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猫の腎臓病と膀胱炎の治療食について。

獣医師
山口あすか
[記事公開日]  [最終更新日]
多くの猫さんが罹ってしまう腎臓病と膀胱炎。
その簡単な説明と、治療において最も大切なご飯について解説します。
なぜ高価なのか。どう食べるのが良いのか。食べない時にはどうしたら良いのか。
飼い主様の悩みが、少しでも解決しますように。
[ 目次 ]
猫の腎臓病と膀胱炎の治療食について。
猫を飼っていると、オシッコによるトラブルに遭遇することはとても多いですね。
若くても腎臓病になってしまう猫、膀胱炎を何度も繰り返す猫など、泌尿器に問題が出るケースはとても多く、そのため治療食も多種多様に増えています。
腎臓病と膀胱炎治療の、大きな柱である治療食の正しい知識を持っておきましょう。

猫の腎臓病とは。

主に慢性腎不全を指しており、三カ月以上にわたって腎臓の機能が低下している状態を言います。
猫は高齢期に入ると、かなり高い割合で慢性腎不全が進行しています。
また純血品種の中では、生まれつき腎臓の機能が低いケースもみられます。

症状は、お水を飲む量が増えている、オシッコが薄い、吐き気や食欲不振が出るといった形で始まります。
基本的に、失われた腎機能を戻す治療は存在しません。
残っている腎臓の細胞に、なるべく負担をかけずに、腎不全の進行を遅らせる、というのが治療の主軸となります。

腎臓病食とは。

人間でも、腎不全は食生活に大きく左右されるため、食餌制限が指示されることが多いようです。
猫でもそれは同じ。
慢性腎不全が見つかったら、最初に指示されるのは食餌の変更です。
腎不全の治療食、療法食と呼ばれ、獣医師によってお薬のように処方されます。

勘違いをさせてしまう事が多いのですが、この治療食は、腎臓にとって良いものが沢山含まれている、というわけではありません。
腎臓に負担のかからないように、ミネラル、たんぱく質、繊維、ビタミンなどが一番良いバランスに仕上げられているのです。
ただ何かを混ぜこんでいるわけでは無く、厳密にバランスがとられているため、とても価格が高くなっています。

なので、治療食と市販食を半々で混ぜる、などすると実はバランスが崩れてしまうので、効果は半減、あるいはそれ以下に減っているでしょう。

猫の腎臓病食で大切なことは。

本来は、治療食のみの主食にしてもらうのが理想です。
それでも、腎臓病食はタンパク質が厳密に制限されているので、猫にとって魅力的なご飯には感じない場合がほとんどのようです。
治療食は食べてくれなくて、、、と悩まれている飼い主さまの、何と多いことでしょう。

食べないご飯を無理にあげ続けていると、体重の減少が起きてしまい、余命も短くなってしまうことがあります。
理想は理想でしかありません。
無理ならば、まずは体重を維持できる、食欲の出るご飯を混ぜても良いでしょう。
食欲が無いのであれば、好きなものを食べることも大切です。
実は体重を維持することは、余命を左右するとても大切なものなのです。

猫の腎臓病と膀胱炎の治療食について。

猫の膀胱炎とは。

人間の膀胱炎の大半が、ばい菌(細菌感染)によるものなのですが、猫の場合は全く違います。人のように抗菌薬を3日ほど飲めば簡単に治る!というものではありません。

猫の膀胱炎の原因は、尿路結石(尿中に結晶や石が出来る)、ストレス(原因不明)が大半を占めています。
何度もおトイレに行く、おトイレにいる時間が長い、トイレの失敗が始まった、オシッコが赤い、という症状で始まります。

また、オス猫の場合、尿道(膀胱から陰茎に続く、外にオシッコを出す管)に詰まりが起きてしまい、オシッコが体外に出せない→腎臓に尿が逆流する→急性腎不全になって死にいたる、という怖い病気でもあります。
尿路結石は猫の体質による、という何ともしがたい原因が存在します。
運動不足や、飲水量の減少なども原因にはなるのですが、どれをやっても膀胱炎になってしまう猫さんもいるのです。

膀胱炎の治療食とは。

膀胱炎の治療と予防に大きく効果があるのが治療食です。
猫の下部尿路疾患(かぶにょうろしっかん)の治療食、と表現されることが多いようです。

こちらも腎臓病食と同じで、何かとても良いものが入っている、というわけでは無く、特にミネラル、そしてたんぱく質の量が絶妙に計算され、またモノによっては飲水量が多くなるように設計されています。
このため、一般食に比べてとても高価になっているのです。

また、猫の膀胱炎の原因に合わせて選択する必要があります。
尿路結石を溶かす、あるいは、できにくくする療法食、ストレスを感じやすい猫さんに、落ち着かせる成分を配合した療法食などがあります。
しっかりと検査し、診断を受けてから食べ始めるようにしましょう。

猫の膀胱炎で大切なことは。

こちらも腎臓病食と同じで、ほかのご飯と混ぜてしまっては効果の減弱が甚だしく、お勧めできません。
また、たんぱく質を制限されているので、やはり猫にとって魅力的ではないことも多いようです。それでも、腎臓病とは異なり、食欲の減退が起きることは少ない傾向にあります。

本人が喜んで食べてくれる療法食を探すために、色々なものを試してみると良いでしょう。
逆に食餌を変更できた!と思ったら、逆にどんどん太ってきてしまった!というケースもあります。たんぱく質の代わりに、脂質と炭水化物の比率が高いためかもしれません。

膀胱炎の猫さんは、肥満傾向にあることも多く、それが膀胱炎の素因の一つとも言われています。膀胱炎の療法食の中には、減量効果の高いものも販売されていますので、体型から選択することも重要です。

基本的には、予防も含めてずっと尿路系の治療食(膀胱炎の治療食)を食べていくことになります。
高齢期になって、腎臓に負担が出てきたり、血圧が高いなどの症状がある場合には、膀胱炎の治療食が体の負担になることもあるので、定期的な血液検査、尿検査、血圧検査が必要でしょう。

子猫の時からできること。

治療食の大きな壁、『食べない』『好きじゃない』『嫌い』について、子猫のときからやっておけることが一つだけあります。
それは、色々なタイプのご飯を経験させてあげることです。

ドライフードだけでなく、パウチ、ムース、お肉タイプなど、ウェットフードも食べてみることは大切です。幼少期に食べたものは、成猫になってからも受け入れやすい傾向にあります。
『うちのコはドライフードしか食べないんです。』となると、治療食の選択肢がそれだけで半減してしまいます。

また、同じドライフードでもチキン、フィッシュ、など味を変えてみることも大切です。
もちろん、体に合わない、ということもあるので、まずはごくごく少量から試してみましょう。

間違ってはいけないこと。

何度も記載したとおり、腎臓病や膀胱炎に良いものが入っているというわけでは無いのが療法食です。
腎臓病ではない猫さんが腎臓病治療食を食べると、逆に体には負担で、子猫など成長期に関して言えば禁忌と言えます。

腎不全が怖いから、膀胱炎が怖いから、という予防的な目的で、診断無しに療法食を与えるのは止めましょう。猫の健康を損なう可能性がありますので注意が必要です。

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