猫の糖尿病ってどんな病気?
一度はきいたことある!人もいらっしゃる、そんな糖尿病ですがじつは猫ちゃんにもあることをご存知ですか?
しかも猫ちゃんの糖尿病はなかなか気づかず発症したときは命の危機となってしまうこともある、緊急疾患として扱われる怖い病気なのです。
「太ってたらなるのかな、どうしよう・・・」と心配ばかりせず、ぜひ愛猫ちゃんのために正しい知識を身につけてくださいね。
「太った人がなりやすい」と思われがちな糖尿病ですが、じつは大きく2つのタイプがみられます。
【1型】:小児や若年者に多く急激に起こる、血糖値を下げる働きであるインスリンに大きくかかわる
【2型】:徐々に進行し、生活習慣と遺伝的要因によって発病するいわゆる成人病的なタイプ
原因は異なりますが、どちらも血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が異常に高くなってきます。
そして猫ちゃんにも実は糖尿病があり、上の2型に進行や症状は似ているといわれています。
猫ちゃんの糖尿病はゆっくり気づかないうちに起こることが多く、ある日体が限界を超えた時にはもう合併症を起こしていることもある、かなり重篤な状態になって突然の入院生活になることもある病気です。
ちょっと長いですが、ぜひ正しい知識を身につけて愛猫ちゃんを守ってあげてください。
猫の糖尿病ってどんな病気?
猫によく似た人の2型糖尿病は遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。猫も、過度に肥満しているようなこが感染症や膵炎などそして大きなストレスを受けたことが原因で、血糖値を下げる働きのあるホルモンインスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりします。
ゆっくり進み目立った症状がないため、いつ発症したのか、わからないまま健康診断や保険の加入時に偶然発見されることがあります。とくに苦しくも痛くもなさそうで病院が苦手だから・・・と、放っておくと合併症がすすんで、ある日限界を超えて慌てて連れて来られる飼い主さんもいらっしゃいます。
限界を越えた状態とは、一般的には「ケトアシドーシス」といわれるものです。
インスリンは、ブドウ糖をエネルギーとして分解するときに必要なホルモンですが、これが不足すると、ブドウ糖の代わりに蓄えられた脂肪がエネルギー源として使われ、その結果ケトン体という酸性物質ができます。「ケトアシドーシス」とは、このケトン体が血中に増えすぎて、血液が酸性化した状態のことをさします。
血液が酸性の状態では体のさまざまな働きが低下し、重症になると昏睡に陥り、食欲や元気はもちろん、呼吸することも困難になってしまう非常に危険な症状です。
猫の糖尿病ってどうやって診断するの?
【一般的な症状】
先述したように、目立った症状があまり見られないのが猫の糖尿病の特徴です。
よく言われる、たくさん飲んでたくさんおしっこをする多飲多尿は必ずみられるとは限りませんが、気にするべき症状です。
またブドウ糖がうまく使えなくなるため、たっぷりと蓄えられた脂肪が急激に使われるようになる=急激に痩せることはあります。
【病院で行われる検査】
①視診:歩き方を観察し、後ろの肢のかかとまでぺったりとついてしまう、いわゆるべた肢になっている場合は、急激な筋力や神経伝達の低下が疑われるため、糖尿病の猫の特徴のひとつとされることがあります。
②血液検査:できれば空腹時の落ち着いた状態での血糖値を測定します。食べた直後、また病院になれておらず興奮してしまっている状態の猫では高血糖になるためタイミングが重要です。
③尿検査:糖尿病で尿に糖が漏れ出すのは、血糖値が200mg/dL近い状態が続いた場合です。基準値を大きく超えないと尿に糖は出ないので、早期診断には血糖検査が必須です。
④血糖コントロールマーカー:その時だけでなくある一定の期間の血糖値の動きを測ることができるGA(糖化アルブミン)などを追加で測ることで、微妙な状態でも確定診断することができます。
これらの検査の結果を総合し、糖尿病と診断した場合その重症度や進行度によって治療を選択することになります。
猫の糖尿病ってどうやって治療するの?
【緊急(急性)】
なにはともあれケトアシドーシスの状態を改善しなければ死んでしまうので、血管へのルートを採り、必要な輸液や投薬を行いつつ、酸素を吸入します。
高血糖、脱水、体内ミネラルの欠乏、糖の代謝がうまくいかないことによるケトン体の増加・・・これらを速やかに改善することが目標になるため、絶対安静による入院が必要になります。
血糖値はたいていの場合限界値超えのため、インスリンを開始することが必要になりますが急激に下げることでミネラル欠乏を悪化させることがあるため急ぐことはできません。
この状態で運び込まれてきた猫の飼い主さんは、場合によっては回復が難しいということを覚悟しなければなりません。
【慢性】
そこまで緊急性がないような軽症、または緊急時から改善があった場合は、入院による治療ではなく、自宅での飼い主さんによる治療の指導がなされます。
①食事療法:血糖値の急激な上昇を抑え、肥満を改善させる効果があるごはんが理想的です。低脂肪、高繊維、高たんぱく、低炭水化物などの特徴をもつ療法食を使うとコントロールがうまくいくことが多くあります。
しかし、そもそも糖尿病になるような猫は食べ物の選り好みがはっきりとしており、うまく療法食へ切り替えられないこともあります。その場合は、なるべく継続して食べられるごはんの量を計算して使うことになります。
②薬物治療
猫はインスリンへの反応が人や犬と異なり、同じインスリン製剤を注射しても長く効いてくれないということがしばしば起こります。
そのため、現在では猫専用(場合によっては犬も)のインスリンを、一日2回注射することが主流になっています。
インスリンへの反応は個体差が大きいため、どのくらいのインスリンの量を打つかは血糖値の変化をみながらコントロールするため、はじめはこまめな通院や入院が必要になります。
人で使われることのある飲み薬での血糖降下剤は、投薬の手間や早期発見の難しさからあまり使われることはありません。
<おすすめ動画>
<関連記事>
猫ちゃんに異変?様子がおかしいと思ったら(2部構成その1) 前回は『様子がおかしい??』『排泄がいつもと違う』についてご紹介させて頂きましたが、今回は、『呼吸』『顔周り』『毛のつや』『その他の観察ポイント』についての病気の早期発見に繋がる仕草や観察のポイントをご紹介したいと思います。
<関連記事>
猫の膵炎について膵炎は犬も猫もかかる病気です。以前は検査法が今ほど発達していなかっため、非常に強い症状を示すものしか膵炎と診断できませんでした。そのため、犬の膵炎は死ぬ病気、猫は膵炎にならないと考えられていました。現在は猫では膵臓間質の線維化を特徴とする慢性膵炎が認められています。はっきりした症状がないこともあり、なかなか分かりにくい猫の膵炎ですが、飼い主さんがこの病気についての知識を持って普段から観察されると発見率も上がるかもしれません。今回はそんな猫の膵炎について解説します。
<関連記事>