犬の若年性蜂窩織炎って?症状、治療について詳しく解説します!
犬では生後3週から6カ月の子犬での発生がもっとも多いとされています。ダックスフンド、チワワ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ゴーデン・セター、ビーグル、ポインターの子犬で多く見られます。同じ母親から生まれた兄弟犬が揃って発症することもあります。
蜂窩織炎の症状
・口と眼の回り
口唇や眼瞼周囲に、水疱(水ぶくれ)・膿疱(水疱の内容物が粘性の強い膿)ができたり、浸出液(傷の表面から染み出てくる液体)が出て、茶~黒色の痂皮(浸出液が乾いたもの)が付着します。また、腫脹、脱毛がみられます。
・耳介(耳たぶ)、肛門、包皮(ペニスを覆う皮膚)
耳介も口唇や眼瞼周囲と同様に、腫脹し、浸出液、痂皮がみられます。肛門と包皮にも病変を認めることがあります。
・皮疹(肉眼的にわかる皮膚の発疹)
軽度~重度の皮疹で、痛みを伴うことが多いですが、痒くて掻くという行動はみられません。
・リンパ節
局所、または全身のリンパ節が顕著に腫大し、リンパ節が膿瘍化することもあります。
・全身状態の悪化
症状が重くなると、発熱し、元気・食欲がなくなります。
蜂窩織炎の原因
蜂窩織炎を発症する原因は分かっていません。しかし、若齢で発症し、特定の犬種での発症が多いこと、また血縁関係も認められることから、遺伝的素因があると考えられています。そういった理由から、先天的疾患とも言えるかもしれません。
蜂窩織炎の診断
・病歴、臨床症状
犬の皮膚状態や、全身状態を含む病状の進行具合から、他の疾患を除外していきます。類症鑑別が必要な疾患としては、顎の膿皮症、毛包虫症、深在性膿皮症、皮膚糸状菌症、血管性浮腫、ジステンパー、落葉状天疱瘡、薬物アレルギーなどが挙げられます。飼い主さんができることとしては、ワンちゃんの元気・食欲の変化を見逃さないこと、皮膚状態をよく観察すること、そして些細な変化でもすぐに動物病院の診察を受けることです。犬の若年性蜂窩織炎は、初期では何の病気か判断がつかないこともよくあります。その為、獣医師によるこまめな経過観察が必要になるのです。
・細胞診
皮膚や耳道(耳の穴の奥)の滲出物を採取し、顕微鏡で観察します。白血球の仲間である好中球やマクロファージによる炎症像がみられます。二次感染、細菌、酵母菌感染を認めることもあります。
また、リンパ節に針を刺して(リンパ節吸引)、リンパ節の内部も顕微鏡で観察します。炎症像は認められますが、感染性の病原体は検出されません。
・皮膚の病理組織学
麻酔下において、蜂窩織炎が観察される皮膚を採取します(皮膚生検)。その皮膚病片を顕微鏡で観察することで、蜂窩織炎を確定できます(確定診断)。
・細菌培養
病変からの浸出液を培養します。通常は無菌性ですが、二次感染(抵抗力が弱まっているところに、別の病原体が重ねて感染すること)がある場合は細菌が検出できます。
蜂窩織炎の治療法
・洗浄
病変部の浸出液や、付着した痂皮をそのままにしておくと、皮膚が余計に荒れて、さらに二次感染の原因となります。無理のない範囲で、毎日温水で洗浄します。
・ステロイド
約1~4週間、高容量のステロイドを投与します。その後、時間をかけて漸減または休薬していきます。この時に急いで薬を止めてしまうと、再発する可能性がある為、注意が必要です。ステロイドを使用せずに自然治癒することもありますが、全身状態が悪くなることや、皮膚に病変が出た場所は後に瘢痕化(皮膚病片が綺麗に治らず、色素が沈着したり、ボコボコした痕になること)することから、積極的な治療が望ましいでしょう。
・免疫抑制剤
上記のステロイドと併用することがあります。ステロイドと同じく、犬の状態に合わせて、ゆっくりと薬の量を漸減、休薬していきます。
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