できれば予防を!犬の精巣腫瘍について解説!
悪性のものでは腫瘍随伴症候群である高エストロジェン血症によって、命の危険もある腫瘍ですが、若い時期の去勢手術によって予防が可能です。
精巣腫瘍の発生リスクを考え、去勢手術を考えている飼い主の方への助けになればと思います。
精巣の腫瘍化によって左右精巣の大きさの異常や、ホルモンの過剰分泌のために体に悪影響を与えたりします。
人間でも度々発生する疾患ですが、犬での発生はどうなのでしょう。
そこで本記事では、犬の精巣腫瘍における好発犬種、症状、診断、治療、予後から予防まで解説していきます。
最後まで読んで頂き、犬の精巣腫瘍についての正しい理解を深めてほしいと思います。
犬の精巣腫瘍の好発犬種や好発年齢
すべての犬種で発生し、特に7歳以上で多発します。
また、成長につれて精巣が陰嚢に正常に下降せず、腹腔内や皮下に留まってしまう停留精巣の場合には、精巣腫瘍の発生が約9倍高くなるとの報告があります。
このことから、精巣腫瘍が発生しやすい犬種は停留精巣が発生しやすい犬種に繋がります。
犬の主な精巣腫瘍は発生由来細胞から、間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)、精上皮種(セミノーマ)、セルトリ細胞腫の3つに分類されます。
それぞれにおいて臨床的挙動や悪性度に差があります。
停留精巣(潜在精巣)とは
通常、精巣は胎生期から出生期に腹腔から陰嚢内に下降します。
犬の場合、性成熟を迎える生後6カ月齢を過ぎても、精巣が陰嚢内に入っていなければ停留精巣と判断します。
よくある停留精巣の位置は腹腔内の膀胱付近や、鼠径部(大腿部付け根付近)の皮下です。
停留精巣の発生率は0.8~9.8%で、プードル、ヨークシャーテリア、チワワ、ポメラニアン、ボクサーなどの犬種で多く発生すると言われています。
犬の精巣腫瘍の症状
一口に精巣腫瘍と言っても、腫瘍の種類によってそれぞれ症状が異なります。
・間質細胞腫
多くは通常、触診できないほど小さく、臨床徴候を示さない場合が多いです。
転移することも稀で、発見することが困難な腫瘍です。
・精上皮種
精巣が非常に大きくなり、通常より柔らかくなることが特徴です。
片側性に発生することが多く、通常は良性で一般的には臨床症状を伴いません。
しかし腫瘍内に出血が生じると精巣は急激に腫大し、痛みを伴って歩行困難が現れます。
・セルトリ細胞腫
セルトリ細胞腫は、女性ホルモンであるエストロジェンを過剰に分泌します。
これによって体が雌性化し、精巣の萎縮や雌性化乳房が認められます。
さらに、エストロジェンによって皮膚の色素沈着や対称性脱毛が生じます。
また慢性症例では、高エストロジェンによる骨髄抑制も起こります。
この場合、赤血球、白血球、血小板のすべてが減少し、貧血や易感染性、敗血症を引き起こします。
中でも再生不良性貧血は放置すると命に関わります。
腹腔内に停留したセルトリ細胞腫の10~20%がリンパ節、肝臓、肺などの臓器に転移することがあります。
犬の精巣腫瘍の診断
複数の検査を組み合わせて診断を行います。
・身体検査
触診によって精巣の腫大を確認します。
しかし間質細胞腫など、精巣が明らかに腫大していない場合は触診では判断できないことが多く、検出は困難となります。
また、皮膚の色素沈着や対称性脱毛の有無が診断の助けになることもあります。
・画像検査
超音波検査にて精巣の腫瘤病変を検出します。
この検査においても、精巣に大きな変化を示さない間質細胞腫の検出は困難なことが多いです。
また超音波検査では、精巣の腫瘍化まで判断はできません。
大きさに変化がある、形態がいびつなどの腫瘤病変の有無を確認し、腫瘍かどうかは細胞診などで判断します。
・血液検査
血液中のエストロジェン濃度を測定することによって精巣腫瘍、特にセルトリ細胞腫の診断の助けになります。
さらに貧血や、白血球、血小板の減少を検出することで骨髄抑制の状態を評価します。
・病理組織学的検査
最終的な確定診断のために、外科手術によって摘出した精巣を検査に用います。
今後の予後や、さらなる追加治療の必要性を評価します。
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