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猫にとってアロマオイルは中毒を起こす危険な香り?

キャットケアスペシャリスト
高橋里佳
[記事公開日]  [最終更新日]
猫はもともと肉食動物なので、植物の成分が中毒を引き起こすことが少なくありません。人にとってはリラックスの道具であるアロマやエッセンシャルオイルも要注意。健康を害するだけでなく命に関わることもあります。
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猫にとってアロマオイルは中毒を起こす危険な香り?
キレイ好き、濡れることが好きじゃない、汚れたトイレには決して入らない、ネコ。飼い主さんの中には「ネコだから柑橘系は苦手だけれど、うちの子は良い香りが大好きで寄って来る」そう話す人も居るかも知れません。確かにマタタビのようにネコが夢中になる香りもありますが、香り=アロマ(aroma: 芳香)成分には、ネコたちに危険なものが多く存在するのです。

解毒できないアロマ成分

今では海外に負けず劣らず、日本でもアロマは身近な存在です。最近では資格を持つ人も多い身近なアロマオイル、実はネコにとって非常に危険な存在なのです。

普段は余り意識されないかも知れませんが、ネコは完全な肉食動物です。それに対しイヌは雑食、馬や羊は草食動物であり、私たちヒトと同じように植物(植物性の食物)を消化・吸収出来る、ネコとは異なる身体構造となっています。その違いとは、解毒作用の有無です。植物由来であるアロマオイルは、ネコの身体には相容れない、対応出来ないものなのです。その関係は「水と油」と例えられるほど、決して一緒にすることは出来ない存在なのです。

一般的にアロマオイルと呼ばれるエッセンシャルオイル(以下、精油)とは、様々な技法を用いて植物から抽出し、成分を凝縮した天然の芳香油(脂肪酸)です。アロマオイルは、その濃度や成分にも因りますが、香りを楽しむものから直接皮膚に塗布するものまで使用方法は様々です。

香りを楽しむために焚かれた精油は、空気中に成分が浮遊し、経口、経皮吸収(口、皮膚から体内へ吸収)され、肝臓で代謝が行われます。ただ、ネコはヒトやイヌ、草食動物と異なり「UDP-グルクロン酸転移酵素」を肝臓に持たないため、代謝が困難であり、いわゆる解毒作用が働きません。そのため、精油が持つ毒性が体内に留まり中毒を引き起こすのです。これはネコ以外の肉食動物にも同じことが言えるので、十分な注意が必要です。ただし、雑食動物であるイヌでもヒトとは身体構造や身体の大きさも異なるため、問題がないとは言い切れません。そして、ペットとして私たちと暮らすウサギ、ハムスター、モルモットといった小動物にも同様の危険性があり、鳥類に至っては気道がとても敏感であるため、深刻な問題を引き起こすこともあります。

猫にとってアロマオイルは中毒を起こす危険な香り?

猫が中毒を起こすエッセンシャルオイル

エッセンシャルオイル(精油)は、その殆どが植物由来です。これまでの研究により、ネコが中毒を引き起こすとされているのは、ウィンターグリーン、ティートゥリー、スイートバーチ、柑橘(d-リモネン)、松、シナモン、イランイラン、ペパーミント、ケイヒ、ペニーロイヤル、チョウジ、ユーカリなど、あらゆる精油が挙げられます。

名前を挙げた精油に限らず、こうした解毒出来ない成分(精油)が体内に吸収されると、嘔吐、震え、運動失調、歩行・呼吸困難、心拍数低下、血圧・体温低下、肝不全を引き起こし、中枢神経系に重篤な症状が起こり、やがては生命の危険に晒されるのです。

猫にとってアロマオイルは中毒を起こす危険な香り?

知られない怖さと無限の危険性

残念なことに、アロマオイルの動物に対する危険性はこれまで余り認知されておらず、その危険性が確認され、世に知られるようになったのは1990年代後半、ごく最近のことです。

かつてアロマオイルは、ネコに対して危険どころか安全であると考えられていたため、耳ダニ寄生、呼吸障害やストレス緩和の治療などに推奨されていたこともありました。その後、研究によってアロマオイル、精油がネコに対して非常に危険である、毒性があると証明されましたが、一般に広く知れ渡っていないのが現状です。

アロマの存在そのものや、動物に対してアロマオイルを使用することが一般的、日常的なものではなかったため、知られる機会が少なかったのかも知れません。実際、日本でもアロマの使用が一般的になったのは近年のことであり、まして動物に対する使用は、余り馴染みがありません。

直接摂取(飲食)するわけではないため、気づきにくい経皮吸収。アロマの使用はこれが一番危険です。受動喫煙と言われる副流煙の影響は世に知られるものですが、実はアロマオイルの成分も同様に、経口(呼吸)、経皮吸収され、体内摂取されるのです。

アロマオイルを焚く、スプレーを撒く、空気中に精油成分が広がる行為は、その影響が目に見えないため、「危険な行為」と言う認識が全くないまま、私たちの日常生活に取り込まれています。家族であるネコたちの不調の原因が、まさかアロマオイルにあるとは考えもしないかも知れません。

猫にとってアロマオイルは中毒を起こす危険な香り?

植物とネコ

植物がネコにとって全て危険なわけではありません。ネコが体内に溜まった毛玉(ヘアボール)を吐き出す際、先の細い葉を食べることはよく知られています。これは葉を食事として食べているのではなく、葉の表面にあるトゲトゲを利用し、胃を刺激することで嘔吐作用を引き起こす(毛玉を吐き出す)ために、葉を食べているのです。

 毛玉を吐き出すために食べる葉が安全であるように、ネコは本能的に危険な葉を食べることはありませんが、必ずしも危険な物を口にしないわけではないのです。特にヒトと暮らすネコたちは、日常生活で警戒心もなく暮らしている子が多いでしょう。そして、これもまたネコの本能から、興味がある物に対して触る、じゃれる、口にすると言った行為もよく見られます。近くにある植物に興味を持ち、葉をかじってしまうことは往々にして起こることです。

 植物由来の精油が有毒だとすると、当然植物そのものに毒性があります。ネコが食べてしまうと、精油同様に嘔吐、震え、肝不全、命を落としてしまう危険のある植物が、たくさんあります。

 キク科、アジサイ科、ナス科、バラ科、ツツジ科、ユリ科... 殆どの植物が当てはまるのではないかと思えるほど、多くの植物にネコにとっての毒性があります。特にユリは、祝辞事でも多く用いられますが、ネコにとっては猛毒であり、その葉を食べてしまうと48時間程度で肝機能は全て失われ、命を落とすと言われています。もし、誤って口にしてしまった場合はすぐに獣医さんへ行きましょう。飲み込んだ量にも因りますが、早急に吐き出させ、場合に因っては胃洗浄等の処置が必要となります。

猫にとってアロマオイルは中毒を起こす危険な香り?

目に見えない毒

日々の生活で植物、香りを傍に置きたい方は多く居るでしょう。ただ、大切な家族であるネコたちの安全を守るために、決してネコが触れられる場所に植物は置かないでください。ネコの生活圏に、生の植物を置かないことが何よりの安全策です。そしてアロマオイル、精油はネコの生活圏から切り離す。哀しいかも知れませんが、別の方法で香りを楽しみましょう。あなたにとっては癒やしでも、あなたの大切なネコにとっては「命を奪うほどの猛毒」なのです。

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