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犬の常同行動や不眠症、元気・食欲低下について

獣医師
若林薫
[記事公開日]  [最終更新日]
 犬におけるストレス性の疾病や体調変化として、常同行動や不眠症、元気・食欲低下などがあります。これらの問題行動について解説していきます。
[ 目次 ]
犬の常同行動や不眠症、元気・食欲低下について
 私達、人間の世の中はストレス社会と言われ、ストレスによって体調を崩す、また病気になってしまう人も少なくありません。それでは、犬はストレスで体調を崩してしまうことはあるのでしょうか?ストレス性の問題行動である常同行動や不眠症、元気・食欲低下について分かりやすく解説していきます。

犬とストレス

犬がストレスを感じたときの行動
 犬のストレスサインとして代表的なものに、何度も繰り返すあくび、吠え・震え、長期間のパンティング(舌を出して荒く呼吸をすること)などがあります。ストレスの強度によっては、皮膚が荒れるまで手足を舐め続けるなどの常同行動をみせることがあります。これは犬の強迫性障害と呼ばれる精神疾患です。

犬がストレスを感じるもの
 犬は感情に富み、嗅覚・聴覚などが鋭敏な動物です。そのため、様々な外部刺激がストレスになります。犬の問題行動に関する研究によると、犬が最も不安を感じるものは騒音であり、次に不安を感じるものは恐怖心である。この恐怖心は他の犬、知らない人間、新しい環境に向けられると述べられています。また、分離不安を抱える犬が増加していることからも、飼い主さんの不在などもこれらの恐怖要因に加えて大きなストレス源であると考えることが出来ます。

犬の常同行動や不眠症、元気・食欲低下について

犬の常同行動

犬の強迫性障害(Canine compulsive disorder / CCD)
 長期間のストレスなどが原因になりCCDは引き起こされると示唆されています。反復した行動を続ける特徴があります。自分の尻尾を追いかけてくるくる回る、手足をかじり続けるなどの症状がみられます。症状が悪化すると自傷するまで反復行動をしてしまう場合があり、また放置するとその行動が強化されてしまうため、早期の治療が必要な病気と言えます。

犬の不眠症

痴呆による不眠症
 犬の不眠症の大きな原因の一つに痴呆症があります。犬の痴呆症は高齢の柴犬や日本犬に多いとされる病気であり、人間の痴呆症の原因と同じように脳血管障害型とパーキンソン型に分かれています(厳密には種差があります)。痴呆症における症状の分類にDISHAの5徴候と呼ばれるものがありますが、このなかのSはSLEEPの頭文字であり、不眠症を表します。痴呆による不眠症では昼夜が逆転してしまう、夜寝つかない、といった不眠の症状だけではなく、痴呆症による夜間の問題行動が併せて起こります。例えば、夜の間中、吠え続ける、歩き続けるなどの行動がみられます。犬の痴呆症は「犬の痴呆症診断基準100点法」と呼ばれる簡易的なチェックを行うことができます。チェックシートを持参して動物病院を受診するといいでしょう。

その他の原因による不眠症(痛みなどの刺激によるもの/ストレスが原因のもの)
 痴呆症のように器質的な要因ではない不眠症も起こります。例えば、痛みやかゆみなどの刺激によって眠りたいのに眠れない場合があります。ミミヒゼンダニの寄生による強い耳の痒さは日常生活に支障をきたします。また癌性疼痛や術後疼痛のようなひどい痛みも同様に睡眠を妨げる場合があります。一方、人における一般的な不眠症のようにストレスが原因の不眠症もあると言われています。犬における心因性の不眠症の研究はまだ十分に進んでいるとは言えませんが、いくつかの実験動物を使用した研究では、ストレスは不眠を引き起こすと述べられています。

犬の常同行動や不眠症、元気・食欲低下について

犬の元気・食欲低下

 犬の元気・食欲低下は風邪や下痢のようなありふれた病気から、腫瘍性疾患や内分泌疾患のような慎重な治療が必要な病気まで、あらゆる体調不良で起こりうる症状です。同様に元気・食欲低下は心因性のストレスでもみられます。犬はストレスを受けるとホルモンバランスが乱れ、唾液や尿成分にストレス性の変化がみられるといくつかの論文で示唆されています。この変化の中にはコルチゾールと呼ばれるステロイドホルモンの変化が含まれています。ステロイドホルモンは少量で大きな生理的作用を持つため、分泌量の乱れが元気や食欲などの健康状態に影響をもたらすことが予想されます。また、ストレス下の犬における大腸潰瘍の発生や、ストレス下の実験動物の食欲低下などもいくつかの論文で支持されています。

さいごに

 犬における心理的なストレスといくつかの疾病・体調不良は関係があると言えます。工事の騒音や新しい環境において犬が体調を崩してしまったときは、動物病院を受診しましょう。ストレス性の問題に対する治療は、内科的療法とともに、行動療法を含むストレス源に対する対応が必要になります。かかりつけ医と相談の上、専門科のある病院に通うことも視野にいれておくといいかもしれません。

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