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犬の軟部組織肉腫

獣医師
久保井春希
[記事公開日]  [最終更新日]
軟部組織肉腫という飼い主様には馴染みのない腫瘍について簡潔にご説明していきます。
[ 目次 ]
犬の軟部組織肉腫
犬の腫瘍と一括りにいうと肝臓腫瘍や肺腫瘍など臓器に発生する腫瘍を想像することが飼い主様は多いかとおもいます。今回の軟部組織肉腫は比較的出会うことが多いですが、その進行によっては切除等が非常に困難になるものなので早期発見、早期治療のために今回の内容を役立ててもらえればとおもっています。

軟部組織肉腫の特徴とは?

軟部組織肉腫は、非上皮系悪性腫瘍(肉腫)のうち、いくつかの特徴を有する腫瘍のことを指します。
その特徴とは
①腫瘍組織は偽被膜で被嚢されているが、正常組織との境界は不明瞭で腫瘍組織が筋膜沿いに浸潤性に増殖する傾向がある
②保存的な切除では再発することが多い
③局所浸潤性が強い
④転移は血行性で20%以下、所属リンパ節転移は比較的稀
⑤肉眼的病変がある場合、化学療法や放射線治療の効果は低い
などがあげられます。

犬の軟部組織肉腫

発生年齢や分類

発生年齢として通常は中〜高齢の犬に発生します。
軟部組織肉腫に分類される腫瘍は、主に線維肉腫、末梢神経鞘腫、脂肪肉腫、粘液肉腫などです。

犬の軟部組織肉腫

診断

軟部組織肉腫は通常、硬結した皮下の腫瘤としてみられます。
急速増大する場合もあるが、一般にゆっくりとに大きくなります。筋肉に固着することもしばしばあり、細胞診(FNA)検査では、採取される細胞が乏しいことが多いため確定診断まではできません。
大きな軟部組織肉腫である場合には、見た目以上に周囲組織に浸潤していることが多いため、切除範囲を決定するためにCT検査にてマージン決定を行い、その際に転移がないか、その他の併発疾患がないかなども合わせて評価しておくとステージングに有用です。

犬の軟部組織肉腫

治療

治療の第一選択は外科手術です。特に、初回手術でしっかりとした外科マージンを確保して切除することが最重要です。
マージンが足りず何度も再発するほど軟部組織肉腫は悪性度が高くなり周囲組織へ浸潤していきます。それに伴い転移率も高くなります。
四肢や頭部などの十分な外科マージンの確保が困難な場合は、外科手術と放射線療法を組み合わせて治療をおこないます。

犬の軟部組織肉腫

予後

組織学的にグレードが1−3に分類され、それにより転移率が大きく異なります。
軟部組織肉腫の転移部位は主に肺や所属リンパ節ですが、脂肪肉腫は肝臓や脾臓に転移しやすいと言われています。

まとめ

軟部組織肉腫の診断をもとにしっかりとした手術計画をたてて、マージンをしっかりとり再発を防ぐことがこの疾患の予後につながってくることは間違いないと考えています。

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