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犬の糖尿病について

獣医師
高木俊輔
[記事公開日]  [最終更新日]
糖尿病は尿から糖が出てくるためこの名が付けられました。インスリンという膵臓から分泌されるホルモンは、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込むという働きをしています。そして動物はそのブドウ糖をエネルギーとして利用しています。糖尿病になるとブドウ糖をきちんと利用できなくなってしまうため、血液中にブドウ糖が多くなったり、尿にブドウ糖が出てきてしまうのです。ただオシッコに糖が出てくる病気だと軽く考えていると、命に関わる症状を見落としてしまうこともあります。
[ 目次 ]
犬の糖尿病について
ヒトで近年どんどん患者数が増えている糖尿病ですが、犬も猫も糖尿病になります。そして、犬と猫では病態が少し異なります。今回は犬の糖尿病について取り上げます。

糖尿病とは

膵臓からはインスリンというホルモンが分泌されています。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込むという働きを担っています。食べ物には、タンパク質・炭水化物・脂質という三大栄養素が含まれており、ブドウ糖はこの中の炭水化物に含まれます。食べ物は食事をして体内に入ると消化されます。そして分解された炭水化物からはブドウ糖ができます。ブドウ糖をエネルギーとして利用するためには、細胞の中に入れなくてはなりません。そしてブドウ糖を細胞の中に入れるための鍵になるのがインスリンなのです。インスリンがきちんと分泌されており、さらに鍵として働けている状態が正常なのですが、糖尿病になると十分な量が分泌されなくなってしまったり、分泌されても十分な働きができなくなってしまいます。その結果、血液中の糖分が増えすぎてしまい血糖値が高くなったり、尿中にも糖分が検出されるようになるのです。

犬と猫の違いは

犬と猫の違いは
ヒトの糖尿病にはいくつかのタイプがあるのですが、多くはⅠ型とⅡ型に分けられます。Ⅰ型はインスリン依存型とも呼ばれ、膵臓からのインスリン分泌が足りなくなっているタイプです。そのため、治療にはインスリンの投与が必要になります。なぜインスリンが足りなくなるのか?それは膵臓のランゲルハンス島β細胞という、インスリンを作る細胞の働きが低下してしまうことによります。原因として、遺伝や膵臓の炎症、他のホルモンの病気などがあります。
これに対してⅡ型は食べ過ぎや運動不足といったいわゆる生活習慣が関係するタイプで、インスリン非依存型とも呼ばれます。日本人の糖尿病はほとんどがこちらのタイプです。こちらのタイプではインスリンの分泌は正常に行われているけど、その働きがうまくいかないという状態になっています。これをインスリン抵抗性と呼び、これが改善されればインスリン投与が必要ないケースもあります。
犬の糖尿病はⅠ型に似たような病態であるとされています。

症状は

一番分かりやすい症状は多飲多尿です。糖と一緒に水分も多く排泄されるようになるため、おしっこの量が増えます。そしてそれを補うために水を飲む量も増えます。
インスリンが足りなくなるので、きちんと食べていても体が糖をエネルギーとして利用することができなくなってしまい、体重が減っていきます。エネルギーが足りないので食欲は増えます。そのため、食べても食べても痩せてしまう、という状態になります。
また、糖尿病の進行に伴って白内障になることが多いです。

診断は

まず特徴的な症状があるかを確認します。そして、血液検査と尿検査を行います。血液検査では血糖値が高いかどうか、尿検査では尿糖が出ているかを調べます。ただし、1回の検査だけではたまたまその日に高血糖だったり尿糖が出ていたかもしれないため、数日間に渡って高血糖・尿糖陽性であることを確認して確定診断となります。

治療は

犬の糖尿病はⅠ型に似ていて、インスリンの分泌量自体が足りていないことが多いため、治療にはインスリンの投与が必要になります。インスリン投与は注射で行います。毎日のことなので、動物病院ではなくご家庭で飼い主さんが注射します。きちんと注射できるのか、皆さん最初はすごく心配されますが、やっているうちに慣れてきます。注意点として、獣医さんから指示された時間と量は必ず守るようにしてください。もし犬が動いたり暴れてしまい正確に投与できなかった可能性がある場合、絶対にもう1回投与するのはやめてください。インスリンの投与量が少なすぎると糖尿病の症状は治りませんが、それよりも怖いのは投与量が多すぎることです。インスリンが効きすぎてしまうと低血糖といって血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。低血糖の症状は、ぐったりする、痙攣するなどがあります。対処が遅れると命に関わりますので、インスリン治療を行う場合は低血糖にはご注意ください。
糖尿病治療を成功に導くには、食事療法も非常に重要です。基本的には糖尿病治療用の療法食を与えるということになります。療法食としていくつかのフードが販売されていますが、コンセプトは食後の血糖値の上昇を緩やかにするということです。
治療開始後は血糖値のコントロールがきちんとできているか、インスリンの投与量に問題がないかを確認するため、定期的に動物病院で診察を受けます。

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