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犬の特発性脳炎 最新の診断と治療②

獣医師
久保井春希
[記事公開日]  [最終更新日]
壊死性髄膜脳炎に続き、代表的な特発性脳炎である肉芽腫性髄膜脳脊髄炎とステロイド反応性髄膜脳炎・動脈炎をご紹介していきます。
[ 目次 ]
犬の特発性脳炎 最新の診断と治療②
肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)は比較的古くから知られている脳炎で、最近のMRIの普及、放射線治療やステロイド以外の免疫抑制剤の利用によって以前より生存期間は延長してきているものの、依然として予後は比較的悪く、そのコントロールに苦戦する病態です。今回はステロイド反応性髄膜炎・動脈炎についてもご紹介していきます。

GMEとは?

GMEはイヌの中枢神経系にみられる非化膿性の炎症性疾患です。
病変が好発する部位は、大脳白質、小脳白質、脳幹、脊髄、そして視神経です。
肉眼的には病変部分の膨化や変色、髄膜の肥厚が観察されます。
GMEはさらに病変により細分化され、巣状型、播種型、眼型に分類されます。

①巣状型:少数の比較的境界明瞭な肉芽腫が認められる。
②播種型:脳および脊髄の広範囲に微慢性病変が見られるタイプ。
③眼型:視神経から視交叉〜脳内の視覚経路に限局した病変が見られらタイプ。

犬の特発性脳炎 最新の診断と治療②

発症年齢、症状

発症年齢は数ヶ月〜8歳程度です。
症状は急に現れ、治療をしなければ急激に進行していきます。

大脳白質に病変があれば、発作や運動失調、視力障害、性格や行動の変化が認められやすいです。
小脳に病変があれば、眼振や企図振戦、測定過大など。
脳幹に病変があれば、意識レベルの低下、旋回、中枢性前庭障害、四肢の不全麻痺です。

犬の特発性脳炎 最新の診断と治療②

診断と治療

診断はやはり画像診断があげられます。
画像診断では特徴的な軟化や壊死巣が認められるので生前診断の精度は高いです。
MRIではT2高信号、T1等〜低信号であり、造影剤で明瞭に増強されるか、リング状に増強されます。
しかし、これらだけでは悪性の腫瘍や他の炎症性疾患と鑑別がつかないため、脳脊髄液検査やその他 検査を組み合わせて診断していきます。

GMEの治療としては ステロイド、放射線治療、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、シトシンアラビノシドなどがあげられます。

SRMA

SRMAはビーグルやバーニーズマウンテンドッグなどの特定の犬種でみられる疾患です。
病名のとうり、様々な程度の脊髄炎と特徴的な動脈炎を呈しステロイド治療に比較的よく反応します。
自己免疫性の疾患だと考えられているが、原因は明らかになっていません。

症状は頸部の痛みと緊張、40度以上の発熱などがあげられます。
診断としては 椎体炎などの感染性疾患を除外して、MRIの画像と合わせて診断していきます。

治療は前述の通り、ステロイド治療を半年から一年行なっていきます。再発することも多く、不可逆的に再発すると予後不良となります。

犬の特発性脳炎 最新の診断と治療②

まとま

GMEもSRMAも原因は不明であり、診断法もまだ足りない部分も多いです。
少しでも これらの疾患を心に留め、その他の疾患と鑑別していければ治療効率と質を上げることができると思っています。

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