犬の「くしゃみをする」症状とは
繰り返しくしゃみをする場合は何らかの原因がある可能性があります。
犬は人間と同様に様々な原因によってくしゃみをします。
埃などの異物が鼻の粘膜を刺激っしてくしゃみが見られることがありますが、一過性のものであれば特に問題はありません。
繰り返しくしゃみをする、くしゃみに鼻汁や血液が混じる、などの場合は、何らかの鼻の炎症が起きている可能性が高いので注意が必要です。
犬の「くしゃみをする」症状の考えられる病気(原因)とは
鼻炎
鼻炎は、ウイルス、細菌、真菌による上部気道への感染症、嘔吐、逆流などによる二次的な感染症が引き起こされた結果、鼻粘膜の炎症が慢性化し、鼻腔内に分泌物や膿が蓄積する疾患です。感染症の他には上顎の歯根膿瘍、鼻腔内腫瘍、外傷により鼻炎が蔓延化します。
鼻炎の主な症状は、くしゃみと鼻汁です。猫のように顔面が腫脹あるいは変形して疼痛を示すことは、犬ではまれです。
鼻炎の中でもアレルゲン物質、刺激物、免疫介在性などが原因となる慢性非感染性鼻炎をリンパ球性形質細胞性鼻炎と呼びます。
リンパ球性形質細胞性鼻炎の主な症状は、くしゃみと鼻汁です。鼻粘膜は炎症によりうっ血や浮腫を生じ肥厚します。鼻腔内は狭くなり、鼻汁を排出できなくなります。鼻汁が貯留した鼻腔内に二次感染が生じ、鼻汁の粘性が高くなり黄色く変化します。鼻粘膜にはリンパ球や形質細胞が著しく集簇しているのが特徴です。
植物などの異物を鼻腔内に吸引することで鼻炎を引き起こすことがあります。最初はくしゃみによって鼻腔から異物を排出しようと生体は反応しますが、排出できないと異物周囲に炎症が波及し、鼻汁が貯留して徐々に粘性が高くなります。長期にわたり異物が鼻腔内に存在すると、周囲に肉芽組織が形成される可能性があります。
鼻腔内異物の主な症状は、くしゃみ、鼻汁、頭を振る、などです。著しい鼻出血はあまり認められません。
歯根膿瘍
歯の根っこを歯根と呼びますが、歯根膿瘍は、歯根周辺に細菌感染が起こり膿が溜まってしまう疾患です。
歯根膿瘍の症状は、くしゃみを頻繁にする、鼻汁や鼻血が見られる、フードを食べにくそうにする、よだれが増える、口臭が強くなる、眼の下が腫れる、歯がグラグラする、などです。
歯根膿瘍が進行してきますと、膿が充満し腫れてしまい、痛みも出てきます。ここまで進行した状態になってしまいますと、外科的な処置が必要になってきます。
犬の「くしゃみをする」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ミニチュアダックスフント
リンパ球性形質細胞性鼻炎は、ミニチュアダックスフンドでよく見られます。
犬の「くしゃみをする」症状の予防方法について
デンタルケアで予防できるものがあります。
日頃からデンタルケアをおこなうことも歯根膿瘍の予防につながると言って良いでしょう。デンタルケアをおこない、口腔内の環境を整えることで細菌感染のリスクを軽減できる可能性があります。
また、歯根膿瘍の原因の多くは破折であると言えますので、破折を起こさない生活を送りましょう。硬過ぎるおもちゃを与えない、ケージを咬まないように教える、などは歯根膿瘍の予防につながります。
犬の「くしゃみをする」症状の治療方法について
鼻炎
鼻炎の治療は、その原因に対するものをおこないます。細菌感染に対しては、抗菌剤および粘液溶解剤、真菌感染に対しては、抗真菌薬を投与します。
リンパ球性形質細胞性鼻炎の治療は、副腎皮質ホルモン剤が中心となり、二次感染に対しては抗菌剤を用います。鼻汁を排泄しやすくするために去痰剤を用いることもあります。
鼻腔内異物は根本的な治療は異物の摘出です。全身麻酔下で内視鏡下で肉眼的に確認しながら鉗子を用いて摘出を試みます。この方法で異物が摘出出来ない場合は、部位を予想して外科的摘出が必要になります。
歯根膿瘍
歯を温存するためには根管治療、外科的根管切除などの方法がありますが、抜歯が選択されるケースが多いと言えます。歯根周辺の化膿巣が大きい場合は抜歯が適応になります。抜歯後、必要に応じて抗生物質や消炎剤を投与します。
高齢で麻酔がかけられないなど外科的療法が難しい場合、抗生物質や消炎剤などの投与による内科的療法をおこなうこともあります。