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疑ったらすぐに動物病院へ!犬の子宮蓄膿症?について解説!

獣医師
相澤啓介
[記事公開日]  [最終更新日]
犬の子宮蓄膿症は、子宮内に膿が貯留する疾患です。
避妊していないメス犬で発生し、命にも関わってくる緊急疾患です。
しかしその緊急性が浸透していないせいで、手遅れになってしまう犬も多くいます。
本記事では犬の子宮蓄膿症の症状、診断、治療から予防まで解説し、理解を深めて頂ければと思います。
[ 目次 ]
疑ったらすぐに動物病院へ!犬の子宮蓄膿症?について解説!
犬の子宮蓄膿症は、その名の通り子宮に膿が貯留する疾患です。
陰部から膿が流れ出す開放型と、子宮に膿が貯留し続ける閉鎖型に分類されます。
どちらも、早期に治療を行わないと命に関わる緊急疾患です。
しかし自宅では、血尿を呈する膀胱炎などとの鑑別が困難で、動物病院に来院した時にはかなり症状が進行していることも少なくありません。
そこで本記事では、犬の子宮蓄膿症の症状や治療、予防を解説していきます。
最後まで読んで頂き、子宮蓄膿症に対する意識を持って頂ければと思います。

子宮蓄膿症にかかりやすい時期

子宮蓄膿症は若い犬よりも6歳以上の中高齢の犬で多く発生します。
しかも発情後約2ヵ月の黄体期と呼ばれる時期に発生します。
産歴との関係が深く、未経産犬および長く繁殖を休止している経産犬に見られ、繁殖を繰り返している犬には発症しません。

犬の子宮蓄膿症の発生要因

子宮蓄膿症の膿汁からは様々な細菌が検出されますがその80%以上は大腸菌で、肛門や外陰部領域からの侵入が重視されています。
また、卵巣を摘出した犬に、女性ホルモンであるエストロジェンとプロジェステロンを長期に周期的に繰り返し投与すると、子宮蓄膿症の誘起が可能であるという報告があります。
プロジェステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、排卵後に分泌されて子宮内膜を肥厚させるはたらきがあります。これによって胎子は衝撃から守られます。一方で肥厚した子宮内膜は栄養が豊富で、細菌感染が起こりやすくなり、これが子宮蓄膿症の発生要因となります。
また発情期の子宮は、精子が通りやすいように通常時よりも広くなっています。そこに細菌が侵入しやすくなります。
さらに妊娠した時に子犬を異物として攻撃しないよう、異物に対する防御反応も弱くなっている時期ですので、細菌感染が容易に成立してしまいます。

犬の子宮蓄膿症の症状

犬の子宮蓄膿症の症状には以下のものが認められます。

・食欲不振
・多飲多尿
・嘔吐
・腹部膨満
・陰部から黄褐色または小豆色の膿様物の排出
・外陰部の腫脹

しかし、閉鎖型と呼ばれる子宮蓄膿症の場合、陰部からの排膿が顕著ではありません。
では症状が軽度かと言うとそうではなく、むしろ膿が子宮内に貯留し続けるため非常に危険です。
細菌の増殖がコントロールできずに敗血症を起こすこともあります。
さらに膿によって子宮が破裂することもあります。
子宮破裂の場合には、子宮内の細菌による重度の腹膜炎やショックを引き起こすことがあります。

疑ったらすぐに動物病院へ!犬の子宮蓄膿症?について解説!

犬の子宮蓄膿症の診断

子宮蓄膿症は複数の検査によって行います。

・問診、身体検査
避妊歴の有無、発情後の期間、臨床症状の出た時期について問診します。
また身体検査にて陰部周りを確認し、汚れ、異常臭気について確認します。
腹部の膨満があるかもしっかり評価します。

・画像検査
腹部の単純X線検査や腹部超音波検査にて子宮内の液体貯留を確認します。
通常、子宮内に液体は存在しないので、液体貯留が認められた場合は子宮蓄膿症を疑います。
しかし、画像検査のみでは子宮内の液体がただの水なのか膿なのかを判断することは困難です。

・血液検査
細菌の感染によって好中球を主体とする白血球の増加が見られます。
また重度の炎症による好中球の左方変位、貧血が見られることもあります。
血液生化学検査では、細菌内毒素による腎障害によって血中尿素窒素(BUN)の増加が認められることもあります。
また炎症マーカーであるCRPの上昇も見られます。

犬の子宮蓄膿症の治療

子宮蓄膿症と診断された場合はほとんどが緊急入院となります。

・外科手術
膿が貯留した子宮を摘出します。
シンプルですが、救命を考えた場合に最初に選択すべき治療法です。
その後に繁殖が望めなくなるため、飼い主さんとよく相談して決めることになります。
また全身状態を確認し、悪い場合は点滴や薬によって状態を改善した上で手術を行います。

・内科療法
今後繁殖を強く希望する場合や、麻酔のリスクが非常に高い場合に用います。
プロスタグランジンF₂αやプロスタグランジンF₂α類似体の投与によって子宮内膜の環境を改善し、細菌の繁殖を抑制します。
しかし状態の改善が見られるまでに4~5日を要し、犬に長期間苦痛を与えることになるかもしれません。
また治療しても再発することも多いことも理解する必要があります。

・抗菌薬
いずれの治療法でも、抗菌薬を多剤併用します。
一般には広域スペクトルの薬剤を用いますが、効果が弱い場合には子宮内細菌について薬剤感受性試験を行い、適切な薬剤を選択します。

犬の子宮蓄膿症の予防

子宮蓄膿症はエストロジェンなどのホルモンによって発生する疾患ですので、避妊手術が一番の予防法です。
乳腺腫瘍の予防効果との兼ね合いもあるため、繁殖を望まない場合には早期に手術を行うことが推奨されます。
また、高齢になってくると心臓や腎臓に疾患を抱えることが多く、麻酔のリスクが格段に上昇するため、この意味でも若いうちに避妊を済ませておくことは大切です。

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