フィラリアとは?症状や治療法、予防について
フィラリアってどんな虫?感染の仕組み
フィラリアは「犬糸状虫」とも呼ばれる寄生虫の一種です。犬糸状虫の名が示すとおり、白くて細長い糸のような形をしています。成虫は雌雄で大きさが異なり、雄は約17cm、雌は約28cmにもなります。成虫の平均寿命は5~6年です。
フィラリアの感染は蚊の吸血によって起こります。感染の仕組みは次のとおりです。
1.メスのフィラリア成虫が犬の体内で幼虫(ミクロフィラリア)を産む。
2.蚊が体内にミクロフィラリアをもつ犬の血を吸う。吸血とともに、ミクロフィラリアは蚊の体内に移動する。
3.蚊の体内に移動したミクロフィラリアは成長し、感染力をもつようになる。
4.感染力があるミクロフィラリアをもつ蚊が犬の血を吸う。吸血とともに、ミクロフィラリアは犬の体内に侵入する。
5.約2~3カ月間かけて、侵入したミクロフィラリアは筋肉や皮下組織内で成長する。
6.血管の静脈に侵入し、流れにのって心臓や肺動脈に移動する。
7.移動後、さらに成長することで成虫になる。
8.成虫になったフィラリアは新たなミクロフィラリアを産む。
つまりフィラリアは、蚊を介して感染犬から非感染犬へと移動することで増殖する寄生虫なのです。上記で示したとおり、蚊がフィラリアを媒介するためには、感染犬を吸血する必要があります。よって、蚊に吸血されたら必ずフィラリアに感染するというわけではありません。
しかし、蚊がミクロフィラリアをもっているかどうかを外見から判別することはできません。さらに、フィラリアを媒介する蚊はアカイエカやヒトスジシマカなど4属16種類存在し、その分布は多岐にわたります。そのため、フィラリアを予防することが大切です。予防については、この記事の最後で改めて解説します。
フィラリアの症状
フィラリアに感染したことで起こる症状を「フィラリア症」と呼びます。フィラリアは肺動脈や心臓に寄生するため、感染すると血液循環障害が起こり、次のような症状が現れます。
・咳
・食欲の低下
・呼吸数の増加
・息切れ
・疲れやすくなる
・浮腫(むくみ)
・失神
・喀血(呼吸器から出血し、口からその血液がでること)
・腹水(お腹に体液がたくさんたまってしまうこと)
…など。
多くの成虫が寄生すると、成虫が心臓や血管を塞いで、次のような急性症状が現れることもあります。
・血尿
・貧血
・呼吸困難
…など。
フィラリアは死んだあとも、その虫体が体内に残ります。その結果、血管などで目詰まりを起こすことがあります。この目詰まりによって他の臓器に障害が起こる場合もあります。
フィラリアの治療
フィラリアに感染したことがわかった場合は治療を行います。治療法は大きく分けて次の3つです。
・手術によってフィラリアの成虫を摘出する方法
体内に大量の成虫が存在し、心臓や大きな血管を塞いでいる場合に選択される治療法です。なお、幼虫は予防薬によって除去します。
・薬によりフィラリアを駆虫する方法
投薬などにより、フィラリアを駆虫する治療法です。体内に存在する成虫が比較的少ない場合に選択されます。成虫と幼虫の両方を駆虫する場合と、幼虫だけを駆虫する場合があります。
・対処療法
駆虫は行わず、フィラリアによって生じた症状を軽減する方法です。高齢や病気などで、手術や駆虫薬の使用が難しい場合に選択されます。
フィラリア症が進行すると、様々な臓器障害を引き起こす場合もあります。臓器障害はフィラリアを駆虫しても治らないことがあります。よって、感染させないために予防することが大切です。
フィラリアの予防法
蚊が発生する季節になったら、動物病院でフィラリア検査と予防の相談をしましょう。目安としては5月から12月です。
予防法は次の3つがあります。
・内服薬
おやつのように与えることができるチュアブル錠タイプと、錠剤タイプの2種類があります。チュアブル錠タイプには、フィラリアだけでなく消化管内寄生虫やノミ・ダニ予防できるものがあります。さらにチュアブル錠タイプは風味付けされているものが多いので、おやつが好きな犬には比較的簡単に投薬することができます。
・外用薬
スポット剤と呼ばれます。月に一度、首の後ろに滴下することで予防できます。こちらも消化管内寄生虫やノミ・ダニ予防できるものがあります。内服薬を吐き出してしまう可能性がある場合に使われることが多いです。
・注射
1回の注射で12か月間フィラリアを予防することができます。そのため、月1回の予防薬を忘れてしまう心配はありません。一方、1才未満の犬は体重の変動が大きいことから、接種できない場合が多いです。これは体重によって、必要な予防薬の量が変わるためです。
フィラリア予防は、予防薬により体内に入り込んだ幼虫が成虫になる前に駆除することで達成されます。蚊に吸血される可能性がある11月の1か月後である12月まで、しっかりと予防薬を与えることが大切です。
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