猫と一緒に暮らすなら知っておきたい猫の特性
野生の習性が色濃く残る猫との暮らし
猫と人の歴史は長いですが、猫は決して人に依存する事なく、餌となるネズミを狩って食べながら人と共存してきました。そのため、猫は伴侶動物でありながらも、元来の野生の習性を色濃く残したまま現在に至っています。
そんな猫たちを人間社会の中に招き入れ、一緒に暮らしていくためには、人の方からより積極的に猫の特性を理解して歩み寄っていく必要があります。もちろん、猫たちも彼らのできる範囲内で最大限人間側に歩み寄ってくれています。私たちも猫の特性を理解し、共に快適に暮らしていけるように、知恵と工夫を絞りたいものです。
気まぐれな性格には理由がある
同一種の動物が、集団を作って生活することを群棲と言います。犬の祖先のオオカミは群棲する動物でしたが、猫の祖先のリビアヤマネコは群棲せず、それぞれが単独で暮らしていました。そのため、猫は仲間同士で協力することもありますが、基本的には単独での生活が主となります。
そのため、群の仲間との協調性やリーダーに従うといったことは必要ありませんでした。それは、現在の猫にも残されている特性の1つです。猫は他者に頼ることなく、なんでも自分で決めて、自分の意思で行動します。それが、私たちには自由気ままで気まぐれな性格に見えているのです。
猫は狩りも単独で行いますので、獲物はどうしてもネズミや鳥などの小動物になります。そのため、一度に食べられるだけ食べてしまおうという犬のような食べ方ではなく、少量ずつ1日に複数回の食事を行うのが、猫の一般的な食べ方です。朝お皿に1日分のドライフードを入れておけば、猫はそれを1日かけて少しずつ食べていきます。ただしウェットフードはすぐに傷むので、食べ残した場合は直ぐに下げるように習慣づけましょう。
驚異の繁殖力
猫は、極めて繁殖力の高い動物です。1回の出産で4〜8頭の子猫を産み、かつ1年に2〜4回も出産することが可能です。そのため、未去勢・未避妊のまま猫を多頭飼いしてしまうと、あっという間に猫で溢れかえってしまうことになり、それがそのまま多頭飼育崩壊へとつながります。繁殖目的でない場合は、去勢・避妊手術をすることが猫たちにとっても最善の手段だと考えられています。
また、去勢・避妊手術をすることで乳腺腫瘍や子宮の病気を予防することも大きなメリットの一つです。
ただし、去勢・避妊手術を行うことで、猫の行動が穏やかになり、繁殖のためのエネルギーを使わなくなります。その分、肥満になりやすくなるので、猫の様子を観察しながら食事量を適量に抑えることが必要です。
生まれながらの名ハンター
猫は生まれながらにして非常に優れたハンターです。人と一緒に暮らしてからも、食事を人に依存せずに自力で獲物を捕まえて食べていたのです。そのため、自分で狩りをする必要のなくなった今でも、猫にはとても高い狩猟本能が備わっています。動くもの、逃げるものを見つけると、体が反射的に獲物を捕まえようとします。それはそのまま、狩猟欲求となって残りました。
つまり、生きていくために狩りをする必要がないにも関わらず、猫たちは「狩りをしたい」という欲求を抱えているのです。飼い主さんは猫じゃらしのようなおもちゃを使って、毎日必ず猫と一緒に擬似的な狩り遊びを行いましょう。
できれば、狩り遊びをしておもちゃの獲物を捕まえさせた後に食事をさせると良いでしょう。猫は必要な運動をし、狩りに成功したという満足感と共にお腹を満たすことになるからです。
昼間、しっかりとこの狩り遊びをさせることで、猫が夜明けに突然家中を走り回るというようなこともなくなるでしょう。
猫にとって縄張りは命
前述の通り、猫はとても優秀なハンターであると同時に、自らも捕食される立場にあります。そのため、自分よりも強くて大きい敵から身を守る必要がありました。そこで、猫は縄張りを作り、常に見張りを怠りません。油断すれば、そのまま自分の命を落とすことになるからです。
今も猫たちは、縄張りを作りそれを守ることに必死です。猫は、自分の縄張りを主張するためにマーキングを行なって縄張りに自分のにおいをつけて回ります。頭やしっぽを擦り付けたり、爪とぎをしたり、また未去勢のオスがフェロモンの混ざったおしっこを霧状に噴霧するスプレーなどがマーキング行動です。
猫が飼い主さんの足に頭や体を擦り付けたり、しっぽを巻き付けたりするのもマーキングです。飼い主さんに付いた外のにおいを消して、自分のにおいに付け替えているのです。
また猫は優れたジャンプ力を有しており、木の上などの高い所に上って縄張り全体を見張ります。そのため、人と一緒に暮らす猫たちにも、自由に上り下りでき、室内を一望できる高い場所を明け渡す必要があります。戸棚や冷蔵庫の上などを開放できない場合は、キャットタワーなどを設置してあげましょう。
群棲しない猫は、基本的には多頭飼いには向きません。それでも多頭飼いをする場合には、同居猫との相性も重要ですが、何より縄張りをうまく棲み分けさせることが大切です。狭い部屋であっても、上下の空間も含めて上手に縄張りを棲み分けさせる工夫を行いましょう。
しつけるより誘導する
猫と一緒に暮らしていて、最も困る行動の1つが爪とぎでしょう。大切な家具や壁紙などがボロボロになります。しかし、爪とぎは古くなった爪をはがすためとマーキング、そして気持ちを落ち着かせるためといった理由で行う行為なので、やめさせることはできません。
一番の解決策は、大切な家具は猫がさわれないように隔離することです。しかし家中の壁やふすまを触らせないようにはできませんので、猫に爪を研いでも良い場所を提供し、そこを使うように誘導します。
ご褒美は「おやつ」、そして罰は「無視」や「不快な思い」です。風を吹きかけるとか霧吹きで水を掛けるといったことが、罰になります。かまって欲しがっているときの「無視」も罰になります。タイミングは対象となる行為をした直後でなければ意味がありません。
日頃の生活環境や飼い主さんの行動によって、猫が人の生活の中でも安全で快適に過ごせるようにするのが、飼い主さんの腕の見せ所です。
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