犬の椎間板ヘルニアの診断や起りやすい犬種と治療法
今回は、「椎間板ヘルニア」とそれに似た疾患「脊髄梗塞」について説明をしていきます。
椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアは、椎間板の変性に続いて起こる脊柱管内への椎間板もしくは髄核の脱出で、それらが脊髄や神経根を圧迫することで、疼痛を含む様々な神経症状を呈する疾患です。
犬において代表的な脊髄疾患で、四肢の不全麻痺や麻痺を引き起こす最も多い原因の一つです。
椎間板ヘルニアというと後肢の麻痺を想像する方も多いかもしれませんが、後肢の麻痺を引き起こすのはヘルニア部位が前肢〜後肢の間で起こった場合で、頭から前肢の間(つまり頸部)に発生すれば、四肢の麻痺が起こります。
椎間板ヘルニアが起こりやすい犬種
ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、フレンチ・ブルドック、ウェルシュ・コーギー、ペキニーズなどに多いという統計がある。
特に、ミニチュア・ダックスフンドの生涯発生率は20%と最も高く、他の犬種に比較にして9.9〜12.6倍多く発生することが報告されています。
椎間板ヘルニアの診断
①神経学的検査
四肢の感覚がしっかりと脳まで伝わり、脳の指令が四肢まで伝わっているかを検査する。
神経学的検査によって、脊髄のどのあたりでヘルニアが起こっているのかをある程度特定する。
特殊な器具等は必要なく、犬への負担は少なく検査が行える。
②X線(レントゲン)検査
脊椎の間隔や骨の変化の有無を確認します。
ヘルニア部位のある程度の推測はできますが、X線では椎間板物質や脊髄神経は見ることができないため、X線のみで確定診断はできません。
検査は麻酔なしで行えるため、犬への負担は少ない。
③CT検査
脊髄に対する圧迫を確認できます。
全身麻酔をかけての検査で検査自体はおおよそ15分程度で終わります。
(麻酔をかけてから、目を覚ますまでは30分〜1時間程度)
CT検査のみで確定診断をできることもありますが、椎間板物質の出方や状況によって、MRI検査も必要になります。
④MRI検査
神経系の総合評価を行う上で重要な検査です。
ヘルニアだけではなく、同様の症状を示す多くの疾患(脊髄拘束や脊髄腫瘍など)を診断することができます。
MRI検査も全身麻酔をかけての検査となり、検査時間は30分〜1時間程度です。
椎間板ヘルニアの治療
グレード1〜2に関しては、内科的治療(ケージレストなどの安静と痛み止めなどの内服)のみで90%程度が改善すると言われており、外科的治療による改善率(90%以上)とは大きな差はありません。
しかし、グレード3以上となると、内科的治療による改善率は50%程度と落ち込みます。外科的治療による改善率は90%程度ですが、グレード5に関しては改善率は50%程度です。
また、グレード5を患った犬のうち10%程度が進行性脊髄軟化症を発症すると言われており、緊急で手術を行った場合でも、進行性脊髄軟化症を発症した犬は後肢の完全麻痺が起こってから1週間〜10日程度で亡くなってしまいます。
その他の治療法
①リハビリテーション
水中または陸上でのトレッドミルや、バランスボールなどを用いた筋力・体幹トレーニングなど。
神経機能・運動機能の回復を目的に実施します。
②経皮的レーザー減圧法
縮こまった筋肉や血管を刺激し、血流を改善させます。
血流改善により、痛みの原因物質を代謝し、手術部位の痛みを緩和します。
③再生医療
標準的な内科的治療や外科的治療を行なっても、歩行機能や排泄機能の改善が認められなかった場合や、動物の状態により、手術の適応ができない場合に行います。
健康なわんちゃんから採取した幹細胞を投与することで、機能の失われた脊髄に代わって複製し、脊髄本来の働きを取り戻すことを目的としています。
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