吐いて食欲が無い?犬の膵炎の症状、検査、治療、食餌を解説
そんな時に疑われるのが膵炎です。
一過性の胃腸炎も似たような症状ですが、膵炎だった場合には重症になると命に関わるほどの事態になることがあります。
また膵炎の怖いところは、そのまま慢性膵炎となり、何度も再発を繰り返すところです。
その治療には、人と同様に食餌療法が欠かせないのですが、これがどうしても食べてくれないことが多く、飼い主様をとても悩ませることになります。
今回は犬の膵炎の症状、検査、治療、食餌について詳しく解説してきます。
言葉の話せない動物たちが、膵炎で苦しむことが減るように、正しい知識を持つようにしましょう。
犬の膵炎と症状
膵臓という臓器は、食べたものを消化するための酵素を作り出して、小腸に分泌しています。
他にもいくつかの働きはあるのですが、今回は分かりにくくなるので省くことにします。
食べ物を消化するための酵素、つまり消化酵素は、タンパク質や脂肪を分解する働きを持っています。
食べ物は消化酵素に分解されることによって、腸から吸収できる形になるのです。
膵炎は、その名の通り、膵臓に炎症が起きることによって生じます。
消化酵素がうまく分泌できずに、吐き気や下痢という症状が出ます。
また、うまく小腸に出なかった消化酵素が、膵臓自体を壊してしまうこともあります。
すると、激しい炎症が起き、重度な症例では腹膜炎にもなることがあります。
人と同じように、犬の膵炎でも腹部の激しい痛みが出ます。
そのため、元気の消失や食欲の低下、お腹を触ると痛がる、背中を丸めてじっといている、という症状が出るのです。
膵炎の検査
まず、吐き気や下痢、元気と食欲の低下という、何にでも当てはまる症状が多いため、広く浅く検査をしていきます。
身体検査では、発熱の有無、リンパ節の腫脹、腹部圧痛の確認を行います。
血液検査では、肝臓や腎臓の値が悪化していないかどうか、炎症反応(CRP)は高くないか、アルブミン(血液中のタンパク質)は低くなっていないかどうかを見ます。
また、強く膵炎が疑われる場合は、膵炎に特化したリパーゼの値を検査センターに出すこともあります。
レントゲン検査では、異物誤食の有無を見ます。
腹部エコー検査では、小腸の動きや粘膜の暑さ、膵臓付近の脂肪の炎症具合、膵炎以外の原因が無いのかを確認します。
また、下痢や軟便がある時には、便の検査を行って、細菌や寄生虫などの感染もみることが大切です。
全ての検査から、総合的に膵炎を診断していきます。
膵炎の治療
吐気や下痢、食欲不振のために、脱水傾向にあることが多いので、点滴治療がメインとなります。
膵炎によって出てくる症状に対して、初期治療では注射でお薬を入れていくことが殆どです。
・消化管の動きが止まっている⇒消化管を動かすお薬
・吐気が強い⇒吐き気止め
・炎症が強すぎる⇒消炎剤
・細菌感染がみられる⇒抗菌薬
・食べることができない⇒ビタミン剤や強肝剤
・痛みが強い⇒痛み止め
食欲が無いことが多く、内服薬(飲み薬)に切り替えることが難しいため、膵臓の炎症が落ち着くまで、点滴治療が続くことが殆どです。
炎症が強く長引く場合には、血液中の凝固(血が固まる能力)が、異常に亢進してしまうことがあります。
すると、血栓が出来るリスクが高くなり、そのために命を落とすこともあります。
血液の凝固に異常が出ている場合、あるいは予防的に、抗血栓療法を行います。
入院治療によって安定化し、退院した後にも膵炎が再発する可能性は高いために、飲み薬と食餌療法は続けていくことが大切です。
膵炎の食餌療法
膵臓に負担がかかる栄養素が、脂肪とタンパク質です。
なるべく消化に良い食物で、脂肪は控えめのものが推奨されます。
膵炎用には、『低脂肪食』あるいは『消化をサポート』のようなワードの、病院から処方される治療食が必須です。
ところが、この治療食を食べてくれないワンちゃんが多く、飼い主さまを悩ませることになります。
まず、気持ちが悪いのか、お腹が痛いのか、食欲が無いのか、はたまたご飯が気に入らないのか。
オヤツであれば食べてくれるのですが、治療食は食べてくれないのです。
という事態も多くみられます。
本人(本犬)にしてみれば、体調も悪いのに魅力的ではないご飯は食べたくない!という気持ちなのかもしれません。
まだ本調子でない時には、治療食ではないものでも、低脂肪なササミやジャガイモであれば少し食べるのも良いでしょう。
それだけでは栄養素が足りないので、担当医にビタミン剤などもご相談していただくのが大切です。
低脂肪の治療食も、たくさんのメーカーから沢山の形態(ドライフード、パウチ、トレイ、シチュー、ムースなど)が発売されています。
味もそれぞれに違うので、色々な種類の治療食をたくさん試してみましょう。
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