特発性脳炎について
特発性脳炎の種類
特発性脳炎は次のように分類されています。
・壊死性髄膜脳炎(NME)
・壊死性白質脳炎(NLE)
・肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)
・ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(SRMA)
・特発性好酸球性髄膜炎
これらは、炎症が起こる場所や、炎症の起こり方、薬への反応、出現する細胞の種類で分類したものです。どれも感染が起こっておらず、自己免疫に関連した病気だという点では同じ病気なので、ひとまとめにして「特発性脳炎」と呼ばれています。
パグ脳炎
上記のNMEのうち、パグにみられるものを「パグ脳炎」と呼びます。100〜1000頭に1頭くらいの割合で発生していると考えられていますが、この病気が出やすい家系ではもっと高い頻度で発生するという報告もあります。4ヶ月齢〜9歳の間に発生し、平均では2歳くらいです。性別はオスよりもメスの方が発生が多く、体格は小さい子での発生が多いようです。症状は突然出てきて、初期は発作やふらつき、目が見えなくなるなどです。すぐに治療しないと症状は急激に進行します。そして顔面のけいれんもみられることがあります。さらに進行すると、ぼーっとしたり、くるくる回ったり、昏睡状態などの深刻な症状が出てきます。そして最終的には発作の重症化や誤嚥によって亡くなることが多いとされています。診断にはMRI検査を行います。自己免疫に関連した病気のため、初期治療には免疫抑制量のステロイドを使用します。また、発作を起こしやすい病気のため、抗てんかん薬も一緒に使うことが推奨されます。この治療に反応する場合は数ヶ月〜3年くらい生きられるようですが、反応しない場合は数日以内に亡くなってしまうことが多いです。
パグ以外のNME、NLE
ヨークシャー・テリア、チワワ、マルチーズ、パピヨン、ポメラニアン、ペキニーズ、シーズー、フレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリバーがこの病気になるという報告があります。発症年齢は数ヶ月齢〜5歳で体格が小柄な子がかかりやすいようです。症状はパグ脳炎と同じく、まず発作やふらつき、目が見えなくなるなどの症状がみられ、その後進行していきます。診断法や治療に関してもパグ脳炎と同様です。ではパグ脳炎との違いは何かというと、治療に対する反応が良いという点です。数年以上にわたって状態が安定する子もいます。
肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)
肉芽腫を作るタイプの炎症を起こすためこの名前が付けられました。小型犬に起こりやすいとされていますが、特に特定の犬種で起こりやすいということはないようです。発症年齢は数ヶ月齢〜8歳、特に1〜4歳で多いとされています。症状は他の脳炎とほとんど同じですが、GMEでは首の痛みがみられることがあります。若い犬で首の痛みが出る病気は他にもたくさんあるため、そういった病気との見極めが非常に重要になります。また、特定の犬種に起こりやすいということもなく、MRIなどの画像診断でも分かりにくいことがあるため、特発性脳炎の中でも診断が難しいタイプです。そのため治療に対する反応をみながら診断していくこともあります。
ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎(SRMA)
ビーグル、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ボクサーといった特定の犬種での発生が報告されています。6ヶ月齢〜3歳での発生が多く、性別による違いはないようです。症状は40℃以上の発熱、首の痛み、神経過敏などがあります。原因はよく分かっていませんが、ステロイド治療に対する反応が良いためこの名前が付けられました。
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