犬の皮膚糸状菌症にはご注意を。人にもうつってしまうかも?!
そのうちのひとつである、犬の皮膚糸状菌症は一度感染すると治りづらく、また人にも感染する可能性があるため、小さいお子さんやお年寄り、病気治療中の方がいるおうちでは特に注意が必要です。
愛犬のためにも、ご家族みんなのためにもぜひ知っておいてください。
犬の皮膚糸状菌症ってどんな病気?
真菌とは、酵母(イースト菌等)、カビ(青カビ、コウジカビ)、キノコをまとめた総称です。
食品に用いられるような無害で役に立つものと、健康に害を及ぼすような有害なものがあり、有害真菌による病気を皮膚真菌症といいます。
真菌の胞子はありふれたもので、空気中、土中のあらゆる所に存在しています。
健康な人や動物は十分な抵抗力を持っているため、真菌があっても普通は感染しません。
しかし極端に不潔な状態だったり、病気などで抵抗力が落ちていると、感染が成立してしまうことがあります。
皮膚真菌症では皮膚糸状菌症、マラセチア症、スポロトリックス症、カンジダ症などがありますが、人と動物に共通する感染症で問題になる真菌症の代表は皮膚糸状菌症です。
皮膚糸状菌はおよそ20種類近くが報告されていますが、特に多いのはその中の2~3種類です。人の場合では「水虫」「爪水虫」の原因としてもよく知られています。
実際犬の皮膚病の中ではあまり多くはありませんが、全身に毛があり痒みが少ないため見逃されることも多い病気です。
皮膚糸状菌症って何が原因なの?
上記でご説明したように、真菌じたいはありふれたものであり、その胞子もあちこちに存在しています。しかし強い感染力があるわけではないため、普通に飼われているペットちゃんが感染する機会は多くはありません。
糸状菌はケラチンという爪や角質、毛に感染するため、人では足のかかとや爪の水虫が有名です。ジムや銭湯などの足ふきマットが原因で感染してしまい、そのあと十分に洗い流せないことにより水虫になってしまうことが知られていますね。
しかし、犬ではほとんどが毛に付着するため感染するのは足だけには限りません。そのため、そもそもの皮膚バリア機能が未熟だったり衰えていたりする、子犬やシニア犬は感染しやすいのでより清潔に保つよう注意が必要です。
また、成犬であっても免疫力が低下する甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの代謝性疾患、ステロイド剤などの免疫抑制剤の長期大量投与などは、感染する可能性が高まります。
こういったリスクのある犬が、すでに皮膚糸状菌症である動物やその毛と濃厚接触することで感染してしまうことが考えられます。
皮膚糸状菌症ってどんな検査をするの?
皮膚糸状菌症と区別が必要な皮膚炎のひとつが膿皮症であり、これは細菌が主な原因でおこる皮膚炎です。しかし、わっかのように赤く皮膚がなる環状紅斑はどちらの皮膚炎にも比較的よくみられるため、症状からだけ鑑別することはできません。
他にも糸状菌症では、頭や脚の先端に粉を吹いたような細かいフケ状の皮膚の脱落や、短く切れてしまう毛などがよく見られます。それらを踏まえしっかりと区別するため、さまざまな方法で糸状菌を検出する検査を行います。
・抜毛検査:症状の出ている皮膚の周りから、毛やフケを採り、顕微鏡でケラチン部位に糸状菌が存在していないか確認します。
・ウッド灯検査: 真菌感染があるとその部分が蛍光色に光って見える、特殊な波長の光を出すことのできるウッド灯で照らし、真菌感染があるかを調べます。
・培養検査:皮膚糸状菌の原因菌を見分けるために行ないます。採取した皮膚や毛を特別な培地に入れ、一定時間決められた環境においてその変化を確認します。
・パンチ生検:皮膚の病変部を数mmサイズで採取し、皮膚科の専門医または病理医に評価を依頼します。全身麻酔が必要なことがあります。
皮膚真菌症ってどんな治療をするの?
皮膚糸状菌症は一度かかってしまうと簡単に治ることはなく、根気強く治療する必要があります。
飲み薬:抗真菌薬を飲むと毛の根本である毛根部に効果があるため、これから成長する毛には効き目がありますが、すでに感染している毛の部分には作用しません。感染が疑われる毛がすべてなくなるまで続ける必要があるため、数カ月といった長期間飲むことが必要になります、
塗り薬・シャンプー:感染部位が限られている場合や、治療の補助として塗り薬が有効なことがあります。ローションやクリームをしっかり塗りこむことが必要です。
また、感染した毛が生活環境に散らばるのを防止するため、抗真菌剤入りのシャンプーを週に1~2回行うことも有効です。
生活環境の清掃:感染している間は生活環境を区切り、お世話をするときは手袋、スリッパなどを使用し接触をなるべく少なくします。
床やクッション、カーテンなどについた毛は徹底して取り除き、エアコンや空気清浄機のフィルターにも注意します。落下した皮膚糸状菌は1年以上感染性があるとの報告もあり、拭くだけでなく消毒による糸状菌の除去の必要性があります。
糸状菌は消毒薬に対して抵抗性があるため、一般的な家庭用アルコール消毒薬やクロルヘキシジン単独では効果が低いとされています。
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