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軟口蓋過長症って?愛犬・愛猫の“いびき”、大丈夫ですか?

獣医師
畔柳沙絵
[記事公開日]  [最終更新日]
いびきがうるさくて眠れない!といった騒音問題は、人ではよく聞くお悩みですね。最近は専門の医療機関で、本格的に治療される方もたくさんいらっしゃいます。
一方、わんちゃん、ねこちゃんのいびきというと、なんとも可愛らしい笑い話になることが多いのではないでしょうか?なんと、ペットのいびき動画集もあるほど!
そんな微笑ましいいびきですが、実は、あまり侮らない方が良いことをご存じですか?
軟口蓋過長症によるいびきは、呼吸困難を起こし死亡することもある怖い病気です。
本記事では、軟口蓋過長症になってしまった場合の症状や診断、治療、予後、予防についてお話したいと思います。
[ 目次 ]
軟口蓋過長症って?愛犬・愛猫の“いびき”、大丈夫ですか?
軟口蓋過長症という病気を聞いたことがあるでしょうか?あまり聞きなれない病名だと感じられる方が多いかもしれません。でも、実は日常でよく目にする病気でもあるのです。
愛犬・愛猫の若齢期からのいびき、ちょっと運動しただけで喉が苦しそう…などの症状はありませんか?
軟口蓋過長症は、フレンチ・ブルドック、パグ、イングリッシュ・ブルドック、ボストン・テリア、シーズーなどの短頭種(頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬種)に多く、時々チンチラやヒマラヤンなどの猫でも見られます。ゴールデン・レトリーバーや、ラブラドール・レトリーバーなどの大型犬や、チワワ、マルチーズ、ヨークシャー・テリアなどのトイ種(実は彼らも短頭種です)でも症状がみられる場合は、この病気を疑います。

そもそも軟口蓋とは?

軟口蓋とは、口腔内の上側(天井部、つまり硬口蓋)から後方に伸びた柔らかい粘膜性の組織で、嚥下時に鼻腔と口腔(鼻咽頭と咽頭口部)を分ける蓋の役割をします。そうして、物を食べたり飲んだりした時に、口から鼻に逆流しないようにしているのです。軟口蓋過長症は、この軟口蓋が長く分厚くなっている状態のことを指します。肥厚し伸びすぎた軟口蓋は、鼻腔から続く気道を狭めてしまうため、空気が通りにくくなってしまうのです。

軟口蓋過長症って?愛犬・愛猫の“いびき”、大丈夫ですか?

軟口蓋過長症の症状

・いびき
初期は就寝時に軽いいびき音が聞こえる程度ですが、やがて悪化し、大きな音になっていきます。また、起きている時でも、興奮状態でパンティング(口を開け舌を出して呼吸をする)に伴ういびき音が聞こえます。
・吐き戻し
長く分厚い軟口蓋が邪魔をして、食事が上手く飲み込めず、ガアッと大きな口を開けて吐き出してしまうこともあります。
・運動不耐性・頻繁なパンティング
常に呼吸が苦しいため、少し運動をしただけで激しくパンティングをします。
・呼吸困難、チアノーゼ(酸素不足により舌が青紫色になる)、失神
激しい運動や興奮で、軟口蓋や喉頭の粘膜が急激な炎症を起こし浮腫を起こすと、さらに気道を狭め、呼吸ができなくなることから、最悪の場合死に至ることもあります。

軟口蓋過長症の原因

短頭種の鼻が短く平坦な顔面、短く太い頸部などは、品種改良を重ねて作られた、自然ではない特徴です。そのため、頭頚部の組織がバランス良く発達せず、軟口蓋が長く分厚くなるなどの異常が生じます。
上記の理由から、軟口蓋過長症は先天性であることがほとんどです。若齢期では軟口蓋の異常がそこまで顕著でなくても、年齢とともに伸びてしまう場合もあります。それは、呼吸のたびに気道抵抗が起こるため、軟口蓋が炎症を起こすためです。同じ理由から、喉頭蓋の麻痺、気管虚脱を併発することもよくあります。
短頭種の軟口蓋過長症、喉頭虚脱、気管低形成あるいは気管虚脱、狭窄性外鼻孔、喉頭室外反など複数の病気が合併する閉塞性気道障害のことを、短頭種気道症候群と呼びます。

軟口蓋過長症の診断

麻酔を行わずにできる検査としてはX線検査がありますが、タイミングが合わなければ過長した軟口蓋は確認できません。また、重度の呼吸障害を呈している場合は、X線検査時の無理な体制で状態が悪化することもあるので、無理は禁物です。
確定診断には、麻酔下での内視鏡検査が必要になります。ただ、軟口蓋過長症の症例は、麻酔による死亡リスクがそうでない症例に比べ高くなります。麻酔の際に、気道確保のための管(気管チューブ)を口から喉頭に入れるのですが、長く分厚い軟口蓋が邪魔をして、非常に困難な作業になるためです。そのため、多くの病院では、麻酔を行う場合には、確定診断と同時に外科的治療を行います。

軟口蓋過長症の治療法・予後

根本的な治療法は、過長した軟口蓋をレーザーなどを使って取り除く外科的切除になります。特に、気管低形成、気管虚脱および喉頭虚脱などの短頭種気道症候群の併発や、悪化の軽減を目的とする場合は、早期の手術が理想的です。1歳未満で手術を行うと高い治療効果が得られるのに対し、高齢になるに従って病態が進行し、症状の改善率は低くなります。また、年齢とともに麻酔リスクも上がることから、去勢・避妊手術の際に同時に行う病動物院もあります。
症状に緊急性がある場合は、内科的治療を選択します。抗炎症剤などで軟口蓋の炎症・浮腫を緩和させたり、去痰薬、鎮静薬、酸素療法が必要になることもあります。しかし、内科的療法の効果は一時的なものにすぎません。

軟口蓋過長症の予防

多くは先天性のため、軟口蓋過長症にならないための予防法は残念ながらありません。愛犬・愛猫が軟口蓋過長症になってしまったら、症状を悪化させないように日常生活に注意が必要です。まず、興奮や高温多湿は呼吸状態を悪化させるため、運動量の調節や夏場の外出の制限をしましょう。また、肥満は気道を狭める原因になるので、適正体重を維持することも大切です。

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