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犬の若年性蜂窩織炎って?症状、治療について詳しく解説します!

ペット栄養管理士
畔柳沙絵
[記事公開日]  [最終更新日]
蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の病気をご存じですか?蜂巣織炎(ほうそうしきえん)、蜂巣炎(ほうそうえん)、フレグモーネとも呼ばれ、人間の病気としても聞くことのある疾患です。ただ、ワンちゃんの場合は人間のそれとはちょっと様子が違います。放っておけば最悪命を落としてしまうこともあるこの病は、ワンちゃんを飼っている方には勿論、これから可愛い子犬を迎えようとしている方にも是非知っておいて頂きたい皮膚病です。本記事では、蜂窩織炎の症状や診断、治療についてお話したいと思います。
[ 目次 ]
犬の若年性蜂窩織炎って?症状、治療について詳しく解説します!
蜂窩織炎の 「蜂窩」とは、ハチの巣のことを指します。この病気に侵された皮膚病片を顕微鏡で詳しくみてみると、炎症細胞と壊れた組織が、まるでハチの幼虫と巣の仕切りに見えることから、このような病名が付きました。
犬では生後3週から6カ月の子犬での発生がもっとも多いとされています。ダックスフンド、チワワ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ゴーデン・セター、ビーグル、ポインターの子犬で多く見られます。同じ母親から生まれた兄弟犬が揃って発症することもあります。

蜂窩織炎の症状

・口と眼の回り
口唇や眼瞼周囲に、水疱(水ぶくれ)・膿疱(水疱の内容物が粘性の強い膿)ができたり、浸出液(傷の表面から染み出てくる液体)が出て、茶~黒色の痂皮(浸出液が乾いたもの)が付着します。また、腫脹、脱毛がみられます。
・耳介(耳たぶ)、肛門、包皮(ペニスを覆う皮膚)
耳介も口唇や眼瞼周囲と同様に、腫脹し、浸出液、痂皮がみられます。肛門と包皮にも病変を認めることがあります。
・皮疹(肉眼的にわかる皮膚の発疹)
軽度~重度の皮疹で、痛みを伴うことが多いですが、痒くて掻くという行動はみられません。
・リンパ節
局所、または全身のリンパ節が顕著に腫大し、リンパ節が膿瘍化することもあります。
・全身状態の悪化
症状が重くなると、発熱し、元気・食欲がなくなります。

蜂窩織炎の原因

蜂窩織炎を発症する原因は分かっていません。しかし、若齢で発症し、特定の犬種での発症が多いこと、また血縁関係も認められることから、遺伝的素因があると考えられています。そういった理由から、先天的疾患とも言えるかもしれません。

蜂窩織炎の診断

・病歴、臨床症状
犬の皮膚状態や、全身状態を含む病状の進行具合から、他の疾患を除外していきます。類症鑑別が必要な疾患としては、顎の膿皮症、毛包虫症、深在性膿皮症、皮膚糸状菌症、血管性浮腫、ジステンパー、落葉状天疱瘡、薬物アレルギーなどが挙げられます。飼い主さんができることとしては、ワンちゃんの元気・食欲の変化を見逃さないこと、皮膚状態をよく観察すること、そして些細な変化でもすぐに動物病院の診察を受けることです。犬の若年性蜂窩織炎は、初期では何の病気か判断がつかないこともよくあります。その為、獣医師によるこまめな経過観察が必要になるのです。

・細胞診
皮膚や耳道(耳の穴の奥)の滲出物を採取し、顕微鏡で観察します。白血球の仲間である好中球やマクロファージによる炎症像がみられます。二次感染、細菌、酵母菌感染を認めることもあります。
また、リンパ節に針を刺して(リンパ節吸引)、リンパ節の内部も顕微鏡で観察します。炎症像は認められますが、感染性の病原体は検出されません。

・皮膚の病理組織学
麻酔下において、蜂窩織炎が観察される皮膚を採取します(皮膚生検)。その皮膚病片を顕微鏡で観察することで、蜂窩織炎を確定できます(確定診断)。

・細菌培養
病変からの浸出液を培養します。通常は無菌性ですが、二次感染(抵抗力が弱まっているところに、別の病原体が重ねて感染すること)がある場合は細菌が検出できます。

蜂窩織炎の治療法

・洗浄
病変部の浸出液や、付着した痂皮をそのままにしておくと、皮膚が余計に荒れて、さらに二次感染の原因となります。無理のない範囲で、毎日温水で洗浄します。
・ステロイド
約1~4週間、高容量のステロイドを投与します。その後、時間をかけて漸減または休薬していきます。この時に急いで薬を止めてしまうと、再発する可能性がある為、注意が必要です。ステロイドを使用せずに自然治癒することもありますが、全身状態が悪くなることや、皮膚に病変が出た場所は後に瘢痕化(皮膚病片が綺麗に治らず、色素が沈着したり、ボコボコした痕になること)することから、積極的な治療が望ましいでしょう。
・免疫抑制剤
上記のステロイドと併用することがあります。ステロイドと同じく、犬の状態に合わせて、ゆっくりと薬の量を漸減、休薬していきます。

まとめ

犬の若年性蜂窩織炎は、発生頻度は高くありませんが、命に関わる病気です。飼い主様の多くは、まさか皮膚の病気で命を落とすなんて…と驚かれる方も多くいらっしゃいます。初期病変はよくある皮膚の炎症に見えても、侮らずに動物病院の診察を受けることが大切です。また、どんな病気でも言えることですが、おうちに子犬を迎える際は、あらかじめ犬種・血統の特性を知っておくことが、病気の早期発見・治療に繋がります。

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