犬の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状とは
何らかの病気が隠れている可能性があります。
運動するとすぐに疲れる、座り込むような状態を運動不耐性と呼びます。運動不耐性は様々な原因で見られます。
愛犬が肥満であったり高齢であれば散歩に行ったり遊んでいる時にすぐに疲れてしまうことがあります。このような場合は病気ではないため、体重管理や運動制限などをおこない対応します。
何らかの病気によって状態が悪くなってしまいますと、すぐに疲れるようになりますが、原因は多岐に渡ります。
代表的なものに循環器の疾患、貧血になる疾患、内分泌の疾患などがあります。
犬の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の考えられる病気(原因)とは
僧帽弁閉鎖不全症
犬で最も多い心疾患であり、左心室と左心房の間にある僧帽弁がきちんと閉まらなくなる疾患です。僧帽弁閉鎖不全症は、動物病院での健康診断などで聴診された時に心雑音があり診断される場合、飼い主さんが愛犬が最近疲れやすくなったり咳が見られるため受診した際に診断される場合、などがあります。
僧帽弁閉鎖不全症は、初期の臨床症状が見られず心臓の拡大が見られない段階では治療対象にならない場合があります。進行しますと、全身に血流を巡らせる働きが十分に機能しなくなり、心臓が拡大し、疲れやすい、咳、などの症状が見られるようになり、治療が必要になります。
免疫介在性溶血性貧血
免疫介在性溶血性貧血とは、自己免疫疾患の1つで、免疫機能に異常が起こり自分自身の赤血球を破壊してしまい貧血を引き起こす疾患です。元気がない、疲れやすくなる、食欲がない、粘膜が白くなる、などの症状をが見られます。
急性の免疫介在性溶血性貧血は、死亡率が高いとされています。急性期を乗り越えた場合でも治療には時間がかかり、再発が見られることが多いとされています。免疫介在性溶血性貧血の死亡原因は、肺塞栓症や播種性血管内凝固であると言われています。
貧血を引き起こす疾患は他に玉ねぎ中毒やバベシア症と呼ばれる感染症などがあります。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏による疾患です。甲状腺組織の破壊による原発性甲状腺機能低下症が多く、自己抗体が検出されるリンパ球性甲状腺炎、原因不明の特発性甲状腺萎縮も知られています。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化する作用をもつため、欠乏することで代謝の低下が生じ様々な臨床症状が見られるようになります。
疲れやすくなるなどの活動性の低下、肥満、徐脈などが見られ、発生頻度は高くありませんがふらつきや顔面神経麻痺などの神経症状が見られることもあります。また、左右対称性の脱毛、ラットテイルよ呼ばれる尾の脱毛、色素沈着、角化異常などの皮膚症状も多く見られます。
犬の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- ゴールデンレトリバー
- シーズー
- チワワ
- トイプードル
- ドーベルマン
- マルチーズ
- ラブラドールレトリバー
僧帽弁閉鎖不全症は、キャバリアキングチャールズスパニエル、シーズー、マルチーズ、チワワ、トイプードルなどの犬種が好発犬種として挙げられます。
免疫介在性溶血性貧血は、トイプードル、マルチーズ、コッカースパニエルなどの犬種が好発犬種として挙げられます。
甲状腺機能低下症は、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンなどの犬種が好発犬種として挙げられます。
犬の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の予防方法について
肥満は予防出来ますが、疾患は早期発見・早期治療になります。
肥満が原因となる運動不耐性の場合は、食事管理をおこない肥満にさせないことが予防につながると言えます。
疾患に関しては、遺伝的な素因があったり、原因不明であることが多いため、早期発見・早期治療が重要となります。
犬の「運動するとすぐに疲れる 座り込む」症状の治療方法について
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症の初期は治療対象とならないことがありますが、心臓の拡大や臨床症状が見られる頃から強心剤を投与することで心不全発症のリスクを軽減できるとされています。
臨床症状が強く見られる場合、肺水腫を起こしたことがある場合は、強心剤に加え利尿剤や血管拡張剤を投与します。治療をおこなっていても肺水腫は再発することが多いため、呼吸が速い、舌の色が紫、などの症状は危険な徴候であるため注意が必要です。
また、臨床症状が出始めた時期から外科療法である僧帽弁形成術を実施することもあります。
免疫介在性溶血性貧血
免疫介在性溶血性貧血は、免疫抑制療法と抗血栓療法を同時におこなうことが重要であるとされています。
治療のスタートは副腎皮質ホルモン剤を投与することが推奨されています。治療の反応が悪い場合は免疫抑制剤を追加します。免疫抑制剤を加えても治療の反応が悪い場合は、もう1剤免疫抑制剤を加えるか脾臓の摘出を考慮することがあります。
免疫介在性溶血性貧血の治療において抗血栓療法をおこなった症例は、おこなわなかった症例よりも生存期間が長くなるという報告があります。抗凝固薬や抗血小板薬を投与します。
脾摘療法は、抗体産生抑制と赤血球貪食と破壊の場所を除く目的でおこなわれます。全身麻酔のリスクはありますが、寛解が得られる可能性が高くなります。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの補充とおこないます。人間用の薬剤、動物用の薬剤があり、どちらでも良好に管理することができます。
臨床症状によって改善までの期間が異なります。疲れやすくなるなどの活動性の低下は1週間以内に改善されることが多いとされています。皮膚症状や神経症状の改善には数か月かかることもあります。
低下した甲状腺の機能が回復することはないため、生涯にわたる甲状腺ホルモンの補充が必要になります。