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猫の心因性脱毛について 原因と対策法

獣医師
高橋 渉
[記事公開日]  [最終更新日]
猫に多い心因性脱毛についての原因、診断、治療、予防について詳しく解説いたします。
[ 目次 ]
猫の心因性脱毛について 原因と対策法
うちの猫ちゃん最近ずいぶんと熱心にグルーミングしていると思ったら毛がなくなってしまっているということありませんか。もしかするとその脱毛は、心因性脱毛かもしれません。今回猫ちゃんに多い心因性脱毛について解説いたします。心因性脱毛について学び、猫ちゃんにとってより快適な生活を目指しましょう

心因性脱毛とは

猫ちゃんを観察しているとよく自身の身体をペロペロと舐めているのが見られると思います。これをグルーミングと言い、①皮膚と被毛を清潔に保つ、②体温調節、③皮膚についた嫌な臭いの排除、④ストレス解消などの効果があると言われています。

猫ちゃんの舌にはザラザラとした糸状乳頭という部位があり、この部位はクシのような役割を担っており、無駄な被毛を除去することができます。また、猫ちゃんはグルーミングを行うことで脳に精神安定の効果をもたらすことがわかっています。そのため、猫同士でもお互いを舐めあうことでリラックスしあい、良いコミュニケーションの手段としても行われています。

しかし、猫ちゃんの中にはストレスがかかった状態になるとこのグルーミングがやめられず、被毛が脱毛してもなめ続けてしまう子がいます。これを心因性脱毛といいます。主に手足やお腹の下腹部などに多く起こります。

心因性脱毛の原因と起こしやすい猫ちゃんの特徴

心因性脱毛は、猫ちゃんの皮膚炎の原因のうち5%程度とされています。この病気になりやすい猫ちゃんの特徴としては、神経質な性質の子でかつ家の中に多くの猫ちゃんを飼っているご家庭に多いと言われています。発症は、主に若い子から大人の猫ちゃんで、年を取った子には少ないとされています。

猫ちゃんにとってのストレスのきっかけになりやすいものとしては、例えば下記のものがあげられます
・家族構成の変化(新しく猫ちゃんを迎え入れる、子供が生まれる、家族が家から離れるなど)
・引っ越しや部屋の模様替え
・頻繁な人の出入り
・騒音や異臭
・トイレの変更(猫砂の種類、トイレの形状、数、位置など)
があげられます。人にとっては何気ない変化でも猫ちゃんにとっては大きな変化であり、ストレスになりえるので注意が必要です。

心因性脱毛の症状

心因性脱毛の症状としては、下記のものがあげられます。
・薄毛
・脱毛
・皮膚炎による痒み
などです。薄毛、脱毛と進行してもなめ続けてしまうと、皮膚に赤みや腫れを起こし痒みが出ます。

猫ちゃんは、舐めることでその部位からエンドルフィンという脳内麻薬が分泌され痛みが緩和されるため、皮膚が傷害されてもなめ続け、さらにひどくなると皮膚がやぶけて筋肉や骨が露出したりしても舐め続けてしまう子もいます。そして、二次的な細菌感染が起こり、全身的な状態の悪化につながる場合もあります

心因性脱毛の診断

猫の心因性脱毛の診断で大切なことは、除外診断となります。除外診断とは、獣医が考える可能性のある疾患を検査して除外し、そして、それらの可能性のうち心因性脱毛が残った場合、そうであると仮に診断し治療します。なぜなら、猫ちゃんの気持ちやストレスの程度を推し量る検査はないため、心因性脱毛であると確定することが困難であるためです。行う検査としては、下記のものがあげられます。

① 問診
まずは、舐め始めた時期、きっかけ、症状のある部位、ノミダニの予防の有無などを細かく伺います。特に上記のようなストレスの原因になりうることはないかなどについて詳しく聞くことで、他の皮膚疾患の可能性とともに心因性の可能性についても検討します。

② 身体検査
身体検査を行い、皮膚の症状について詳しく確認します。心因性の脱毛は基本的には、手足やお腹などの舐めやすい部位に起こります。そのため、物理的に舐めることが困難な部位では心因性の可能性が下がります。また、ノミダニ等の虫がついていないかを詳しく確認します。

③ 皮膚検査
皮膚の検査として、毛検査や細菌、真菌などに関する感染に関する検査、ときに病理検査という皮膚そのものを一部切除して行う検査も検討します。

④ その他の検査
その他の検査として、お腹の中や皮膚の下にストレスの元となる痛みや不快感のある可能性を検討し、レントゲン検査や超音波検査などその他の様々な検査を行う場合もあります。お腹を舐めている原因が実は膀胱炎だった…ということもあったりします。また、食物アレルギーの可能性を考慮しアレルギー対策用の食事への変更を検討します。

心因性脱毛の治療

心因性脱毛の治療は、下記のものがあげられます。

① ストレスの原因の排除
まずストレスの原因の排除が大切になります。ストレスの元となるものがわかればその原因を排除します。トイレや食事、来客の有無、コミュニケーションの時間の長さなどご家族がコントロールできることがあれば積極的に取り組み改善しましょう。

② ストレスの解消
ストレスの元がどうしても排除できないことであれば、猫ちゃんがストレスを解消できるような対策を講じましょう。例えば、キャットタワーや隠れられる場所の設置、新しい遊び道具を試してみる、触れ合う時間、遊び時間を増やすなどです。日中遊んであげることができない場合には、例えば少量ずつ食事を入れたお皿を家の複数個所に設置し、家の中を食事を求めて歩き回るような猫の探求心を刺激するような遊びをしてみるのもいいでしょう。

③ 舐めないようにする
上記の対策を行っても治療には時間がかかることが多いです。その間脱毛した部位が悪化していく可能性が高いため、舐めないようにしなければなりません。その方法としては、エリザベスカラーをつけたり、服を着せてあげたりします。猫ちゃんに合わせて舐めないような方法を獣医と考えてあげましょう。

④ 内科治療
上記の対策以外に同時に行うのが内科治療です。内科治療は、抗うつ薬の処方や、気持ちが落ち着く作用のあるサプリメントの追加やそれを含む食事への変更です。また、フェリウェイという猫ちゃんがリラックスする作用があるフェロモン製剤の使用などを検討します。どのような治療を行うかは獣医師と相談し、家庭の環境や猫ちゃんの治療への反応を見ながら検討します。

心因性脱毛の予防

心因性脱毛の予防としては、何より環境の変化に気を配ることです。猫ちゃんによってストレスを感じることは様々です。よくご自宅の猫ちゃんを日々観察し、グルーミングの行動に変化があればストレスになってないかを考えてあげましょう。

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