犬の炎症性腸疾患について

炎症性腸疾患とは?
犬の炎症性腸疾患(IBD)は消化管の粘膜固有層における炎症細胞の浸潤を特徴とする原因不明の慢性腸障害を起こす疾患です。

定義
世界小動物獣医師会によるIBDの定義では以下の通りとなっています。
①3週間以上継続するまたは再発する嘔吐や下痢などの消化器疾患を示すこと。
②病理組織学的に消化管粘膜においてなんらかの炎症がみられること。
③消化管において炎症を起こす他の原因が特定されないこと。
④抗菌薬、駆虫薬、食事に対して完全には反応しないこと。
⑤抗炎症薬、免疫抑制剤に対して臨床的に良化すること。
よくIBDと似ているものとして慢性腸症(CE)がある。簡単に言うとCEの中にIBDが含まれています。
CEはIBD、食事反応性腸症、抗菌剤反応性腸症から構成されています。

検査
検査は主に血液、エコー、レントゲン、糞便検査、ホルモン検査など一通りの無麻酔での検査を実施する。次のステップとして確定診断には内視鏡による組織の生検行うことが多いです。しかし、内視鏡検査に行く前にいくつか確認してほしいことがあります。
一つは食事です。慢性腸症の50%以上は食事に反応します。このためまず食事療法を試してみてください。ただし、重度の低タンパク血症などは別ですので診断を急いでください。
そして、最悪内視鏡まで進んだ場合に検査結果で飼い主様が見ることが多いのが「リンパ球形質細胞性腸炎」かと思われますが、これは原因が特定できていないためにイコールIBDではないことに注意してほしいです。

好発犬種と予後
海外におけるIBDの好発犬種はジャーマンシェパード、バセンジー、シャーペイなどがあげられます。
IBDの予後はタンパク漏出性腸症などが合併している場合は治療の反応性がことなり予後に影響を及ぼします。
日本においては柴のIBDの予後が他の犬種に比べて悪いことがしられています。

治療
IBDの治療として、①抗炎症、免疫抑制②収斂剤③抗菌薬、止瀉薬、プロバイオティクス④低アレルゲン療法食です。
①は消化管の異常な免疫を抑えるため。
②は腸上皮バリアの破綻を抑えるため。
③は腸内細菌叢の構成を整えるため。
④食物抗原への暴露を防ぐため。
明確なプロコールは示されておらず、臨床的な症状を見ながらしようしていきます。
まとめ
このようにIBDをスパッと完治させる治療法は現段階では確立されておりません。
しかしながら、IBDという状態をより理解することで適切な診断と治療に結びつくことができるかも知れません。
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