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犬と猫のてんかんについて

獣医師
高木俊輔
[記事公開日]  [最終更新日]
てんかんは犬でも猫でもみられる病気です。
ケイレン=てんかん、と考えがちですが、それ以外の病気でもケイレンがみられることがあるため注意が必要です。今回はこのてんかんについて、簡単に、できるだけ分かりやすくまとめてみました。
[ 目次 ]
犬と猫のてんかんについて
てんかんは、ケイレンや身体が硬直するという、いわゆる「てんかん発作」という症状がみられる病気です。
軽度な症状であればたまにケイレンを起こしてもすぐに元に戻るケースもありますが、重度になると命に関わることもあります。
ただし、ケイレンのような発作があるからといって直ちに「てんかんである」と診断することはできません。てんかん以外の病気はないか、またどんなタイプのてんかんなのかを診断するためには様々な検査を組み合わせる必要があります。
今回はてんかんという病気について取り上げます。

てんかんの分類

犬ではてんかんのうち「特発性てんかん」が最も多くみられます。「特発性」というのは、特定できる原因がない(見つからない)場合に付けられるもので、血液検査や身体検査、MRI検査のような画像検査で異常が見当たらないものが特発性てんかんになります。ちなみに、犬ではよくみられる特発性てんかんですが、猫では少ないと考えられています。
てんかんは特発性と症候性に分類され、症候性てんかんは低血糖(血糖値が低くなり過ぎてしまう状態)や肝臓の病気など、検査によって原因が特定できるものを指します。

てんかんの症状

正常な脳の中では微量な電気が規則正しく流れており、神経回路をショートしないようになっています。これに対しててんかんになると神経回路がショートしてしまい、脳の神経細胞が異常に興奮して発作を起こします。その神経細胞の異常興奮の結果、身体が強く固まる・ケイレンを起こす・体を反り返して泡を吹く、といった症状がみられるようになります。また失禁したりウンチを漏らすこともあります。そしてその症状は2〜3分で治まることが多いです。
そして重要なことは、発作は繰り返すということです。そのため、例えば「今朝ケイレンしたのですが、うちの子はてんかんですか⁉︎」と来院されることがありますが、その場合てんかんを疑うことはできますが、明日以降も同じような発作を繰り返すかどうかの経過を見ないと診断を下すことはできないのです。
また、発作の頻度には個体差があります。毎日発作を起こす子もいれば、1年に1回だけという子もいます。
発作について、もう少し突っ込んだお話です。発作は「部分発作」と「全般発作」に分けられます。
「部分発作」は脳の一部分にショートが起こっている状態で、この場合は意識はあるけど身体が動かなかったり、身体の一部分だけがケイレンする、といった症状がみられます。例えば右の後ろ足に関連した部位がショートすれば、右の後ろ足が突っ張ったりケイレンしたりするのです。
「全般発作」は身体全体が激しくケイレンします。この時は意識はありません。そして3つのパターンに分けられます。
1つ目は「強直性」で、これは身体を仰け反らしたり、グーッと足を伸ばて固くなるケイレンです。2つ目は「間代性」で、これはガタガタと手足の屈伸を繰り返すような動きがみられるケイレンです。3つ目が「強直間代性」で、強直性のケイレンと間代性のケイレンを合わせたものになります。

てんかんの診断方法

ケイレンがあるということだけでは、てんかんの可能性はあるけど確定診断はできません。
さらに、ケイレンを起こして動物病院に来院された場合、ほとんどのケースでケイレンは治まっており、動物は何事もなかったかのような顔をしていることがほとんどです。そのため、まずは詳しくケイレンを起こした時の状況を聞き取ります。そして慎重に全身状態の身体検査を行います。血液検査ではケイレンを起こすような代謝性の異常、例えば肝機能や腎機能に異常がないか、低血糖になっていないか、などを確認します。より身体全体の情報を確認するために、レントゲンやエコー検査といった画像検査を実施するケースもあります。多くの動物病院で実施可能な検査はこの辺りになります。
より詳しい検査になると、MRI検査や脳波検査があります。MRI検査で脳の中を調べ、脳腫瘍や脳炎といった神経症状を起こすような異常がないかを調べます。脳波検査は神経回路のショートがないかどうかを調べます。特発性てんかんはここまでやることでようやく確定診断をつけることができます。ただし、どちらの検査も全身麻酔が必要になること、検査可能な病院が限られる(大学病院や専門病院)ので、ややハードルが高い検査と言えるでしょう。

てんかんの治療法

症候性てんかんの場合は、原因となっている病気の治療を行うことでケイレン発作が落ち着くことが予想されます。特発性てんかんや、症候性てんかんでも原因の治療が難しい場合はケイレン発作を抑える抗てんかん薬という内服薬を投与します。抗てんかん薬には色々な種類があり、どれを使うかは動物の状態やかけられるコストなどから判断します。また動物と薬の相性もあるため、ある程度薬を使ってから症状がどの程度抑えられているのか、身体の中で十分に薬が効いているかを定期的に検査します。てんかんの治療はケイレン発作を完全に止めることではなく、脳に危険な負担がかからないレベルで維持していくことです。

てんかんになったら

治療を始めて発作のコントロールがうまくできていても、何らかの刺激で発作が出てきてしまうことはよくあります。例えば、近くで工事をしていて音がうるさい、花火大会があった、雷の音がすごかった、台風など気圧の変化があった、などです。そのため、あまり大きな刺激は避けたほうが良いでしょう。また、目の前で発作が起きると慌てて抱っこしようとする飼い主さんが多いのですが、ケイレン発作が起きている時は動物も自分の動きをコントロールできないため、噛まれてしまうと大怪我をすることがあります。発作が起きたら、動物が怪我をしないように周りをタオルなどで囲ってあげて直接触らないようにしてください。
てんかんは発作がコントロールできないと命に関わることがある病気ですが、コントロールがきちんとできれば寿命を全うできる子もたくさんいます。そのためにも、獣医さんとうまく連携をとって適切な対処ができるように準備しておくことが大事です。

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