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知っておきたい猫のワクチンの話

ペット飼育管理士
増田暢子
[記事公開日]  [最終更新日]
愛猫を事前に病気から守るためには、ワクチンによる定期的な予防接種が欠かせません。しかし、どの猫にも必ず全てのワクチンを接種する必要がある訳ではありませんし、予防接種に際してのさまざまな注意点もあります。今回は、猫のワクチンについてご説明します。
[ 目次 ]
知っておきたい猫のワクチンの話

体を守るしくみ

ワクチンによる予防接種は、動物が自分の体を守るために持っているしくみを、うまく利用した予防方法です。そのため、病気に罹らない、または罹っても軽い症状ですませるようにするためには、大切なことなのです。そして、皆が予防接種をすることで、その病気が広く蔓延することも防いでくれます。今回は、猫に関するワクチンについて説明をしていきます。

まずは体を守るしくみについて、その基本的な話を復習しておきましょう。体を守るしくみは、下記の3段階になっています。

<1段階目>
体の外側を覆っている皮膚や、体の内側を覆っている粘膜などが、物理的、化学的に、病気の原因となる細菌、ウィルスなどを含む、さまざまな異物の侵入を防いでいます。

<2段階目>
血液の中にある白血球のうち、好中球、マクロファージ、樹状細胞という貪食作用を持つ細胞が体内に侵入した異物を食べたり、NK細胞が直接異物を攻撃して排除します。これを、自然免疫といいます。

<3段階目>
脾臓やリンパ節で、2段階目の自然免疫で樹状細胞やマクロファージが食べた異物をT細胞に抗原として示すことにより、T細胞が活性化され、その抗原をB細胞に記憶させると同時に特異的に攻撃する抗体を作り出したり、マクロファージの貪食作用を強化したり、またT細胞が自ら異物を攻撃したりすることで、異物を排除します。これを、獲得免疫といいます。抗体ができることで、同じ異物が2回目以降に侵入した場合は、その異物に対する攻撃を速やかに開始することができるようになります。

ワクチンの目的

1度罹った病気に対して獲得免疫で得た抵抗力は、長く保たれます。それを利用した予防方法が、予防接種です。病原体を弱めたり無毒化したりして、抗原となるワクチンを作り、これを接種することで抗体を作らせて、その病気に対する抵抗力を持たせようとするものです。

つまり、ワクチンは薬ではなく、毒性を極めて弱くした病原体ということになります。ワクチンを接種することで、その病気に対する抵抗力を高め、万が一その病原体に感染しても、獲得した免疫により症状が出ないか、あるいは出てもごく軽い症状で治ることを目的としているのです。

猫のワクチンの種類

人にもインフルエンザ、結核、天然痘、ポリオなどのワクチンがありますが、それと同様に猫にもさまざまなワクチンが用意されており、予防に貢献しています。猫のワクチンで予防できる病気を下記に紹介します。

1. 猫汎白血球減少症(FPV)
2. 猫伝染性鼻気管炎(FHV)
3. 猫カリシウィルス感染症(FCV)
4. 猫白血病ウィルス感染症(FeLV)
5. クラミジア感染症
6. 猫エイズウィルス感染症(FIV)

上記のうち、1〜3は感染力が強く、感染した猫との直接的な接触がなくても感染し、かつ致死率も高い病気です。そのため、この3つのワクチンはコアワクチンと呼ばれ、完全室内飼育の猫であっても必要なワクチンとなります。

また、上記のワクチンは、それぞれ単独で接種するのではなく、混合ワクチンが用意されていますので、1度に複数のワクチンを接種することができます。3種混合(コアワクチンのみ)、4種混合(コアワクチン+FeLV)、5種混合ワクチン(コアワクチン+FeLV+クラミジア)が一般的です。また、FeLVとFIVは単独で接種することが可能です。

どのような飼育環境の猫でも、コアワクチンは必ず接種しましょう。他のワクチンについては、飼育環境に応じて必要なものだけを接種すれば十分です。

ワクチンに関する注意点

ワクチン接種にあたって注意すべきことは3点あります。それぞれを下記にまとめます。

1. ワクチンプログラムに即して適切なタイミングで接種すること
一度獲得した免疫は、永遠に抵抗力として残るわけではありません。時間の経過と共に抵抗力が弱まり、いずれなくなってしまいます。それぞれのワクチンについての接種タイミングについては、獣医師とよく相談し、きちんと適切なタイミングで受けさせましょう。一般的なコアワクチンのワクチンプログラムを紹介しておきます。
1回目:生後8〜9週齢
2回目:生後11〜13週齢
3回目:生後14〜16週齢
4回目:3回目から1年後
5回目以降:3年おき

2. 健康な状態の時に接種すること
前述の通り、ワクチンは毒性が極めて低いとはいえ病原体です。愛猫が健康な状態の時に接種するようにしましょう。また、接種後しばらくは、特にストレスを生じるような予定のない時期に接種するのが好ましいでしょう。

3. 接種後のワクチンアレルギーに注意すること
日本小動物獣医師会の犬89,000頭、猫10,620頭を対象とした調査の結果、犬では全体の0.49%、猫では1.25%でワクチンアレルギーがあったとの報告があります。アナフィラキシーショックの場合は、接種後1時間以内に発症します。接種後1時間はすぐに病院に戻れるような場所にいると良いでしょう。非即時型の場合も24時間以内に発症しますので、接種後1日は愛猫の様子をよく観察し、おかしいと思ったらすぐに病院に連絡しましょう。猫に多いとされているワクチンアレルギーの症状は、多い順に、元気食欲消失、発熱、嘔吐、注射をした部位の痛み、顔面浮腫、皮膚のかゆみです。

ワクチンを上手に利用して愛猫の健康管理を!

必要なワクチンを必要なタイミングで接種することで、愛猫を長く健康に生活させることができます。ワクチンに対する正しい知識を身につけ、上手に愛猫の健康管理を行いましょう。

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