犬の慢性腎不全、症状と治療法、病気との向き合い方とは?
動物看護士
安田明日香
[記事公開日] [最終更新日]
腎臓が壊れ機能しなくなり、完治することのない病気です。
症状の見分け方、治療方法、そして、完治することのない病気との向き合い方を記事にまとめました。
[ 目次 ]
慢性腎不全とは?
腎臓には、体の中の老廃物をろ過して尿とともに排出する役割があります。
その腎臓が機能しなくなると、老廃物をうまく排出できなくなってしまい、最終的には尿毒症を引き起こすこともあり、命にかかわります。
犬の腎不全には、ある日突然発症し、腎機能が急激に低下してしまう「急性腎不全」と、数ヵ月~数年かけて腎機能が低下し、徐々に悪化していく「慢性腎不全」があります。
慢性腎不全は老化とともに発症することが多く、高齢犬に多い病気です。
非常に発見しにくい病気で、腎臓の75%以上が機能しなくなってから、症状が現れ始めるといわれ、異変に気づいた時にはすでに末期だった。というケースも珍しくありません。そして、失われた腎機能は回復することはなく、進行していく病気です。
いち早く愛犬の異変に気付き、治療を開始することが大切です。
症状は?
早期に現れる症状として、
・水をたくさん飲む
・尿が薄くなる
といったことが挙げられます。
そして病気が進行していくと、
・口臭が気になる
・食欲がなくなる
・痩せてくる
・頻繁に嘔吐するようになる
・歯茎の色が薄くなる
・元気がなくなる
といった症状が現れます。
早期発見のためには、日頃から飲水量のチェックやおしっこの色をチェックして、いつもと違うと感じたら動物病院へ受診されることをお勧めします。
また、普段より定期的に血液検査をし、健康状態を把握しておくことも大切です。
治療方法
いくつかの治療方法がありますが、主に効果的とされているのが食事療法です。
慢性腎不全は、腎臓に負担をかける、リン、ナトリウム、たんぱく質などを制限する必要があります。いくつものフードメーカーから腎臓をサポートするフードが出ていて、同じメーカーでも味や成分などが違う数多くのフードがあります。愛犬の味の好みや獣医さんと相談の上、愛犬に合うフードを与えましょう。
また、症状が進行してくると食欲がなくなってくるため、フードを食べなくなってくることがあります。そんな時は、手作り食を与えてみるのもいいかもしれません。
しかし、積極的に摂取したい食品、できれば避けたい食品など、様々な制限があります。それらを考慮したうえで手作り食を考えるのは大変手間がかかるのも事実です。最近は獣医さんが出版している、病気の犬への手作り食のレシピ本があります。そちらを参考にしてみるのもいいのではないでしょうか。
食事療法の他に、吸着炭の投与、皮下輸液、点滴治療、様々な経口薬の投与など薬物治療も並行して行っていきます。
また最近は、症状の改善に有効な手段として「水素水」も注目されてきています。
たくさんの治療方法がありますが、いずれも獣医さんとよく相談したうえで、愛犬のことを考え納得して進めていきたいものです。
病気との向き合い方
先ほども述べたように、慢性腎不全は治る病気ではありません。必ず進行していきます。治療では進行を遅らせる、少しでも体を楽にしてあげる、をいう方向の治療(対症療法)になります。
この治療は、とらえ方によっては「延命治療」とも言えます。長引けば治療費もかかる話ですし「苦しい時間が長引くようだったら」と、治療を希望されない方もいると思います。私はそうした決断が「見捨てる」という事ではないと飼い主様にお話ししています。愛犬のためを思って、一生懸命悩んで決断したのです。それは愛犬への愛情、どの決断にも間違いはないと思っています。なので、自分の決断を責めないでください。
治療をするとなれば、だんだんと弱っていく愛犬を見続けなければならないという辛さがあるかと思います。このまま症状が進行していくのを見守るしかできないのか、と不甲斐なさを感じることもあるかもしれません。そう感じるのは、仕方のないことだと思います。ですが、あなたの愛犬は毎日「治してあげられなくてごめんね」と話しかけられてどう思うのでしょうか。
私事ですが、我が家も慢性腎不全のポメラニアンが約10ヵ月間、闘病生活を続けていました。腎臓をサポートするフードはだんだんと食べられなくなり、手作り食に移行、皮下輸液に週2~3回通う日が続きました。「このままどんどん弱っていくなんて、かわいそうだ」と思いました。どうにかして治してあげられないのか、と。しかし、看護師をしている身として、それは不可能だということは分かっていました。私は愛犬に「治してあげられなくてごめんね、気づいてあげられなくてごめんね」と繰り返しました。しかしこのままでは、私の気持ちも愛犬の気持ちも沈む一方。じゃあどうしたらいいのかと考えたところ、「今日を一生懸命に生きている愛犬をサポートする」という結論に至りました。今日はこんなに食べられたね。今日は少し顔色がいいね。今日は自分でおトイレに行けたね。と、今日できた事を喜びました。そのおかげか、闘病生活も明るく過ごしていたと思います。
治らない、すなわち余命を宣告された以上、それを受け入れなければいけません。
残された時間をどのように過ごしていくのか。悲しい気持ちのまま過ごしていくのか、喜びを見つけ過ごしていくのか、その違いは大きいのではないかと思います。きっと愛犬は今も昔も、あなたに褒められることが大好きです。たくさん褒めてあげてください。そして、愛犬とたくさんの思い出を作ってください。最後の時には、寄り添って声をかけてあげてください。それが愛犬にとっては一番の幸せではないでしょうか。
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