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猫にとってグレインフリーのフードは本当におすすめできるのか?

ペットフード/ペットマナー検定
北村 満保
[記事公開日]  [最終更新日]
肉食の猫は穀物を消化できないため、肉や魚がメインのグレインフリーのキャットフードのほうが良いといわれていますが、それは本当なのでしょうか。栄養学の観点から検証してみました。
[ 目次 ]
猫にとってグレインフリーのフードは本当におすすめできるのか?
猫は肉食動物なので穀物を消化できない。穀物アレルギーの原因になる。だから、グレインフリーのキャットフードを与えるべきだ、という意見を見かけます。しかし、グレインフリーがすべての猫にとって本当に最適な食事なのでしょうか。

今回はグレインフリーとはなにか、猫と穀物の関係、グレインフリーのフードと穀物入りのフードのメリット、デメリットを紹介しながら検証していきます。

グレインフリーのキャットフードとは?

グレインフリーとはグレイン(穀物)を使用していないという意味です。一般的には「小麦、とうもろこし、米」を使用していないフードをグレインフリーとしていますが、ペットフードではとくに決まりはありません。

グレインフリーのキャットフードは肉や魚を主原料にしており、動物性タンパク質が豊富なため、肉食である猫にとって理想的なフードであるといわれています。しかし、猫にとって健康的な食事であるという科学的な根拠はありません(悪いという根拠もないのですけど)。

猫にとってグレインフリーのフードは本当におすすめできるのか?

猫は条件付きだけど穀物を消化できる

猫は穀物を消化できない。だから、グレインフリーのキャットフードが良い、という人も多いのですが、これは間違いです。

穀物も水を加えて加熱することで、無理なく消化吸収することができるようになります。キャットフードに使われている穀物は、すべて加熱されているため、負担になることはありません。

ただし、それもフードに含まれている炭水化物が35%(乾物)程度までとされています。40%を超えると高血糖、尿糖、下痢、鼓腸といった症状があらわれることがあるので注意が必要です。また、過剰な炭水化物は肥満の原因にもなります。

ところが、コストを抑える目的で大量に穀物を使用したフードが存在しています。なかには、穀物を主原料としたものもあるほどです。そういったフードは、炭水化物が過剰になるため、良いフードとはいえません。安価なフードほどそのような傾向が見られます。

なお、炭水化物は表示義務がありません。記載されていない場合は、以下の式で計算してみてください。

炭水化物=100−水分-タンパク質-脂質-繊維-粗灰分

猫にとってグレインフリーのフードは本当におすすめできるのか?

実はそんなに多くない穀物アレルギー

穀物アレルギーが心配だからグレインフリーを選んでいるという人もいますが、実は穀物が猫のアレルギーの原因になることは、それほど多くはありません。

猫の食物アレルギーの原因は「タンパク質」で、たとえば「牛肉や魚、鶏肉、乳製品、穀物」などが代表的なアレルゲンとしてあげられています。

猫の食物アレルギーは牛肉が18%、魚が17%と突出して多いことがわかります(下の図を参照)。対して穀物のアレルギーはとうもろこしと小麦がそれぞれ4%ずつ。つまり、牛肉と魚は穀物の4倍以上ものアレルギーリスクがあるのです。

穀物アレルギーを心配してグレインフリーを選ぶ意味はありません。

猫にとってグレインフリーのフードは本当におすすめできるのか?

グレインフリーのメリット

■動物性タンパク質が豊富
肉食動物の猫はタンパク質をエネルギーとして利用します。1日に必要なタンパク質の量は体重1kgあたり3〜5gといわれており、タンパク質が豊富に含まれているフードを必要とします。

その点、穀物を使用していないグレインフリーのキャットフードは、高タンパクなものが多いので十分に満たすことができます。

■穀物アレルギーの心配がない
穀物不使用のグレインフリーのフードは、穀物アレルギー対策としても優れています。ただし、穀物アレルギーを持っていない猫にはとくに必要はありません。

グレインフリーのデメリット

■コストが高い
グレインフリーのキャットフードの主原料となる肉や魚は、穀物と比べるとコストがかかります。そのため、フード代も高価になりがちなのです。

■下痢になることがある
グレインフリーのフードには、便を固める性質のある不溶性食物繊維が不足しがちです。そのため、体質によっては下痢になる場合があります。

■腎臓病などのタンパク質制限のある猫やシニア世代の猫は注意
グレインフリーのフードは、肉や魚がメインのため高タンパクになりがちです。また、リンの値も高くなる傾向があります。腎臓病などでタンパク質やリンの摂取に制限がある場合は、かならず獣医師に相談しましょう。

また、シニア世代の猫は気がつかないうちに腎臓病になっていることがあります。その場合、タンパク質が多いフードを与えることで病気を進行させてしまう可能性があります。シニア猫に与える際も獣医師に相談したほうが良いでしょう。

穀物入りフードのメリット

■豊富な食物繊維が腸内環境を改善し毛玉の排出に効果がある
穀物に含まれる食物繊維は、腸内環境を整え毛玉の排出を促します。長毛種で毛玉の排出が苦手な猫は、穀物入りのフードのほうがあっているかもしれません。

■穀物も良い栄養源になる
炭水化物を分解してできる糖はエネルギーとして使われます。とくに脳はたくさんの糖を消費します。また、授乳期には良質な母乳をつくるために十分な糖が必要です。穀物も適量であれば、猫にとって良い栄養源になるのです。

■原料が低コストである
肉や魚と比べると穀物は安価な原材料です。そのため、グレインフリーと比べると価格が手ごろです。

穀物入りフードのデメリット

■穀物の消化が苦手
猫は穀物を消化吸収するのが苦手です。加熱すれば問題はないとされていますが、多すぎる穀物は負担になってしまいます。

■便秘の原因になることも
猫は草食動物や雑食動物と比べて穀物の消化に時間がかかるため、穀物が多すぎるフードを与えるとコロコロとした硬いうんちになったり、便秘や消化不良の原因になることがあります。

猫にとってグレインフリーのフードは本当におすすめできるのか?

まとめ:グレインフリーも穀物入りも悪いフードではない

グレインフリーも穀物入りのフードもそれぞれに良いところがあって優劣をつけることはできません。

結論としては、健康な猫なら「グレインフリーにこだわる必要はない」ということになります。

その理由は、

・加熱している穀物は35%(乾物)程度までなら無理なく消化吸収ができる
・猫の食物アレルギーでとくに多いのは牛肉と魚
・グレインフリーが必要なのは穀物アレルギーの猫
・穀物は多すぎると健康を害するけど適量なら良い効果もある
・腎臓病などでタンパク質制限が必要な猫にグレインフリーは適さない
・グレインフリーは、猫にとって健康的な食事であるという科学的根拠はない

大切なのは、グレインフリーかどうかではありません。それぞれのフードの特徴を知り愛猫に合ったフードを与えることです。

もし、どちらにしたら良いか迷ったら獣医師に相談するのもいいですし、愛猫の好みで選ぶのもいいかもしれませんね。

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