犬の肥満細胞腫とは?気になる症状、治療、予後まで解説‼
皮膚や皮下織に発生することが多く、稀に筋肉や内臓にも発生します。
リンパ節転移や他臓器への遠隔転移を示すことも多く、正確な診断も必要となります。
さて、皆さんは犬の肥満細胞腫についてどのくらい知っているでしょう。
何も知らないということは、万が一愛犬が肥満細胞腫にかかってしまったときに対応が後手に回る可能性があるということです。
本記事を読んで頂き、犬の肥満細胞腫の症状、診断、治療から予後まで、知識を深めて頂ければと思います。
肥満細胞腫が発生しやすい犬種
肥満細胞腫は、遺伝的に発生しやすい犬種があることがわかっています。
パグ、ボクサー、ラブラドルレトリバー、ゴールデンレトリバーがそれです。
特にパグは他の犬種よりも2~3倍発生リスクが高いと言われており、多くは多発性です。
しかし、このうち約95%は良性の挙動を取ります。
ここで注意しなければならないのは残りの約5%は悪性ということであり、パグだからと言って検査を疎かにすることは推奨されません。
犬の肥満細胞腫の症状
犬の肥満細胞腫の患者は、皮膚にできたしこりに気付いたという主訴がほとんどです。
しこりも、固いものから柔らかいものまで、イボのようなものもあれば脂肪塊のようなものまで様々です。
皮膚が赤くなることもあり、見た目だけでは判断できません。
肥満細胞は細胞質内にヒスタミンなどの顆粒を持っており、その顆粒が放出されることで症状が出る場合があります。
・高ヒスタミン血症
ヒスタミンによる胃酸分泌作用促進や胃壁の局所的な血行障害のため、胃十二指腸潰瘍が発生します。
また心血管系に作用し、低血圧性ショックにも関与しています。
・ダリエ徴候
触診などの物理的刺激による肥満細胞の脱顆粒により、紅斑、浮腫、皮下出血、掻痒の症状が現れます。
・癒合遅延
顆粒内のタンパク分解酵素やヒスタミンは創傷癒合にも関連しています。
これらによって傷が塞がりにくくなります。
犬の肥満細胞腫の診断
・細胞診
腫瘍が発生している部位に注射針を刺入し、細胞を採取します。
細胞診によって肥満細胞腫の診断は可能ですが、悪性度の評価はできません。
肥満細胞腫と診断された場合は、全身状態の評価や転移の有無を確信していきます。
・血液検査
末梢血中における肥満細胞の出現、遠隔臓器への転移による影響を確認します。
また、手術を行う際に麻酔が可能かどうかも判断します。
・血液凝固検査
細胞質内顆粒による癒合遅延が現れているか確認します。
外科手術においても、止血能の有無は重要となります。
・画像検査
X線検査や超音波検査によって、リンパ節転移や他臓器への遠隔転移の有無を確認します。
犬の肥満細胞腫では、肝臓や脾臓への転移が多いと言われています。
・病理組織学的検査
発生した肥満細胞腫の悪性度を評価するために必要です。
この悪性度評価によって、追加の治療や予後の判定を行います。
・遺伝子検査
一部の犬の肥満細胞腫においては、c-kitという遺伝子に変異があることがわかっています。
この遺伝子変異がある場合は、ある種類の分子標的薬が著効するという報告があり、治療選択肢を増やすためには重要な検査となります。
・骨髄検査
骨髄への浸潤の有無を確認します。
全身麻酔が必要なため、検査を行うかは慎重に判断します。
犬の肥満細胞腫の病理組織学的分類
犬の肥満細胞腫の悪性度は、病理組織学的検査によって3つに分類されます。
これらの評価によって、治療方針や予後の判定を行います。
・グレード1 分化型 低グレード
悪性度は低く、転移も再発も起こりにくいタイプです。
多くは外科手術のみで根治します。
・グレード2 中間型 中等度グレード
悪性度は高く、転移を起こすことがあり、再発も多く見られるタイプです。
外科手術による根治も期待できますが、一方で治療を行っても転移や再発が進行してしまうこともあります。
・グレード3 低分化型 高グレード
悪性度は非常に高く、転移も再発も非常に起こしやすいタイプです。
治療を行った場合でも完治は難しいと言われています。
犬の肥満細胞腫の治療
腫瘍の治療は、外科手術、放射線療法、化学療法の三本柱で行われることが一般的です。
犬の肥満細胞腫は、悪性度や進行度によってはこれらすべてを駆使する場合もあります。
・外科手術
犬の肥満細胞腫治療の第一選択になります。
肥満細胞腫は皮下の体表よりさらに深い部位に浸潤している可能性があるので、見えている腫瘍よりもかなり広範囲を切除することになります。
しかし頭部や頸部、四肢などの切除が難しい部分や、腫瘍自体が非常に大きくなっている場合などは緩和的治療として腫瘍の一部分を切除し、放射線療法や化学療法を組み合わせます。
・放射線療法
浸潤した肥満細胞腫が外科手術だけでは取り除けなかったときなどに用います。
犬の場合、ヒトと違って全身麻酔が必要になります。
また放射線療法の機械を持っている大学病院に足を運ばなくてはなりません。
・化学療法
グレード2以上でリンパ節転移がある場合や多発性の場合、グレード3の肥満細胞腫で適応となります。
犬の肥満細胞腫に効果のある薬剤はいくつか報告されています。
c-kit遺伝子の変異がある場合は分子標的薬の投与も選択に入ります。
・補助療法
ヒスタミンによる悪影響を抑制するために、抗ヒスタミン薬を投与することもあります。
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