マダニと重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
マダニについて
マダニは吸血する節足動物で、唯一の栄養源が動物の血液です。体内にさまざまな感染症の原因となる病原体がいたり、多数のマダニが寄生すると犬や猫に貧血を起こすことがあります。以前から犬のバベシア症という病気を媒介することで、特に西日本では警戒されてきました。
卵から孵化し、脱皮を繰り返しながら成長していきます。卵から孵化した時点での状態は幼ダニと呼ばれ、体長が約1ミリ程度です。犬や猫に寄生して吸血した後に脱皮し、体長2〜3ミリの若ダニになります。さらに寄生して吸血し、脱皮をして体長4〜8ミリの成ダニになります。成ダニはオスとメスに分かれます。吸血し終わったメスの成ダニは2週間から1ヶ月後に産卵します。卵の数は数百個から数千個と言われています。
このように、成長過程で3回吸血しますが、毎回吸血する相手は変わります。これによって病原体を運んでしまうことが問題になります。
ちなみに、アレルギーの原因となるハウスダストマイトとは全く違う種類です。また、吸血すると体重が数百倍に増えることもあります。そのため、急にできものができたということで動物病院を受診される方も多くいます。
日本には実に40種類以上のマダニが生息しており、犬や猫に寄生することが知られているのはそのうちの約14種類です。中でもフタトゲチマダニ、キチマダニ、ヤマアラシチマダニ、ヤマトチマダニ、シュルツェマダニ、ヤマトマダニ、タネガタマダニ、タカサゴキララマダニ、クリイロコイタマダニの9種類は特に報告例が多い種類です。
一般的に、越冬した成ダニは春先から初夏にかけて産卵し、卵から孵化した幼ダニが秋に大量に発生します。そのため、春先から初夏にかけて若ダニと成ダニが、秋には幼ダニの活動が活発になります。また、活動時期がずれる種類もあるため、マダニの脅威は年間を通じて存在すると考えるべきです。
マダニの予防
マダニの予防薬は、スポットタイプ(首筋に薬を垂らすタイプ)と、内服薬タイプがあります。どちらもほとんどの製品で1ヶ月効果が持続するため、月に1回投与するのが基本です。最近では3ヶ月持続する製品もあります。しかしながら、予防薬だけで100%予防できるかというと、そうではありません。予防薬はノミ予防の成分も含まれていますが、ノミ予防の成分と比べると体に残りにくいため、マダニの活動が活発な時期やマダニが多く生息する場所に出かける場合は予防薬を追加投与したり、犬用の虫除けスプレーを使うなどした方がいいとされています。
マダニが付いていたら
もしマダニが犬や猫に付いていたら、無理に引っ張って取るのはやめましょう。マダニには「口器」と呼ばれる宿主の皮膚に差し込む部分があり、その部分が犬や猫の皮膚に残ってしまう危険があるためです。残ってしまうと、そこで炎症が起きたり、異物反応でしこりができることがあります。市販のマダニ除去機材を使って取ることもできますが、可能であれば動物病院で処置してもらいましょう。
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