犬の乳腺腫瘍って何?正しい知識で対応しましょう!
腫瘍という病気の性質上、他の臓器に転移することもあり、時には命に関わることもあります。
しかし一方で、きちんと処置をしておけば予防が可能な腫瘍疾患でもあります。
本記事では犬の乳腺腫瘍について解説していきます。
腫瘍、がんと聞いて身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。
不安に感じてしまうのは、犬の乳腺腫瘍に対してどんなものか、症状や治療は何かというような知識が浸透していないからではないかと思います。
そこで本記事では、犬の乳腺腫瘍の症状、診断、治療、予防から予後まで詳しく解説していきます。
犬の乳腺腫瘍についての理解を深めることで、病気になる犬が少しでも減ればと思っています。
乳腺腫瘍とは
乳腺腫瘍は、乳頭の周囲にある乳腺に腫瘍が出来る疾患です。
犬には一般的に左右5対の乳頭が存在します。
犬の乳腺腫瘍の発生率は全腫瘍中の42~52%を占め、最も多発する腫瘍だと言われています。
また、犬の乳腺腫瘍における良性と悪性の割合は半々であるとも言われています。
乳腺腫瘍の好発犬種
犬の乳腺腫瘍は純血種の小型犬、特にヨークシャーテリア、マルチーズ、シーズー、プードルに発生が多いという報告があります。
しかしこれはあくまでデータですので、全ての犬種に発生する可能性があると考えていいでしょう。
また乳腺腫瘍という言葉のイメージから、雌のみに発生すると考えている方もいるかもしれませんが、それは間違いです。
わずかにですが雄でも発生することがあり、これはヒトの乳がんと同様です。
犬の乳腺腫瘍の原因
犬の乳腺腫瘍の発生には性ホルモンが関与していると考えられています。
これは、早期の避妊手術によって乳腺腫瘍の発生率が優位に低下することからもわかります。
また良性と悪性を決める因子として、性ホルモンレセプターの数が関与していると言われています。
犬の乳腺腫瘍の症状
腫瘍による全身症状はなく、臨床徴候は局所的です。
主なものには、乳腺周囲のしこりがあります。
「おや?」と思うくらいの非常に小さいものから、比較的大きいものまで大きさは様々です。
また腫瘍周囲の疼痛、潰瘍形成、腫脹を呈することもあります。
さらに乳腺腫瘍の肺転移によって、呼吸器症状(咳、呼吸困難など)を呈することもあります。
犬の乳腺腫瘍の診断
乳腺付近にしこりが発見されたからと言って、すぐに乳腺腫瘍と診断することは出来ません。
また良性か悪性かを判断するためにも、いくつかの検査法が併用されます。
・問診
性別の確認および避妊の確認は非常に重要です。
このとき、避妊手術の実施時期についても聴取します。
・一般身体検査
触診にて、左右5対ある乳腺周囲のしこりを確認します。
特に一番尾側の乳腺に、腫瘍が発生しやすい傾向があります。
また同じようにしこりを作る疾患に肥満細胞腫があります。
これは強く触るとヒスタミンによるアレルギー反応などを引き起こすため、しこりをむやみに触ることはおすすめしません。
しこりが確認出来たら大きさと個数を測定し、日数の経過によってどのくらいのスピードで大きくなっていくかを確認していきます。
・血液検査
乳腺腫瘍に特有の所見はありませんが、高カルシウム血症や低血糖が見られる場合があります。
・画像検査
リンパ節や肺への転移の有無を確認します。
最終的な治療のために外科手術をする場合、特に肺への転移の有無は麻酔リスクを判定する上で重要となります。
・細胞診
しこりに針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で観察します。
これによって、乳房炎、肥満細胞腫、脂肪種、乳腺過形成の鑑別を行います。
しかし細胞診による細胞の判断には技術が必要であり、困難なことも多くあります。
・病理組織学的検査
最終的な確定診断には、切除生検が必要です。
これによって悪性度も評価が可能です。
今後の予後の判定のためにも必ず行いたい検査です。
犬の乳腺腫瘍の治療
犬の乳腺腫瘍の治療の第一選択は外科手術です。
術式には、しこりのある乳房を局所的に切除する方式や、患部を含めた左右の片側の乳房をすべて切除する方式などがあります。
また同時に避妊手術を行うことで再発のリスクを下げる場合もあります。
ヒトでは乳がんでは化学療法や放射線療法などが併用されたりもしますが、犬でのこれら治療法の有効性は確認されていません。
このことからも、犬の乳腺腫瘍の治療は内科療法よりも外科療法が一般的と言えます。
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