犬の膵外分泌不全
どんな病気?
膵外分泌不全自体は自己免疫に関連した病気であると考えられており、同じ膵臓の病気である糖尿病を併発することは少ないのですが、もともと慢性膵炎があってその末期の状態だったり、腫瘍の影響で起こった膵外分泌不全の場合は、糖尿病を併発する可能性があります。
膵外分泌不全では、小腸内細菌過剰増殖(SIBO)と呼ばれていた状態になることがあり、そうなると膵外分泌不全自体が悪化してしまうことがあります。また、膵臓で合成される物質のうちビタミンB12(コバラミン)の吸収に必要なものもあり、膵外分泌不全になるとコバラミン欠乏症が起こることもあります。
なりやすい犬種は?
もっとも報告が多い犬種はジャーマン・シェパード・ドッグで、その他にはラフ・コリーやイングリッシュ・セッター、チャウ・チャウ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、コッカー・スパニエル、ウェルシュ・コーギーなどでも報告があります。小型犬が多い日本ではそんなに頻繁に遭遇する病気ではないかもしれません。
症状は?
たくさん食べているのに痩せてしまうというのが特徴的です。下痢をすることも多いのですが、膵外分泌不全でも下痢を起こさない子もいるため、下痢の有無だけでは診断できません。典型的な膵外分泌不全の便は、脂肪が未消化のまま含まれるために白っぽくて表面に光沢のある、においの強い便です。また、今までに膵炎になったことがあるかどうかも重要な情報になります。
診断方法は?
症状とそれがどのように経過しているのか、血液検査の結果から診断します。糞便検査の結果はそれだけでは確定診断を出すことはできませんが、コストも安く簡単に行えるため、補助的な検査として実施します。血液検査は、通常のスクリーニング検査(身体全体の状態を大まかに判断するための検査)では異常が認められないことが多いです。ただし、経過が長くてかなり痩せてしまった場合は、栄養に関連した項目に異常値が認められるようになります。それ自体は膵外分泌不全に特有の異常ではないため、血液検査は主に糖尿病など他の病気がないかを調べるために行います。現在のところ、最も信頼性が高い検査は血中トリプシン様免疫活性(TLI)を調べて、その数値が低くなっていることを確認することです。また、血液中のコバラミンと葉酸の濃度はその後の治療に重要になってくるため、こちらも測定することがあります。
治療法は?
膵外分泌不全になってしまった膵臓自体を治療することはできません。そのため、治療の目的は、不足した消化酵素を補充して症状を改善させることになります。また、この治療は基本的に一生続ける必要があります。消化酵素剤には様々な種類があり、どれがいいかは使ってみないと分かりません。そのため、症状が安定するまでは手探りで治療反応を調べていくことになります。治療を開始しても下痢や体重減少などの症状があまり改善しないケースがあります。その場合は、抗菌薬反応性腸症のような消化器疾患など他の病気を併発している可能性、消化酵素剤の不足の可能性、消化酵素剤の種類が合っていない可能性について考える必要があります。食事の種類も気をつける必要があります。膵外分泌不全に推奨される食事の条件は、高脂肪ではないこと、消化がよいこと、繊維が少ないことです。療法食の種類が充実している今は、様々なメーカーから膵外分泌不全に適したフードが発売されています。
<おすすめ動画>
<関連記事>
犬の気管支炎、症状や原因は?診断や治療、予防方法、注意する事は?気管支炎とは、下部呼吸器に分類される気管支ならびに肺のうち、気管支に異常が認められる代表的な病気のひとつです。発症し始めてからの期間あるいはその原因によって分類されますが、その基本は気管支内膜の炎症で主な症状は咳です。 この記事では、犬の気管支炎の症状や原因、診断方法、治療法、予防法、かかりやすい犬種についてまとめました。
<関連記事>
犬の歯周病、症状や原因は?診断や治療、予防方法、注意することは?3歳以上の80%以上の犬が、かかっていると言われている歯周病。歯周病とは、歯の周りの組織がダメージを受ける病気です。歯肉に炎症が起こり、赤く腫れ出血しやすくなるのが歯肉炎。さらに悪化し、歯の周囲から膿が出るような状態になったものが歯周炎。歯肉炎と歯周炎をあわせて歯周病と言います。 この記事では、犬の歯周病の症状や原因、診断方法、治療法、予防法、かかりやすい犬種についてまとめました。
<関連記事>