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犬の拡張型心筋症

獣医師
相澤 啓介
[記事公開日]  [最終更新日]
犬の心筋症は、拡張型、肥大型、拘束型などに分類されますが、拡張型心筋症はその大部分を占めるタイプとなっています。拡張型心筋症は、場合によっては突然死を招く恐ろしい病気ですが、近年では画像診断の発達によって早期の診断が可能になりました。今回は、犬の拡張型心筋症の原因、なりやすい犬種、症状、治療、予防法について解説していきます。
[ 目次 ]
犬の拡張型心筋症
心筋症は、心臓の筋肉に異常が起こることで心機能が低下する病気です。
その中でも拡張型心筋症は、心筋が薄くなり、心臓の収縮力が低下するタイプの心筋症です。
全身へ血液を送り出す力が弱まることで、一度の収縮で心臓内の血液の全てを送り出すことが出来なくなります。
するとどんどん心臓内に血液が溜まってしまい、心臓の内腔が大きくなり、循環不全が起こります。
では、拡張型心筋症にかかりやすい犬種はあるのでしょうか。
もしかかってしまったら、どうすればよいのでしょうか。
日頃から注意して観察していれば、病気の早期発見に繋がるかもしれません。

原因は?

拡張型心筋症の多くは遺伝性と言われていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
アメリカン・コッカ―・スパニエルでは、タウリンとL-カルニチンの欠乏といったものの関与が疑われています。

なりやすい犬種は?

ボクサー、ドーベルマン・ピンシャー、アメリカン・コッカー・スパニエル、グレートデン、 セント・バーナード、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、ニューファンドランド、アイリッシュ・ウルフハウンドといった大型犬に多いと言われています。
年齢は3~7歳、性差ではオスに多いとされています。

症状はどんなものがあるのか?

初期は無症状ですが、重度になると血液の循環不全による症状が現れます。
元気・食欲の低下、疲れやすくなる(運動不耐性)、咳が見られることが多いです。
より重度になると胸腔内に胸水が貯留し、肺の拡張を妨げて呼吸困難に陥ります。
また、肺水腫によって肺でのガス交換が上手くいかず、呼吸促拍やチアノーゼ(酸素不足によって可視粘膜が青くなる)が見られることもあります。
さらに重度になると不整脈が発生し、突然死を招くこともあります。

犬種によって現れやすい症状が異なることもあります。
ドーベルマン・ピンシャーでは咳から始まることが多く、グレートデンでは腹水貯留が多いと言われています。
また、ドーベルマン・ピンシャーとボクサーでは失神を呈することがあります。

診断法は?

問診で、好発犬種や年齢、症状を聴取します。
心臓内に血液の異常な流れが生まれていれば、聴診で雑音が聴取されます。

診断には画像検査が非常に有効です。
・X線検査:心臓の拡大を検出します。胸水や腹水の貯留、肺水腫の有無も見ることが出来ます。
・超音波検査:心筋壁の菲薄化と心内腔の拡大を検出します。
・心電図検査:心房細動、心室性早期拍動、頻脈などの不整脈の有無を検出します。

治療法は?

残念ながら、薄くなった心筋を元に戻すことは出来ません。
治療は内科療法で、心臓の機能を補強したり、過剰に貯留した水分を調整したりします。

・強心薬:弱った心臓の収縮力を増強することで循環不全の改善を目指します。
・血管拡張薬:血管を広げることで心臓の負担を小さくします。
・利尿薬:肺水腫や胸水貯留の際に、体に貯留した余分な水分を除去します。
・抗不整脈薬

また、体腔内に液体が貯留している場合には、針を刺して胸水や腹水を抜去します。
アメリカン・コッカ―・スパニエルの栄養性の拡張型心筋症が疑われる場合には、タウリンやカルニチンの補給を行うこともあります。
さらに、心臓への負担を軽減するために、ナトリウムを制限した食事に変更することも必要です。

予防法はあるのか?

遺伝性の発症が疑われるので、はっきりとした予防法はありません。
しかし、徴候や症状に早く気付くことによって、病気の進行を遅らせることは可能です。
特に大型犬では、定期的な健康診断が有効となります。
病気の初期では無症状なので、健康であっても病院に行って検診を受けるといいかもしれません。

予後は?

犬の拡張型心筋症の予後は悪く、6か月~2年と言われています。
本人が苦しくならないように、薬を用いて心臓のはたらきと呼吸の管理をしていく必要があります。
投薬量の調整や健康状態のチェックのためにも、最低でも1カ月に1回の検査は必要になります。

自宅でも、呼吸状態のモニターや運動制限など、愛犬のためにやってあげられることはありますので、かかりつけの獣医師と相談をしながら治療を行っていきましょう。

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