります。
犬の不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ボクサー
ボクサーでの発生が多いため、ボクサー心筋症と呼ばれることもあります。
犬の不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)の予防方法について
早期発見、早期治療をおこないます。
遺伝性の疾患であることが示唆されているため、血縁のある犬に発症が見られた場合は繁殖のラインから外すことが推奨されています。
また、ホルダー心電図検査などで早期発見、早期治療をおこなうことが重要です。
犬の不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)の治療方法について
主に不整脈の治療をおこないます。
不整脈の治療は、ホルター心電図の結果や臨床徴候によってその実施を決定します。心室期外収縮の出現数を評価することによって不整脈原性右室心筋症の有無を推測できます。
心室性不整脈によって失神発作や運動不耐性が認められる場合には治療をこなうことが一般的です。抗不整脈薬を単独や組み合わせて投与する方法があります。治療効果を適切に評価するためには投薬開始前にホルター心電図検査をおこない、治療開始1か月後くらいには再度ホルター心電図検査をおこない、治療効果を判定することが望ましいとされています。不整脈の発生はばらつきが大きいため、心室期外収縮の発生頻度が80%以上改善した場合に治療効果ありと判断できます。
薬剤に対して反応の悪い場合の心室頻拍に対して除細動器の治療報告がおこなわれているため、費用などの条件が許すなら使用を検討しても良いかと思います。
また、心筋機能不全が認められる場合は、抗不整脈薬の投与以外に通常の拡張型心筋症の治療も併用することが推奨されています。
予後
不整脈がある程度コントロール出来れば、根治は得られなくても突然死のリスクはある程度減らすことができます。しかしながら、心筋変性自体は進行性であるといわれており、将来的な不整脈の再発のリスクやうっ血の進行のリスクは常に潜んでいます。定期的なモニタリングをおこない、病態変化を早期に捉えて適切な対処が重要です。