猫の毛球症について 原因と対策法
毛球症とは
猫ちゃんは、グルーミングがとても好きな生き物です。舌を使って日々身体を綺麗になめて清潔に保とうとします。そのグルーミングに用いられる猫ちゃんの舌は、人とは異なりザラザラとしたヤスリのような形状をしています。これは、猫の舌にある糸状乳頭という部分が関わっており、この部分がグルーミングの際にクシのような役割をして被毛を綺麗に保っていると言われています。
グルーミングを行っているとその毛の一部は飲み込まれて、胃の中に進んでしまいます。そして、飲み込まれた毛は、一部は便とともにお尻から出ますが、胃に溜まったものは嘔吐して排出されます。これは、猫ちゃんにとって生理的な行動です。
しかし、毛玉をうまく排出できず毛玉が大きくなっていくと、慢性的に胃に刺激を与えて、嘔吐が頻回続くことがあります。また、大きい毛玉が胃から先の腸管に進んでしまうと、時に腸閉塞を起こしてしまい緊急性の高い状態に陥ってしまうこともあります。このように毛が消化管内で毛玉を形成し、様々な症状が出ることを毛球症と呼びます。
毛球症になりやすい猫ちゃんの特徴
毛球症になりやすい猫ちゃんの特徴は、下記のものがあげられます。
① 長毛種の猫ちゃん
ペルシャ、ノルウェージャン・フォレスト・キャットやメインクーンなどの長毛種の猫ちゃんたちは、毛が長く、毛量もあるため必然的にグルーミングの際に飲み込んでしまう毛量も多くなり、毛球症になりやすい傾向にあります。反対に毛が短い短毛種の猫ちゃんたちは毛球症にならないというわけではないですが発生率は低いです。
② 皮膚疾患のある猫ちゃん
アレルギー性皮膚炎を持っている猫ちゃんなどの皮膚疾患を持っている猫ちゃんは、痒みによって皮膚をなめる回数が増えてしまい、毛を多く飲み込んでしまうことになります。
③ 神経質な猫ちゃん
猫ちゃんはグルーミングすることで、脳の精神安定剤として働くセロトニンを分泌させる作用があるとされています。そのため、神経質で臆病な猫ちゃんでは、ストレスのかかる状態に陥ると過剰なグルーミングをしてしまうことがあります。
時に毛がなくなって、皮膚に傷害を起こしてもなめ続ける子もいます。そのような猫ちゃんでは、グルーミングによって毛を飲み込んでしまい、二次的に毛球症になっていまいます。
④ 消化器疾患のある猫ちゃん
胃腸に炎症や、腫瘍、運動機能障害を起こす疾患のある猫ちゃんでは、毛の排出がうまくいかないため毛球症を併発してしまう場合があります。
毛球症の症状
毛球症の症状としては以下のものがあげられます。
・嘔吐
・下痢
・便秘
・食欲不振
などです。特に腸閉塞を起こしてしまった場合には、頻回の嘔吐や食欲がまったくなくなってしまう場合もあるため注意が必要です。また、猫ちゃんは嘔吐をすることで食道に炎症が起こり、二次的に食道炎を起こし、強い嘔吐や嘔吐物に血が混じるなどの症状が出る場合もあります。
毛球症の診断
毛球症の診断は、問診、身体検査、レントゲン検査、超音波検査などを用います。
① 問診
嘔吐や下痢、食欲不振などの症状は、多くの消化器疾患で起こるためそれらからの鑑別が診断をする上では大切になります。まず、それらの症状がいつからで、その頻度や程度、嘔吐の内容や便の内容などについて詳しく伺います。そして、本人の性格、生活環境や食事の変化、異物癖の有無、グルーミングの程度、ご自宅でのブラッシングの頻度などの毛球症の発生を疑う可能性についても同時に伺い、可能性を検討します。
② 身体検査
身体検査では、被毛の状態、脱毛や皮膚炎の有無などの外見的な変化を注意深く観察します。皮膚に異常が見られる場合は、その検査を合わせて検討します。
③ レントゲン検査
レントゲン検査では、毛球の有無を確認することは困難ですが、腸が毛球によって詰まっていないかの確認を行うことができます。また、同時にバリウムなどの造影剤を用いた造影検査を行うことでより詳しく腸の動きや閉塞の有無の確認、時に毛球が確認することができる場合もあります。
④ 超音波検査
超音波検査によって、消化管内の毛球を確認できる場合があります。また、同時にその他の消化器疾患についても同時に検討します。
毛球症の治療
毛球症の治療には、外科治療と内服治療、基礎疾患の治療があります。
① 内服治療
毛球症に対する飲み薬としての治療としては、流動パラフィンやワセリンを飲ませます。そうすることで毛球が排出されやすくなり、治療効果を示します。他には、胃腸運動促進剤などを用いて排出を助けることができます。
② 外科治療
内服での治療に反応しない場合や、閉塞などで緊急性が高い場合は、全身麻酔をかけての外科的な治療を選択します。胃内に毛球がある場合は、内視鏡のある施設では内視鏡によって摘出することができるかもしれません。また、毛球の大きさが大きい場合や内視鏡のない施設などでは、直接胃を切開することで毛球を摘出します。また、胃より先の小腸で閉塞してしまっている場合では、多くの場合直接腸管を切開して摘出します。
③ 基礎疾患の治療
上記の治療によって毛球症が改善できるかもしれませんが、同時に皮膚や心因性、消化器などの疾患がある場合は、それらの治療を同時に行わなければ再発を繰り返してしまうので、それらの診断と治療も行います。
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