犬のアレルギー性皮膚炎に対する最新治療
犬ではまだ原因の究明はされていないが、人では衛星性仮説という説があります。
それは、生活水準や衛生環境の向上による幼少時期の感染症の減少が、近年 みられるアレルギー疾患の増加の原因ではないかという考えです。最近ではこれらを裏付ける免疫学的な意見も数多く出てきているため、今回はアレルギー疾患の治療法についてお伝えしていきます。
アレルギー検査
アトピー性皮膚炎を確定できる診断はありません。アトピー性皮膚炎の2つの大きな要因は免疫バランスの異常と皮膚バリア機能の異常であることは明らかですが、従来の検査は免疫バランスの異常のみにフォーカスされています。
現在 国内ではアレルギー検査研究所でアレルギー特異的IgE検査、リンパ球反応試験、アレルギー強度試験が行われています。その他で スペクトラムジャパンという海外へ受注する検査会社ではさらに幅広いアレルギー検査が行われています。
最新の治療法①
まず、治療にはいくつか治療理由を含め方法があります。
原因療法:ノミなど外部寄生虫対策、食物アレルギー対策、減感作療法、セラミド補給療法。
対症療法:二次感染対策用抗菌薬、真菌剤、免疫抑制的に働く抗炎症剤、抗アレルギー剤などです。
その他:シャンプー、サプリメント
外部寄生虫については、その寄生虫に対する適切な薬剤投与が求められますが、疥癬、毛包虫の診断のアドバイスとして、鏡検時 浸透液としてDMSO液をもちいること。 そして、一回に限らず時間をおいて何回か繰り返し検査を行うことが大切です。
二次感染対策としては、マラセチアやブドウ球菌の二次感染が関与していることが多くその対策が重要です。
マラセチア皮膚炎になっている場合 飲み薬の投薬はあまり効果はありません。
代わりに マラセブシャンプーやヒビテン消毒液による消毒が圧倒的に効果を発揮します。
細菌に関しては近年 ミノサイクリンの投与が推奨されています。ニューキノロンなどの闇雲な投与は耐性菌の発生の原因となるため避けるべきと考えています。
また、薬剤投与を行なっていて治りが悪い場合は皮膚培養検査を行い適切な薬剤判別が望ましいです。
最新治療法②
次に食物アレルギー対策です。
これは現在の療法食で全てのアレルギーを網羅する食事は少なくかなり苦戦されている方も多い問題です。
現在の食物アレルギー対策はⅠ型アレルギーに対するものであり、Ⅳ型アレルギーに対しては対応していません。どういうことかというと、肉がアレルゲンのワンちゃんは 豚でも鳥でもどんなに加水分解などをして分子を細かくしてもわずかでも入っていれば反応してしまいます。
つまり、肉がダメな子なら魚、魚がダメなら小麦のみといった全くその食材が入っていない食事に変えることが理想とされています。現在 そのフードとして当てはまるのはピュアプロテインという餌のみとなっています。
現在のアレルギー療法食は、分子を1000ダルトン近くまで細かくし、Ⅰ型アレルギーに反応しないようにするための食事です。また、新たにタピオカやダック、カンガルー、ウサギなど新奇タンパクを有する食事が加えられさまざまな子たちのニーズに応えられるようになってきています。
また、手作り食も現在 推奨している方もいますが、こちらはなかなかハードルが高く時間と経済的にゆとりがあるかたにオススメするやり方となっています。
最新治療③
免疫療法として、古くからステロイドの投与もされていますが長期投与はオススメはしません。
まず、痒みが出たら1mg/kg〜2mg/kg を3日間しっかりと使い、その後減薬していくことをお勧めします。
ステロイド使用後はシクロスポリンなど免疫抑制を使うこともお勧めします。シクロスポリンには多毛という副作用があるため脱毛がひどい子にはおススメです。
新たな治療としてはインターフェロンγ の週三回投与も効果を示します。
新たな免疫療法としてオクラシチニブを有効成分とするアポキルがかなりの普及をみせています。
マレイン酸などの抗ヒスタミン剤はあまり効果を示さないことが 現在わかってきています。
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