犬と猫の歯周病について
多様なフードや生活習慣によって歯石や歯垢などが付着し重篤な症状に発展することもあります。
歯というとそれ以外あまり病気に直結しないと思われがちですが心臓や腎臓にも病状が波及する疾患であることを飼い主様に知っていただきたいと思っております。
しかし、近年動物たちの長寿化に伴い口腔内トラブルが増えてきています。
長生きする上で口腔内のケアは切っても切れない関係です。今回、改めて犬と猫の歯周病について再確認し、健康で丈夫な歯を維持または現状、歯でお困りの方は今後の対応の参考にしていただければと思っています。
犬と猫の歯の構造
まず、ご自身のご家族(わんちゃん、ねこちゃん)には何本のはがあるかご存じでしょうか?
人では乳歯が20本、大人になると28−32本です。
犬の場合は乳歯が28本、永久歯が42本。猫の場合は乳歯が26本、永久歯が30本となります。
短頭種の場合は欠歯がありこれよりも少ない場合があります。
4ー6ヶ月くらいの時期に永久歯への生え変わりが始まり、1歳くらいまでに全て生え変わります。
乳歯遺残とは?
先ほど紹介した生え変わりの話ですが、ここ最近乳歯が残って成長してしまっている子が非常に多く見受けられます。
乳歯が残っている場合何が問題かと思われる方がいらっしゃると思うのでお話ししていきます。
・噛み合わせが悪くなる
・歯と歯がぶつかり痛みを生じる
・食べカスが乳歯と永久歯の間に挟まりやすくなる
・歯垢や歯石が溜まり歯周病の原因となる
このようなトラブルが発生することがあります。
乳歯が残っている場合は乳歯抜歯を私はお薦めしております。
口腔内トラブル〜歯周炎〜
食べ物を食べた後に歯垢が出来ます。その中の細菌が原因となり歯肉が腫れたり(歯肉炎)、歯を支えている歯周組織が破壊されてしまう(歯周炎)病気です。
歯周病が進行すると歯を支えている顎の骨がどんどん溶けてしまい、最終的に歯が抜け落ちたり、重度の場合は下顎骨折してしまうこともあります。
また、炎症部位の粘膜では血管に細菌が入り込み、心臓病や腎臓病の引き金になることもあります。
口腔内細菌について
ここで犬と猫の口腔内細菌についてお話ししていきます
人の口腔内には約400~500種類の細菌が存在しています。しかし、人と犬とでは細菌の種類に違いが見られます。
人と犬で共通して保有している菌は約15%程度であり、人と犬、猫の口腔内細菌の種類がほとんど違うのは、食べ物が違うためであると考えられています。
代表的な菌として、犬の70%、猫のほぼ100%に存在するとされるパスツレラ菌、犬の菌として有名なカプノサイトファーが挙げられます。
これらの菌に感染した場合敗血症や骨髄炎を発症する場合があり、噛まれたりした場合は早急な対応が求められます。
歯周病になってしまった場合の対応
診療時、口腔内トラブルの症状で多いのが口臭ですが、次いでくしゃみ、鼻水といった呼吸器症状や顔の腫れといった症状です。
この場合、重度に歯周炎が進行し犬歯など大型の歯の根本に炎症を引き起こしくしゃみなどを引き起こしている場合、また眼下の歯の根元に感染が生じ排膿することで顔が腫れてしまうことなどが考えられます。
歯周病は放っておくと歯周組織がゆっくりと破壊されていく病気です。
一度破壊されてしまった歯周組織は治療しても元の健康な状態には戻りませんので、軽度の段階で治療することが健康な歯を長く保つポイントとなります。
歯周病を予防・治療するには麻酔下のスケーリングが必要になることがほとんどですが、先生によっては歯根部治療を行う先生もおられます。
麻酔下のスケーリングでは、歯周病の予防・治療に不可欠な歯周ポケット内の清浄が可能です。
歯周病が軽度の場合には超音波スケーラーによる歯石の除去と歯周ポケット内の洗浄、ポリッシングという流れで処置を行います。
さらに重度の歯周病で歯根の露出がひどかったりグラグラの場合には抜歯を選択することもあります。
また、抜歯後に鼻腔内へ穴が開いてしまっている鼻腔瘻と言われる状態では口唇粘膜を使った鼻腔瘻整復術を必要とする場合があります。
<おすすめ動画>
<関連記事>
獣医師監修:愛犬の眼が白い?犬の白内障について知りたい!いつまでも可愛い愛犬、でもあるときお散歩友だちに「眼が白いよ、白内障じゃない?」と言われました。あわてて眼を見てみるとなんとなく白っぽいような気も…。 これって眼がみえなくなっているのでしょうか?
<関連記事>
獣医師監修:愛犬の眼が開かない?犬の緑内障について知りたい!ある朝気づくと、愛犬の眼が片方閉じっぱなしになってしまい、まるでウインクしているような顔になっています。閉じた目には目ヤニもついて、なんだか気にしているようです。 眼を開けさせてようとしても、嫌がってしまいよくわかりません。 このまま様子をみていいのでしょうか、それとも病院に連れて行った方がいいのでしょうか?
<関連記事>