猫のひげって何のためにあるの
猫のひげの種類
猫の全身に生えているひげの総数がどのくらいあるか、ご存知でしょうか。猫のひげは、主に顔に生えていますが、前脚の内側にも生えていて、合計すると50〜60本にもなると言われています。
顔の部分に生えているひげの種類は5種類です。
<上毛>
目の上に生えているひげで、片方約6本あります。
<上唇毛>
いわゆる猫のひげで、片方に約16本あり、毛穴は4段で上2段と下2段を別々に動かすことができます。
<口角毛>
正面から見ると上唇毛の上側と同じくらいの高さですが、顔の少し奥の方に1〜2本生えています。
<頬骨毛>
口角毛の少し上側で、さらに少し奥の方に2本程度生えています。生えていない猫もいますので、なくても心配する必要はありません。
<下唇毛>
顎の下に生えている短いひげです。
猫のひげの構造
ひげは、通常の被毛よりも2倍程度太く、通常の被毛の3倍程度深いところまで埋まっています。そしてひげの根元には敏感なセンサーが豊富にあり、ひげの根元の環状洞という部分には血液が満ちています。ひげが何かに接触したり、キャッチした空気のほんのわずかな振動も、環状洞の血液が倍増して周辺に分布している知覚神経に伝えます。そして、その信号が脳まで伝えられます。
そのため、ひげはとても繊細で鋭敏な触覚器で、猫にとってなくてはならないとても重要な役割を担っています。
猫のひげの役割
猫のひげの主な役割について紹介しましょう。
<視力を補う触覚器>
猫の視力は人の1/10程度しかありません。しかも、薄明薄暮性のため、わずかな光しかない薄暗い場所で狩りを行なう必要があります。ひげによる鋭敏な触覚が弱い視力を補って平衡感覚を維持し、薄暗いところでも狩りをすることを可能にしています。また、微妙な空気の流れで獲物の位置や距離などの情報も収集します。
<距離の測定>
顔にあるひげを広げることで、猫は自分が通れる場所かどうかを確認します。広げたひげが何にもぶつからなければ、通れると判断して猫はその狭い場所にも入っていきます。
<獲物の状態確認>
猫は、口に咥えた獲物をひげで覆うようにして獲物の状態を確認します。生死を判断し、まだ生きている場合は急所の位置を正確に察知して一撃で仕留めます。前脚のひげも、前脚で抱え込んだ獲物の状態を察知する役割があると考えられています。
<目を守る>
猫のひげは、反射弓という神経経路でまぶたと繋がっています。そのため、顔の近くに刺激を感じると、素早くまぶたを閉じることで目を守ります。
<湿度を察知>
湿度が上がると猫のひげは水分を吸い、張りがなくなってひげの機能が低下します。猫はそれを防止するために顔を洗うようにしてひげを整えます。その様子から、猫が顔を洗うと雨が降ると言われるようになったようです。つまり、ひげは湿度も察知しているということです。ただし、ひげは温度を感じることはできません。そのため、ストーブに近づきすぎてひげがちりぢりになっても猫が気づかずにいる場合がありますので、飼い主さんが注意してあげましょう。
猫の感情が表れるひげ
猫の感情や気分によって口元の力の入り方が変わり、それがひげの動きとなって猫の感情を読み取ることができます。
<ひげがだらんとしている>
ひげは被毛の2倍の太さがあるため、重みがあります。そのため、口元に力が入っていない場合はだらんとしてやや下に垂れた状態になります。この状態の時は、猫がリラックスしていると考えて良いでしょう。
<ひげが上向き>
ひげが10時10分の時計の針のように上を向いてピンと立っている時は、嬉しかったりちょっとテンションが高めだったりという、絶好調な時です。
<ひげがピタッと頬に張り付いている>
攻撃されそうだったり、逆に自分が攻撃しようとしている時は、口元に力が入るためひげが張って頬に沿うように反り返ります。こういう時の猫は、恐怖を感じていたり緊張している時ですので、あまり刺激をしないようにしましょう。なお、寝ている時や餌を食べるときにもひげが頬に沿った状態になります。
<ひげが前方を向いている>
猫は、ひげでいろいろな情報を得ようとします。そのため、何か興味を惹かれるものがある場合、ひげをその方向に向けて情報を収集しようとします。ひげが前方に向いている場合は、その方向に何か興味を惹かれるものがある時です。
猫のひげにまつわる雑学
猫のひげは半年に1度程度のペースで生え変わります。そのため、まれに落ちている猫のひげをみつけることがあるかもしれません。1〜2本のひげが抜けている場合は、特別心配する必要はありません。通常は新しいひげが生えてから古いひげが抜けますので、ちょっとひげがわしゃわしゃしてきたなと感じられたら、そろそろ生え変わりの時期かもしれません。
しかし、あまりにもたくさんのひげが抜けるような場合は、ストレスや病気かもしれませんので、注意しましょう。
なお、抜けた猫のひげは縁起物だと言われています。日本では金運がアップするお守り、ヨーロッパでは恋のお守りとして大切にされています。実際に、猫のひげを保管するためのケースや飾るためのスタンドなどが商品化され、市販されています。ただし、あくまでも縁起物とされているのは「自然に抜け落ちたひげ」のみです。無理やり猫のひげを抜いたり切ったりしてはいけません。
猫の抜け落ちたひげをみつけたら
人間の場合は、ファッションのためにひげを伸ばしたり、逆にきれいに剃ったりします。が、猫にとって、ひげは生活するためにとても重要な役割を果たしている感覚器官の一つです。病気の治療などで必要な場合を除き、決して抜いたり切ったりしてはいけません。
ひげがなくなってしまった猫は、平衡感覚を保てなくなり、ふらついたり物にぶつかりやすくなったりと、実際の行動に支障をきたします。また、猫自身も強い不安を感じるため、うつ状態になってしまう場合もあります。
ただし、自然に抜け落ちたひげは、古くから縁起物とされていますので、お財布に入れるなどして、大切にすると金運がアップするかもしれません。それで貯まったお金は、愛猫のために上手に使ってあげましょう。
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