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猫の急性腎不全の原因と治療

獣医師
久保井
[記事公開日]  [最終更新日]
緊急疾患である猫の急性腎不全。適切な診断と処置を必要としており、ぜひこの文章を、一読いただきたいと思っています。急性腎不全とはいかなるものなのか 参考にしていただければ。
[ 目次 ]
猫の急性腎不全の原因と治療
一口に急性腎不全といってもその原因や治療は様々です。
適切な診断や治療により腎機能が完全に破綻する前に助けられる命が増えるはずです。
今回は最新の分類や治療など急性腎不全に対する考え方の参考にしていただければと思います。

定義および診断基準

急性腎不全は急性に腎機能が低下し、窒素または非窒素性産物の体内蓄積が起こることによる電解質、酸塩基平衡および水和平衡の破綻が認められる病態をさします。
現在 IRIS AKIのグレーディングというものが使われつつあり、GradeⅠ〜GradeⅤまで分類され、血清クレアチニンの値とサブグレードとして排尿の有無などが基準とされます。

急性腎不全の原因

急性腎不全の原因は様々で以下に分類されます。
A.腎前性
①失血や利尿剤の過剰投与などによる血管内容積喪失
②ショックや敗血症などの心拍出量減少
③敗血症やアナフィラキシーなどの全身血管の拡張
④急性高カルシウム血症、ノルエピネフリン、NSAIDsの投与による腎血管収縮
B.腎性
①腎動静脈の血栓塞栓、DIC
②尿細管障害(ぶどう、レーズン、ゆり、アミノグリコシドなど)
③尿細管間質障害(感染、腫瘍など)
④糸球体障害
C.腎後性
①上位尿路閉塞
②下部尿路閉塞
このように腎不全の原因は分類されます。

猫の急性腎不全の原因と治療

症状

急性腎不全が起きると定義でも述べたように電解質や酸塩基平衡の破綻が起こります。
無尿や乏尿の場合はカリウムが排泄されず高カリウム血症や体がアシドーシスに傾いてきたりします。高カリウムが持続する場合、心臓が徐脈になり心肺停止に陥ります。
また、高窒素血症の場合は 尿毒症の症状が発症し全身の痙攣や昏睡といった状態に陥ります。

猫の急性腎不全の原因と治療

急性腎不全の治療

腎後性の場合は尿細管結石の除去など根本的な原因の除去が必要となり、その後腎前性や腎性と同じく 高カリウムや高窒素の改善が必要となってきます。
尿細管結石などが除去できない場合サブシステムという外科的処置を用いたり、腹膜透析などを行い別ルートで症状の改善を行う必要がてできます。
通常の場合は カリウムを含んでいない輸液剤を選び循環を確保する、また排尿がない場合ドパミンによる腎血管拡張やマンニトールによる利尿などを施し体外への電解質の排泄なども行います。高カリウムが続く場合、グルコース&インスリン療法 (GI療法)をおこなっていきカリウムの排泄を促します。
また、体がアシドーシスになっている場合、重炭酸などで補正も行います。
高窒素に対してはクレメジンという活性炭などを投与することもあります。

猫の急性腎不全の原因と治療

まとめ

急性腎不全は緊急疾患であり、早期の適切な診断と処置が必要となってきます。
また、病態は数時間でかなり変化するため小まめな血液モニタリングと治療の変更を行いその都度、病態をきちんと把握しておく必要があります。このようなしっかりとした知識と治療を行えば改善が見込める症例が増えることと思います。

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