ウォブラー症候群について
ウォブラー症候群は、以下のような名前で呼ばれることもあります。
・頚椎不安定性・形成異常症候群
・頚部脊椎症
・尾側頚部脊椎脊髄症
・尾側頚椎形成・関節異常
・頚椎不安定症
・頚椎すべり症
病態について
ウォブラー症候群にはいくつかの病態がありますが、共通していることは、首の神経が通る通路が狭くなることにより神経が圧迫されてしまい、それに伴って障害が出てくるということです。どの病態のウォブラー症候群になるかというのは犬種や年齢によって異なります。また、先天性のものはあまり予後が良くないなどの差もあります。
なりやすい犬種は?
大型犬と超大型犬でみられる病気です。また、この病気になる犬のうち60〜80%がドーベルマンとグレート・デーンです。日本で認められるその他の犬種としては、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、セント・バーナードなどが挙げられます。
症状は?
最初は後ろ足から症状が出てくることが多いです。足が開いてしまう、歩いているときに歩幅が大きくなる、爪を引きずる、足の甲が地面についたままになったりという症状がみられます。こういった症状は一般的に数ヶ月〜数年という長い期間にわたって少しずつ進行しますが、たまに急激に進行したり悪化してしまうケースもあります。こういった歩行障害がやがて前足にも出てくるようになり、立てなくなってしまい、やがて四肢が麻痺してしまいます。
この病気になった犬のうち、40%では首の痛みがみられます。痛みがあると、首を曲げて頭を落とすような姿勢をとりますが、これはこういった姿勢でいると神経の圧迫が軽減されるためです。
診断は?
触診や神経学的検査、画像検査、脳脊髄液検査を組み合わせて診断します。
触診では首の痛みを確認します。首を伸ばして痛みが出るかどうかを調べるのですが、神経を圧迫させてしまい症状を悪化させてしまうことがあるため注意が必要です。
神経学的検査とは、神経のどの部分に異常が出ているのかを様々な姿勢や反応の仕方で調べる検査です。
触診と神経学的検査には麻酔は必要ないため、初診でもここまでは実施可能です。
画像検査には、単純X線検査、脊髄造影検査、コンピュータ断層撮影(CT)検査、磁気共鳴画像(MRI)検査があります。原因が先天的な奇形だった場合や、単純X線で確認可能な変化が出ている場合には単純X線検査のみで診断ができることもありますが、脊髄の圧迫されている部位を正確に特定することは難しいため、一般的にはそれ以外の画像検査も組み合わせて診断します。脊髄造影検査では脊髄の動的病変の検出が可能な検査であり、ウォブラー症候群の診断では必要不可欠な検査です。CT検査は骨の構造を三次元的に評価するために行い、MRI検査は脊髄などの軟部組織の形を評価するために行います。
脳脊髄液検査は、ウォブラー症候群と同じような症状がみられる炎症性の病気があるかどうか調べるために行います。
治療は?
多くの場合は外科手術が必要になりますが、軽度の外傷で神経症状が出てきた場合や、骨格ができあがる前の若い犬で症状がみられた場合には、保存療法を選択することがあります。保存療法とは、厳重な運動制限、鎮痛剤、短期間のステロイドや非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の投与があります。保存療法で症状が改善した場合は、その後3〜4週かけて徐々に元の生活に戻していきます。もし2週間保存療法をしても症状の改善がみられない場合は、外科手術が推奨されます。
外科手術の目的は「回復に適した脊柱管内の環境を作る」ことです。そのためには脊髄への圧迫をなくして(減らして)、頚椎を安定化させることで脊髄の中が傷つくことを防止します。症状が進行して前足も後ろ足も麻痺しているくらいの段階だと手術をしても反応があまり良くないため、まだ立ち上がることができる段階で手術をするべきです。この病気は原因が多様なため、手術方法もたくさんあります。
<おすすめ動画>
<関連記事>
原因や予防を解説!中型犬が気を付けるべき「前十字靭帯断裂」とは?小型犬は「膝蓋骨脱臼」などが発症しやすいとされていますが、「前十字靭帯断裂」は中型犬が気を付けるべき関節疾患です。 今回は、前十字靭帯断裂とはどんな病気なのかを詳しくご説明していきますので、ぜひ予防法も含めながらチェックしてみてくださいね。
<関連記事>
犬のてんかんとは?症状や原因、診断や治療方法についててんかんとは、発作的に繰り返される全身のけいれんや意識障害を主な症状とする脳の病気です。 この記事では、犬のてんかんの症状や原因、診断・治療方法、向き合い方、かかりやすい犬種についてまとめました。
<関連記事>